第107話:あ、いっちゃった。
ξ˚⊿˚)ξ連載再開してすぐで申し訳ないのですが、ちょっと8月下旬から9月第一週まで多忙で更新頻度乱れそうです。二日に一度以上の頻度では更新できるようにしたいとは思っています。
マメーとウニー、青いゴラピーはカエルに向かってばいばいと手を振って、沼を後にした。
「ゴラピーたち、どこにいるかなー?」
「ピュー」
マメーが青いのを手のひらの上にのせて尋ねれば、ぴっと森の一方を指す。彼らは離れていても互いの位置がわかるのだ。
マメーは青いのを肩の上にのせると、ウニーと並んで歩き始める。じょうろやスコップなど園芸用具を片付けてからそちらに向かえば、ちょうど下草をがさがさ揺らしてちっちゃな葉っぱと赤と黄色の頭が覗いた。ゴラピーたちもこちらに出てくるところであった。
「あ、ゴラピー!」
「ピキー!」
「ピー!」
赤いのと黄色いのの返事が返る。彼らはそれぞれが青く小さい実を抱えていた。ベリーの類であろう。
二匹はてちてちと近づくと、はい、と頭上に掲げるようにマメーに向けて実を差し出した。
マメーはかがみ込んで青いのを地面に降ろしながら尋ねる。
「ありがとー。ねー、ウニーちゃんにもたべさせていいー?」
赤いのと黄色いのは一度顔を見合わせると、マメーを見上げ葉を縦に揺らして頷き鳴いた。
「ピキー」
「ピー」
「わたしもたべるならいいって? わかったー」
マメーは赤いのからベリーを一粒貰った。
黄色いのがてちてちウニーの前に移動する。ウニーもかがみ込んでベリーを一粒受け取ると、笑みを浮かべて感謝を告げた。
「ありがと」
「ピ〜」
ウニーがそっとゴラピーに手を当てれば、黄色いのは全身をウニーの手に擦り付けるような仕草を見せてから赤いのと青いののところに戻っていった。
二人は芝生の上に座る。ゴラピーたちは彼女たちの足元でころころと芝生の上に転がった。
「まー、ままー、まー、まりょくのみー」
マメーは調子外れの歌を歌い始める。
ウニーは頭を片手で押さえた。
「……ちょっと待って。今、魔力の実って言った?」
「いったー」
「ねえ、ひょっとしてコレが?」
ウニーは手元のベリーを摘み上げてじっと見る。
「あ! ひみつなんだった!」
マメーはぱっと口を手で押さえる。はぁ、とウニーはため息をついて、ばっと庵の方を振り返った。コーンと薪を切る音はまだ響いているので、ルイスに聞かれたということはなさそうだった。
この実のことは秘密にしているように師匠に言われていたのである。実際、前にウニーが来ていた時はマメーも秘密にしていた。しかし、サポロニアンの王都にしばし滞在していて久しぶりに魔力の実をくれたので忘れてしまっていたのだ。
「ウニーちゃん、ひみつね!」
「はいはい。とても言えるようなことじゃないわ」
魔力の実は非常に貴重で高額のものだ。だが、ウニーはもうある程度マメーの非常識には目をつぶることにしているのである。
ひょいと口の中にベリーを投げ込んだ。
「……ん、甘酸っぱい」
「いただきまーす」
マメーもベリーを口にした。
「おいしい!」
「ピキー」
ゴラピーの鳴き声に、マメーはあははと笑い、ウニーは尋ねた。
「なあに?」
「ちょっとうすいんだって」
「薄い……」
味はしっかりしているので、魔力がということだろうか。ウニーは考える。
周辺環境の魔力が何らかの原因で凝ったところに魔力の実ができると聞いている。グラニッピナやマメーが不在だったから魔力が溜まらなかったのだろうか。
マメーとウニーはお腹が少しぽかぽかしてきたように感じた。
マメーたちの足元でゴラピーたちの頭上の葉っぱが、ぽんぽんぽんと音を立てて青い花に変わる。ゴラピーたちはわあいと喜んだ。ウニーは唸る。
「不思議生き物め……」
「えへへー」
「マメーが一番不思議だけどね!」
ウニーがマメーの肩を持ってぶんぶん揺すり、マメーは、あははーと笑った。
芝生の上で休んで話をしていると、畑の向こうから金の髪が近づいてくるのが見えた。ルイスである。
「休憩ですか?」
「うん、おしごとおわったからー。ルイスは?」
「ええ、私もキリの良いところです」
マメーはよいしょと立ち上がると、ゴラピーたちもぴょんと起きあがった。
「じゃ、おうちにもどろー」
マメーはウニーの手を握って立ち上がらせ、そのまま手を繋いで、るんたった歩き出した。ゴラピーたちがピキピーピューと鳴きながら後を追い、その後ろをルイスがゆっくり歩く。
小屋の手前に差し掛かった時、マメーがふと後ろを振り返った。急にマメーが止まったので、ウニーがつんのめる。
「ちょっと、どうしたの?」
マメーは森の一点をじっと見つめていた。ゴラピーたちも同じ方向に視線を向けていて、ルイスもウニーもそれが何かはわからない。
「すごいのいる」
ルイスとウニーは首を傾げた。そちらを見てもただ、木々が生えているだけだからである。
ルイスは腰の剣に手を添えて尋ねた。
「それは危険ですか?」
マメーはぷるぷると首を横に振る。
「ううん、あんぜん」
そう言ってマメーたちは後方を気にかけながら小屋へと入る。それは師匠とブリギットが森の奥へと進み、世界樹にかけられた結界を一時的に解除した時なのだった。








