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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

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第103話:ルイスとオースチンがもりにいました!

 マメーはとことこ歩いて台所へ向かう。ゴラピーたちもてちてち、ウニーもとことこついてきた。

 台所からとんとんじゅーじゅー音がして、良い匂いが漂ってくるからだ。


「ししょーおはよー!」

「ピキー!」

「ピー!」

「ピュー!」

「グラニッピナ師匠おはようございます」


 そうして台所の入り口で挨拶した。

 中では師匠がかまどの前に陣取ってフライパンや鍋を火にかけ、台の上では包丁がひとりでに踊り、野菜を刻んでいた。師匠の魔術、騒霊によるものである。


「ああ、おはよう」


 師匠はちらとマメーたちに視線をやって挨拶を返した。マメーは問う。


「きのう、ほうきでねちゃった?」

「そうさね。二人とも、ぐっすりだったよ」


 そう答えながら師匠はフライパンからこんがり焼けたベーコンを、野菜とマフィンの盛られた皿の上へと移した。美味しそうな音と匂いのもとはこれである。

 鍋から網でポーチドエッグを掬うと、軽く水を切ってベーコンの上にぽんとのせた。

 新しい卵が浮いて鍋の縁にぶつかり、ぱかりと割れて鍋の中に沈む。師匠は次のベーコンをフライパンにのせた。再びじゅーじゅーと音があがる。


「えっぐべねねくと!」

「ベネディクトな」


 マメーがぴょんと跳ねて料理名を言い、師匠が訂正する。マメーも大好きな師匠の料理の一つである。といってもマメーは師匠の料理はどれも好きであるのだが。


「なにかお運びしましょうか?」


 ウニーが手伝いを申し出るが、師匠は首を横に振った。どうせ騒霊の魔術に運ばせるのである。手伝いなど不要なのだ。代わりにこう続けた。


「それより外にいるルイスを呼んできておくれ。朝メシだとね」

「ルイスいるの!?」

「さすがに夜遅くに帰しゃしないよ」

「ん、じゃー呼んでくるね!」


 マメーとウニーは台所を出て行った。ピキピーピューとゴラピーたちは鳴きながら彼女たちの後に続く。

 小屋の玄関をあけて、まだ朝早い森に出れば、森の木々はまだ真っ黒な影を伸ばし、その梢から太陽がちょっとだけ覗いている。植物の葉っぱや蜘蛛の巣には朝露がきらきら輝いていた。

 マメーはにっこり笑みを浮かべた。


「マメーちゃん嬉しそうだね」

「うん!」


 ウニーの言葉を大きく肯定する。ゴラピーたちも嬉しそうにてちてちと駆け出した。

 この森こそがマメーやゴラピーの故郷、帰ってきたーという感じがして嬉しいのだ。

 ゴラピーたちがマメーとウニーを先導するように向かったのは小屋の横手だった。ひょいと角を曲がればルイスの姿が見える。


「あれ」


 マメーはきょとんとした。


「おはようございます、マメー、ウニー、ゴラピー」

「おはよールイス」

「おはようございます」

「オースチンもいたんだね!」


 マメーがきょとんとしたのはグリフィンのオースチンもいたからだ。マメーはびっくりしながらも喜んだ。ルイスがこの森の小屋に来るのは三度目だが、今までの二度はオースチンを森の入り口にある村、エベッツィー村に預けてから一人で歩いてきていたのである。

 この帰らずの森は、森の浅いところを除いて広範囲に結界が張られている。魔女以外で、この帰らずの森に騎乗して、あるいは空から入ることを許された者は少なくともマメーの知る限りいない。


「ええ、グラニッピナ師にこの森への出入りを許可いただきました。光栄なことです」


 そう言いながらルイスはオースチンの身体をマッサージし、ブラシをかけていた。飛んだ後に労いをすることは信頼関係を築くのに大切なのだ。


「ピグルルルゥ」


 オースチンは気持ちよさそうに甘えるような声で鳴いた。

 ゴラピーたちはオースチンに近づいて挨拶に手をあげる。オースチンも首を下げ、ちっちゃいのの前で鷲の嘴をカチカチ鳴らして挨拶に答えた。


「ごはんだって、これる?」

「ええ、すぐに伺いますよ」


 こうしてルイスも交えて五人が食卓に揃い、朝食のエッグベネディクトを食べて舌鼓を打ち、ゴラピーたちはマメーが魔力をむむむと込めた水の入ったボウルにぷかぷかと浮いていた。


「ところで、このあとの予定だがね」


 食事中にそう師匠が切り出した。


「聞くのは食いながらでいいよ。……しばらく森を離れていたからね。午前中は森の見回りをせにゃならん」

「森の奥まで行くのかしら?」


 ブリギットは尋ね、師匠は頷いた。


「じゃああたしもついていくわ。ウニーはマメーと一緒にいてちょうだい」

「はい」

「マメーははたけ!」


 マメーがピッと手をあげて言った。


「ピキー!」

「ピー!」

「ピュー!」


 森の薬草畑の大半を管理するのはマメーの大事なお仕事だ。師匠は頷き、ルイスに視線をやった。


「ああ、頼んだよ。ルイスはマメーたちを見てやってくれるかい?」

「ええ、かしこまりました。何かしておくことはありますか? 力仕事ならなんでもしますよ。薪作りとか」

「じゃあ頼もうかねえ」

「華々しき銀の副騎士団長に薪割りを頼むなんて、王都の女の子たちが聞いたら悲鳴をあげるわね!」


 ブリギットはけらけらと笑う。

 ルイスは良いのですよと微笑みを返した。


「おひるたべて、ごごは?」


 マメーが元気よく尋ねる。


「午後は……エベッツィー村に行くよ」


 師匠の言葉にマメーはしょんもりした。

ξ˚⊿˚)ξ昨日8/15にヴィルヘルミーナのコミカライズが、

今日8/16に朱太后秘録のコミカライズが公開されています。


ぜひそちらもご高覧くださいましー。

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― 新着の感想 ―
[一言] しょんもりの響きが良い
[一言] 何しに行くんだろう…。
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