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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

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第114話:ゴラピーちゃんがきて数日が経ちました。1

ルナ王女回。第二部でも登場するよ。


今後の執筆ですが、とりあえず120話ぐらいまでは書いて、キリの良いというか引きのシーンまでいったらまたちょっと先を考えたりするので五日間くらい休止する予定です。多分。

 薄紅色のカーテンが開かれると、さあっと爽やかな朝の日差しが部屋に入る。

 茶色い植木鉢の土からぴょんと伸びた双葉の表面が綺麗な緑色に輝き、ふるふると揺れる。


「ピャー!」


 小麦色のゴラピーが土の中からぽこんと上半身を出し、空に向かって小さな両腕を上げてうーんと伸びをした。


「あ、おはようございます?」


 カーテンを開けていた女性がそれに気がつき、挨拶をした。侍女のクーヤである。つまりここはサポロニアン王国の王城であり、ルナ殿下の寝室なのであった。

 小麦色のは土の中から足を引っこ抜いてクーヤの方を向くと、軽く頷くような仕草を見せる。頭の上の葉っぱがふわりと揺れた。


「ピャ」


 ゴラピーは挨拶を返す。そしてぐるりと部屋を見渡した。

 ルナ王女の呪いは治った。だが、実は彼女は魔力を有していて、それが暴走するとまた角が生えるようなことが起きてしまうかもしれない。そこでマメーはゴラピーを一匹生み出して彼女に託したのだ。

 この小麦色のゴラピーはルナ王女の魔力を使って活動しているのである。


「ルナ殿下はまだお休みですよ」


 クーヤは言う。

 以前はルナ王女に角が生えていたために、それを噂されては困るとメイドなどを下げて、侍女をハンナとクーヤの二人に絞っていた。

 そして、角が無くなったことで、メイドたちは戻ってきている。だが今度はゴラピーとかいう、なんだかよくわからない生き物が王女のそばにいるのである。王女が魔法の素質を有していると言うのもまだ秘密であるし、結局、王女の寝室にまで入れるのはこの二人だけと言う状態が続いているのであった。


「ピャ」


 天蓋つきのベッド、その中の布団に視線をやっていたゴラピーは、振り返ってクーヤの方に両手を伸ばして鳴いた。


「はいはーい」


 クーヤはゴラピーの言葉は全くわからない。だが、その仕草からかなりの意志の疎通ができた。

 彼女はゴラピーのそばに行って手を差し出すと、ゴラピーは植木鉢の縁からぴょんと彼女の手に飛びうつる。そして、てちてちと歩いて腕の中におさまった。


「ピャ」


 クーヤはゴラピーを抱えて、すたすたとルナ王女のベッドのもとへと移動し、枕元にそっとゴラピーを下ろす。


「それではよろしくお願いします」


 そう言ってクーヤは王女の着替えを用意しにクローゼットに向かった。

 小麦色のゴラピーは枕の上にぼすん、と飛び乗ると頭上の葉っぱでルナ王女を叩く。


「ピャ!」


 べちべち。


「ピャー!」


 べちべちべちべち。


「うーん……まだねむ……」

「ピャピャピャ!」


 べちべちべちべちべちべち。

 容赦なく小麦色のゴラピーはルナ王女の布団を叩き、布団から出ている耳のあたりを引っ張り始める。


「うう、起きますから……」


 ルナ王女が観念してもぞもぞと身を起こしだす。

 ゴラピーは枕の上でふんす、と一仕事終えたように満足げだ。


「ゴラピーちゃんは素晴らしいですねー」


 クーヤはひとりごちる。

 高貴な人物がすやすや寝ているのを起こすのには気を使うものである。だが、ゴラピーはどれだけ乱暴にルナ王女を起こしても罰せられることがないのだ。

 朝は弱いルナ王女であるが、ゴラピーが来てから朝寝坊することはできなくなった。


「おはようございます、ルナ殿下」


 クローゼットの前で、くるりと身を返し、ルナ王女に向けてクーヤは膝を折って淑女の礼をとった。


「……おはよう、クーヤ。おはよう、ゴラピーちゃん」


 ベッドの上からまだ眠たげな声が返る。


「今日もゴラピーちゃん可愛いですねー」

「ピャ」


 そしてゴラピーを撫でようとして、その手を葉っぱで叩き落とされていた。ここ数日のいつもの光景である。

 顔を洗うなど朝の支度をベッドの上で終え、クーヤは尋ねた。


「殿下、今日のお召し物はこちらでいかがですか」


 クーヤが手にしているのは白を基調としたドレスで、輝石や刺繍がふんだんにあしらわれた格調高いものである。まだ九歳のルナ殿下の年頃にしては少々大人びたデザインではあるが。


「ああ、そうでしたね。今日は神殿の方がいらっしゃるのでしたか」

「はい。お昼にいらっしゃいます」


 神殿の司祭がルナ王女の魔法の素質を鑑定にくるのである。

 先日まで滞在していた魔女のグラニッピナ師は、王族に〈鑑定〉術式を魔女が使うのは禁じられているとかで、ルナ王女にそれを使うことはなかった。遵法意識のしっかりした魔女である。

 よって面倒なことではあるが、正式に神殿に鑑定を依頼したのだった。神殿であれば記録はしっかりと残り、かつ決して口外はされないという建前にはなっている。

 クーヤが身をかがめ、ゴラピーに向けて言う。


「ゴラピーさん、今日はルナ殿下、昼からご予定がありますので、午前中の運動と魔力の訓練は軽めでお願いいたしますと、ランセイル殿から言付けでございます」

「ピャ」


 ルナ王女は緩く首を傾げた。


「……今日はお休みでも良いのじゃないかしら?」

「ピャ! ピャ!」


 べちべちべちべち。


「ごめんなさい、やります! 運動大好き!」


 クーヤはくすりと笑みを浮かべたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 目覚まし兼修造ゴラピー?
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