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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

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第124話:ひにつよい?

「できたーじゃないのさね、できたーじゃ……」


 師匠はぼやきながら、赤いゴラピーを引き寄せた。

 師匠の乾いた指がゴラピーの茎を撫で、葉っぱをひっくり返す。


「ピキー?」


 ふん、と鼻を鳴らし、ゴラピーから手を離す。


「焼けたり炙られたりはしていないようだね」

「ししょーさっき、〈てんか〉ではやけどしないっていってたよ?」

「そりゃそうさ、だがこいつの茎なんかはあたしの指よりもずっと細いだろう?」


 小さくて細いものはそれだけ燃えやすいということだ。つまり、これでも師匠は心配なのである。

 てちてち歩いてマメーの元へと戻った赤いのは、黄色いのと青いのにまとわりつかれて、同じように葉っぱの確認をされていた。


「あかゴラピーはー、ひにつよい?」

「こいつ自身は植物で火属性ってわけじゃないからね。んなことはないだろうよ」


 師匠はマメーの疑問にそう答えつつ、「今のところはね」と小さく呟いた。

 まず、当然ながら火属性の魔法が使えるからといって、身体が火に耐えられる訳じゃない。それは人間の魔術師だろうと植物のゴラピーだろうと同じことである。

 しかし、魔法には耐性レジストアンチという種類のものがある。ダメージや悪影響から身を守る類の魔術だ。火属性魔術なら〈防火〉や〈耐熱〉などがそれにあたる。

 マメーがその手の魔術を覚えた時に『魔術がゴラピーから出る』なら、今マメーが言った通りに、赤ゴラピーは火に強いという性質を有する可能性があるだろう。


「ピー……」


 黄色いのがてちてちとマメーのところに向かい、ローブの袖をちょんと掴んでマメーを見上げて鳴いた。


「ピーピー」

「えーっと……」


 黄色いのはマメーの袖を何度も引っ張り、甘えているようなねだっているような様子である。マメーが困り顔を浮かべているので、師匠は尋ねた。


「そいつはなんだって?」

「ぼくはー? って」


 師匠は笑う。なんのことはない、仲間の二匹が火と水の魔法を発動させたので、自分だけまだ何もできてないと思ったのだろう。

 せっかくだからちょっと聞いてみることにするかと師匠は思う。


「のう、黄色いのよ」

「ピッ?」


 師匠の呼びかけに黄色いのはそちらを見上げた。


「この婆がマメーに魔法を教えているのは分かっているね?」

「ピ!」


 黄色いのは、はい! と肯定を示すように手をあげた。


「だからあんたの発動する魔術をマメーに教えてやることになるんだが……、青いのは水属性担当となった。赤いのはこれで火属性だろう。あんたら、他の属性は使えるのかい?」

「ピキキ」

「ピュピュ」


 師匠が二匹に視線をやると彼らは否定に首を振る。


「いっぴきひとつだって」


 マメーが言葉を訳した。


「黄色いのよ、おまえさんも一つの種類の魔術を使えるんだろう。さて、何ができるんだい?」

「ピュー……」


 黄色いのは項垂れる。


「わかんないって」

「マメーにもわからんかい?」

「んー……うん」


 ふむ、と師匠は考える。彼女は彼らは生まれた時の色で、能力が決まっているわけではないのだと予測していた。それはおそらく正解であると。

 マメーはゴラピーの色は植木鉢の色だと言っていた。もちろんマンドラゴラにそんなカメレオンのように周囲の色に合わせるような能力はないので、この色はマメーが無自覚につけたものなのだ。

 そして、その色のイメージに合致する魔術をゴラピーが担当しているということだ。これはおそらくマメーがイメージできればなんでも良いはず。


「マメーにゴラピーよ。例えばあたしがマメーに〈呪い〉の魔術を教えたら黄色いのはそれを使えるかね?」

「のろいってルナちゃんにしかのつのはやしたみたいに?」

「ああ、そういうのだね」


 マメーは両手の人差し指を立てて、角のように頭の横に生やす。そして黄色いゴラピーと顔を見合わせた。

 そしてどちらもぷるぷると首を横に振る。


「むりだとおもう」

「ピ」


 師匠は質問を続けた。


「じゃあ、ウニーみたいな闇魔術はどうさね」

「むり」

「ピ」


 一人と一匹は即答する。

 黄色という色は呪いや闇というものが象徴するものとは程遠いだろう。もし黒い植木鉢から黒いゴラピーが生まれていたならそれらを扱えるようになるかもしれないと師匠は考えた。

 さて、黄色といえばなんだろうか。いくつかイメージが浮かんだが、師匠はそれを口にするのはやめた。


「マメーと黄色いゴラピーよ。あんたたち二人で相談して決めな」

「わたしたちで?」

「ピュ?」


 師匠は頷く。

 マメーの思考は自由奔放で、彼女の魔術の才能はそれを表現できるのだ。師の助言より、自分たちに考えさせる方が良いだろうと。

 マメーと黄色いのは頭を寄せて何やらこしょこしょ話し始める。そしてぱっと手をあげた。


「じゃーねー、ひかりがいい!」

「ピー!」


 ふむ、と師匠は頷く。実際、黄色といえば土か光か電気あたりと思っていた。電気や稲光が黄色であるイメージはマメーがあまり見る機会のないものであるし、まあ前者のどちらかと思ってはいた。

 発芽の三要素と言えば水、空気、温度だ。そして植物が育つのに必要なのが光である。土は必ずしも必須ではないし、そもそもゴラピーたちは土から出て動いているのだ。そう考えればここで黄色のゴラピーが光属性を選ぶのは理解できる気がした。


「よかろ、じゃあ今度は〈光〉の魔術を教えることにしようかね」

「やったあ!」

「ピー!」


 マメーと黄色いのはばんざいした。


「ピキー!」

「ピュー!」


 赤いのと青いのもわあいと、ぴょんと跳ねた。

 その時だった。


 ――コンコン。


 庵の扉が叩かれたのは。

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― 新着の感想 ―
[一言] あかごらぴーはひにつよい〜 某引っこ抜かれてついて行くゲームのメロディで読んでしまいました笑
[一言] てっきりカレー属性かと!!!
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