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タイプJ  作者: 涼森巳王(東堂薫)
三章 クリーチャー
33/80

三章2-4


 研究室の奥に通じる三つのハッチ。

 あの向こうには、ドクもつれていってくれなかった。秘密が隠されているからだろうか?


 ジェイドは考えた。


「ドアが三つに人間が三人。手わけして調べようか」

「たまには意見が一致するな」


 横柄なEDの答え。


「言いかたがムカつくなぁ」


 言いあいながら、研究室へしのびこむ。

 ラボの明かりは落とされていた。

 だが、機器には電気が通っている。ほのかに明るい。

 サポーターは壁ぎわにならんで、調整機におさまっている。


 ジェイドたちは奥のハッチの前へ、まっすぐ歩いていった。


「あかないな」


 とうぜん、ハッチはロックされている。ハッチのよこには、IDカードか、キーカードをさしこむ挿入口があった。


(カード……ID認識のキーカードか)


 ジェイドはポケットに手をつっこんだ。ポケットには、エヴァンのベースキャンプをあけた、あのキーカードが入っている。


 EDも同じことを考えたらしい。

 同時にカードをとりだして、ちょっと、にらみあった。


「気があうね」


 ジェイドがニヤリと笑うと、EDは不愉快そうな顔をした。


「あれ? あけないの? なら、おれが」


 ジェイドがキーカードをさしこむと、ハッチはひらいた。


「やったな。じゃあ、とりあえず下見ってことで、三十分後にここで落ちあうってのはどうだ? 怪しいものを見つけたら、あらためて三人で調べよう」


「きさまの命令に従う気はない」と言いながら、EDは左端のハッチを自分のカードでひらき、入っていった。


 ジェイドは、たったいまあけた、まんなかのハッチを自動でしまらないよう手で押さえる。


「パール、ここをたのむ。おれは右端に行ってみる」


 カードをぬきとりながら言う。


「いいけど、なかから、あけるときにもキーカードがいるんじゃない?」

「おれが右端、調べて戻ってきたら、外からここをあけるよ」

「そうね」


 パールがジェイドに代わって、ハッチを押さえる。

 ジェイドは右端のハッチの前に移動した。


「パール。三十分後に」


 うなずきあって、なかへ入った。


 ハッチのなかは薄暗かった。

 赤外線スコープに切りかえる。

 視界が赤く染まり、あたりを見渡せるようになる。


 そこは動力室のようだ。

 ソーラーシステムの発電機が、まんなかに居座っている。

 ほかにも、地下水をくみあげるポンプや、くみあげた水を建物内に供給するパイプ、空調機、セキュリティシステムなどが目につく。


 施設としては大切な心臓部だが、犯人を確定する手がかりには結びつきそうにない。


 ひとつ気になったのは、四角い部屋のすみにある、ガラスの筒だ。なかに反重力ボードが浮かんでいる。エレベーターだ。

 エレベーターに乗っていったさきに何かがあるかもしれない。


 ジェイドはエレベーターに歩みよった。上下のボタンが一個ずつ、筒の外についている。上のボタンを押すと、ガラスのドアがスライドした。内部に操縦パネル的なものは何もない。


 ジェイドが反重力ボードに乗ると、自動で動いた。まっすぐ上昇していく。かなりの距離だ。時間にすると、ほんの数秒だが、距離で言えば百メートルは上がっただろう。


 ガラスの筒の向こうに見えるのは岩壁ばかりだ。地上から地下へ、ずどんとボーリングしてあけた穴みたいな構造だ。どうやら、地上まで直通らしい。


 やがて、反重力ボードが停止した。

 出口のガラスドアが開閉する。

 超合金張りのせまい室内。

 だが、なんとなく空気でわかる。

 この外は地上なのだ。


 ジェイドは無造作に置かれた、さまざまな用具のあいだを通り、向こうに見えるハッチのほうへ向かった。


 ここでも、エヴァンのキーカードが役に立つ。ハッチがひらいた。

 明るい星空。

 赤外線スコープの赤い視野に、外の景色が映った。


(なんだ。これ——)


 ジェイドは愕然とした。

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