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【書籍化】マメーとちっこいの 〜 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く【コミカライズ】  作者: ただのぎょー
第二章:聖女なんていわれましても

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102/203

第101話:おそらをとんでかえります!

ξ˚⊿˚)ξ第二章、掲載開始です!

 ルナ王女にかけられた呪いが快癒したことを祝う宴を終えて、箒で飛び立ち去ったマメーたちを追いかけてきたのはグリフィンに騎乗したルイスであった。

 サポロニアンの王城の庭で待機し、彼らが飛び立つのを待っていたのだ。


「グラニッピナ師! 森までお送りいたします!」


 彼はグリフィンの背の上で叫んだ。


「ルイスだ!」

「ピキー!」

「ピー!」

「ピュー!」


 マメーがぶんぶんと手を振れば、彼女の使い魔である三匹のゴラピーたちも、マメーの着る茶色いローブのフードの中で鳴き声をあげてちっちゃな手をぶんぶんと振る。

 マメーの言葉に答えるように、ルイスは拍車をかけて愛騎であるオースチンを力強く羽ばたかせ、一気に加速すると先をゆく二本の箒と並んだ。


「あら、こんばんわ」


 ブリギットが声をかけ、その背でウニーがぺこりとお辞儀をする。

 今夜はブリギットも姉弟子のグラニッピナと共に飛んでいるためスピードを出していない。ウニーは安堵したような表情を浮かべていた。


「わざわざ送らなくてもいいのさね」

「もちろん魔女殿たちにとって空の旅に危険などないことは存じております。ですが、護衛も出さず返したとあれば王家の名折れですから」


 師匠は言い、ルイスはそう返した。

 王家としてもしっかりと礼を尽くしているという態度を示さねばならないのだ。本来なら王城の広間にて貴族たちも前にして、魔女たちに感謝の言葉と褒美を与えたいところを、そういったものを嫌がるグラニッピナに配慮してやめたという経緯がある。

 せめて見送りの護衛を出したという事実は必要であった。


「夜間飛行は難しいだろうに」


 師匠は言う。グリフィンは鷲の頭部と獅子の身体を有する魔獣である。その眼はどこまでも遠くを見通すことができるが、夜の闇には弱い。

 ルイスはカンテラを片手で掲げて飛んでいるが、それでも月明かりとそのあかりだけで飛行するのは困難である。


「それができてこその銀翼騎士団なので」


 銀翼騎士団はサポロニアン王家の虎の子と言える、有翼の魔獣を乗騎とする騎士団であり、ルイスは若くしてその副団長を勤めているのだ。その腕前は確かであった。


「ふむ……〈光〉」


 師匠が一言呟くと、師匠の周囲に十を超える小さな光の球が生まれた。

 彼女が手を振ればそのうちのいくつかはルイスとブリギットの前に飛んでいき、いくつかは師匠とマメーの周囲に漂い、夜空を照らす明かりとなる。


「感謝します」


 ルイスが師匠に頭を下げつつ、その魔術の腕前に舌を巻いた。

 小さな光を生み出すのは最も基礎の魔術の一つだ。だが、同時に複数生むのは高度な技術であるし、驚くのは飛行中、つまり高速で移動しているのにそれに追随する速度で光を生み出したことである。


「きらきらー」

「ピー」


 マメーがふわふわと自分の前を漂う光に喜べば、黄色いゴラピーもわあいと声をあげて、フードの中から手を伸ばそうとして青いゴラピーに止められていた。赤いゴラピーはがさごそとマメーのフードの中から立派な羽根を取り出すと、グリフィンのオースチンに向けてふりふりと振った。


「あ、オースチンからはねもらったんだってね。ありがとねー」


 赤いゴラピーが振っている羽根はオースチンからもらったものであった。マメーがその感謝の言葉を伝えれば、ピェッ! と短く鋭くオースチンが鳴いて答えた。


「ふあぁぁぁ」


 マメーがあくびを一つ。


「ピキ……」

「ピュ……」


 マメーの背中でゴラピーたちも弱く鳴く。マメーはぎゅっと師匠のローブを握った。


「眠いのさね?」

「……ちょっと」


 ちょっととマメーは言うが、その声はずいぶんと眠そうである。

 師匠が自分の身体に回されたマメーの手を握ると、随分と熱く感じられた。子供は体温が高いが、こうして眠くなると特に手足が温かくなるものだ。

 マメーは寝るのが早いが、それにしてもまだ眠る時間というほどでもない。師匠が隣を行く箒を見れば、ブリギットの箒の上でもウニーがうつらうつらとしていた。オレンジのローブの上で、夜と同じ色の髪がゆらゆらと揺れている。


「なによ、あたしの箒で寝るとはずいぶん余裕ね」

「うにぃ……起きてますよししょー」


 寝ぼけたやりとりが聞こえてくる。ふふん、と師匠は笑って言った。


「まあ二人とも眠っちまいな」


 今晩は普段あまり食べる機会などないごちそうをたらふく食べていたせいもあるだろうし、天真爛漫に振る舞っていても、普段の静かな森の中とはまるで異なる王城に滞在していたのだ。疲労が蓄積しているのだろう。


「ん……」


 ちょいちょいと師匠はマメーの身体を何箇所か触り、ブリギットの箒に身を寄せるとウニーの身体にも触った。固定の魔術を使って箒から落ちないようにしたのである。

 マメーはぎゅ、と師匠の身体に回す手に力を込める。


「……おやすみ、ししょー」

「あいよ」


 師匠の身体は枯れ枝の如くに細いが、何よりもしっかりしているように感じられる。マメーは安心してその身を師匠の背に預けた。


「さて、ちょいと速度を上げようか」

「ええ」

「畏まりました」


 マメーはそんなやりとりを耳にしたところで眠りに落ちたのだった。

ξ˚⊿˚)ξまたよろしくお願いしますー。


そういえば拙作、『ヴィルヘルミーナ』のコミカライズですが、たぶん明日(8/15)に第3話公開になるはず。そちらもぜひー。

よろしくおねがいしますー。

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― 新着の感想 ―
[一言] 下から見ると流れ星10個に見えるんでしょうか。
[良い点] またマメーのお話をお相伴できるのですね! 楽しみ♪
[一言] ( ˘ω˘)スヤァ
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