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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

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第125話:いかなーい。

 ドアのノッカーが鳴るのを聞いて、師匠とマメーは目配せを一つ。師匠は声を出さないように、顎で扉を示した。

 マメーはゴラピーたちに向けて口の前に指を立てた。ゴラピーたちはちっちゃな両手で口を押さえる。


「はいはーい、いまいきます」


 マメーは立ち上がり、とてとてと玄関の扉に向かう。

 師匠はゴラピーたちを手招きした。彼らは両手を口に当てたまま、てちてち卓上を歩いて師匠の元にやってくる。そして師匠のローブの中にひょいひょいと隠れた。

 マメーはゴラピーたちが隠れるのを確認して、扉を開けずに尋ねた。


「どなた?」


 扉の向こうで咳払いが一つ、そして聞き覚えのない男性の声が発せられた。


「門を開けられよ。我は万物の長たる偉大な神を奉ずる神殿が司祭、ミウリーである。聖女の素質を有するというマメーなる者を迎えにこの辺境まで足を運んだのである」


 一度にたくさん言われてマメーは困惑した。


「えっと、ばんぶつのちょーたる……。おなまえはミウリーさんね。マメーにごよう?」

「うむ、汝を迎えに来たのだ。重ねて要求する。疾く、扉を開けられよ」


 マメーは扉の脇に置かれている水晶をちらりと見る。嘘を見破る魔術のかけられているそれは赤く光りだすこともなく、透明できらきらしていた。

 つまり嘘はついていない。尊大な物言いだが、悪意があるわけでもなさそうである。

 だが、言っている内容が問題だった。


「マメーはししょーのでしだから、むかえにきたといわれてもこまるのよ?」

「ならば汝の師たる魔女グラニッピナは在宅であるな? そちらに会わせて貰おう」

「ししょーにあいたいということね?」


 マメーはくるりと振り返った。師匠は背後で聞いているのである。

 師匠は頷きを返した。


「マメー、こっちに戻ってきな」

「はーい」


 とてとてとマメーは扉から離れて師匠の隣に立った。

 師匠が指を振る。すると、玄関の扉がカタカタと動いた。師匠の魔術、〈騒霊〉が扉のかんぬきを外したのだ。

 途端、扉が内側に開き、二人の男が小屋に入ってきた。


「うわぁ」


 マメーはちょっと驚いた。

 男たちはぴかぴかの騎士の鎧を装着していた。ただ、ルイスのものとは意匠が違っている。


「ふん、神殿騎士どもかい」


 師匠の声が響く。騎士には何種類かあるが、ルイスは銀翼騎士団、王家に仕える騎士である。一方で彼らは宗教組織である神殿が抱える兵力であった。

 彼らは部屋の中を見渡すと、師匠とマメーを確認し、扉の前に立っていたもう一人の男に声をかける。


「司祭殿」

「うむ」


 壮年の男がゆっくりと小屋に入ってきた。彼は神殿の司祭が纏う法衣を身につけている。きらびやかではあるが、その裾のあたりは泥濘に塗れていた。


「よくもまあこんな辺鄙な場所に居を構えるものだ」


 声からして、先ほどマメーと話していたのはこの男であり、騎士たちはその護衛であるようだ。


「魔女グラニッピナ、そしてその弟子マメーか」

「そだよー」


 マメーはそう答え、師匠はふん、と鼻で返す。


「サポロニアン王都聖堂よりそこなるマメーを聖女候補として招聘するという。支度されよ」

「せーじょこーほとしてしょーへー?」


 マメーは首を傾げた。単純に言っていることの意味が分からなかったのだ。師匠は意外には思わなかったが、思ったより動きが早いねとは感じた。

 司祭の男は苦虫を噛み潰したような表情である。まあ師匠にはその理由がわかる。おそらく、彼は上役に命じられてわざわざこんな森の奥まで出向いているのだろう。そして神殿と魔女協会は決して友好的な関係ではない。マメーとかいうこんなチビで貧相な魔女の弟子を聖女候補に……などと思っているのかもしれない。


「神殿があんたを聖女にしたいからサポロニアンまで来いってさ。どうしたい?」

「ふーん、ししょーはくる?」

「行かないよ」

「じゃーマメーもいかない」


 師匠のローブの中で、小さくピキピーピューとゴラピーたちの鳴き声が返った。マメーが行かないというのを肯定しているのだ。師匠はぽんぽんとローブの上から彼らを優しく叩いてから司祭に向かって言う。


「だとさ」

「何を世迷言を……! 断れると思っているのか!」


 騎士たちが腰の剣に手をかけた。


「なんで断れないと思ってるのさね。あんたは貴人が平民の家にお言葉をくれてやりにきたと思っているのかもしれんがね。ここは魔女の家だよ」


 魔女は現世の権力から縁遠い存在なのである。


「魔女如きが神殿に刃向かうと? たかが幼い弟子一人手放すことを拒否すると?」


 司祭はいっそ奇妙なものを見るような視線を師匠に向けた。玄関の水晶玉が嘘にも悪意にも反応していない。つまり、彼は司祭たる自分の言葉、あるいは神殿の命に従うのは当然であると考えているだけなのだろう。

 だが魔女にとって師弟というのは絶対なのである。それは血縁による家族よりもずっと重い意味を有するのだ。


「なあ、お前さんたち」

「なんだ」

「腰のものを抜こうとしたってことは敵対するんだね?」


 師匠は強く魔力を放つ。そしてただ一言言葉を放った。


「ひれ伏せ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒューヒュー師匠最高!! (皆さん格好いいてっ書かれてるので)
[一言] キャ~ッ!お師匠様かっこい~ッ!と書こうと思って来たら、既に書いてあった件w
[良い点] きゃーーー!! 師匠かっこいーーーーーー!!!!! あとマメーちゃんちゃんとゴラピーが隠れてから問いかけててえらい
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