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涼 と 雑談 と いにしえの町並み


「ええっと、他の配信者の方がどの程度の難易度のダンジョンに挑戦されているのかは分からないんですけど――ボクの場合、ここのダンジョンはちょっと手強いランクなので、安全マージンからコメント拾えなくなったりするコトもあるかもしれません」


:安全マージン大事

:それは仕方ない

:危ないコトしないでほしい

:↑そもそも探索があぶない

:↑もっというと探索しながら配信とか危ない


「そうなんですよ。探索者って配信のおかげで有名になってきましたけど、そもそも危険な仕事なんですよ」


:涼ちんガチ勢?

:もしかしなくてもベテラン?

:若いベテランってどういうコト?

:一応保護者の同意があれば小学生でも資格は取れるぞ


「みなさんの推察通り、配信する前からソロであちこち潜ってました」


:そう思うと前回の動きも納得

:ソロだからよけいな戦闘避ける技術が身についてるのか


 なにやら勝手に納得しているコメント欄をみながら、涼は香へと合図を送った。


「それじゃあ、潜りますかね。

 モカP、ドローンの操作よろしく」


 そうして、涼はドローンを伴いながら、エントランスの階段を下りていく。


 エントランスの階段を下り、洞窟のような廊下を抜ける。


 その先に広がっているのは――


「この光景もある意味でダンジョンならではですよね」


 洞窟のような天井はあるが、遙かに高く。

 謎の光源によって照らされているその内部は、それこそ史跡が現存していた時代のような光景だ。


 鎌倉時代の日本というべきか。厳密には違うかもしれないがそう思わせる光景だ。

 中央に大きな建物があり、周辺には建物が並ぶ。ある種の町だ。


:時代劇みたい

:すごいな

:タイムスリップしてる?


「中央の建物へ入るための門はまだ誰も開けたコトがないみたいなんですよね」


 洞窟から出て、町の中を歩きながら涼はコメントを拾って会話をしていく。


「町の中にある入れる建物は全部内部が小規模なダンジョンになっているので、恐らくはどこかに鍵があって、それを使って中央の建物に入る必要があるんでしょうけど……」


:いやそうは言ってもさ

:どんだけ家あんよ

:そりゃあ難易度高いわ


「この町の規模としては東京ドームと同じくらいだそうです。

 東京ドームに行ったコトないんで広さにピンとは来ないんですけど」


:わかる

:東京人優遇単位ぐう無能

:それな

:東京人でもピンと来ないんだよなぁ


「人海戦術の総当たりすればカギは見つけられそうですけど……たぶん誰もやりたがらないと思います」


:その町並みで思い出したわ、不人気ダンジョンやろそこ

:人気ないの?

:なんで?


「あ、コメントで指摘ありますね。その通りです。

 ここは都内どころか日本のダンジョンの中でも上位? ……いや、下位に入るくらいの不人気ダンジョンです」


:まじかw

:なんで?


「採取できるモンスター素材が強い割には微妙なんですよね。

 各種小規模ダンジョンでは、他のダンジョンでよく見かけるようなダンジョン産の薬草や鉱石もロクに採取できません。

 探索者視点で見ると攻略にかかる労力の割にうま味が全くないダンジョンというコトになります」


:それは確かに……

:でも配信向きのダンジョンでは?

:って思うじゃん?


「知名度も低いっていうのはあると思います」


 そう答えながら、涼は大通りを途中から横へ入って進む。

 お店っぽい雰囲気の建物の多いそこを歩きながら、コメントの質問に答えていく。


「モノを知らなくて申し訳ないんですけど、みなさんに聞いてもいいですか?」


:かもん

:どうぞ

:おk


「ボク、配信者の方で探索者としての実力をちゃんと知っているのは大角ディアさんくらいなんですけど……ディアさんを基準にして、彼女のよりも探索者として上位の配信者さんってどのくらいいるんです?」


:ディアちゃんは配信者の中じゃ探索者能力上位じゃね?

:単純な戦闘力や探索能力高いって聞くけど

:配信気にしないならシャークダイルもイケるらしい


「なるほど。ありがとうございます。

 そうすると、このダンジョンで配信はちょっと厳しいかもですね。

 最初に言いましたが、シャークダイルと同等ランクのモンスターが最弱として出てくるレベルなので」


:あー

:きついな

:ガチ勢にも配信勢にもうま味がなさすぎる


 そんなやりとりをしながら、涼は目的地を見つけて足を止める。

 豪商の家か何かなのか、少し大きめの建物だ。


「着きました。ここの小規模ダンジョンを今日は潜ろうと思います」


:まってた

:きたきた

:そういやモンスターは?


「あ、言ってませんでしたっけ?

 町の中にはモンスターはでません。基本、家の中だけですね」


 入りますよ――と告げて、涼が家の引き戸を開ける。

 すると、その中には水色を中心としたマーブル模様の何かが渦巻いていた。


「それじゃあ行きます」


 ためらわず涼は中へと踏み入れていく。

 視界が数秒ぐにゃぐにゃしたあと、涼は不思議な雰囲気の草原に立っていた。


 背後には石造りの祭壇のようなモノがあり、そこに水色マーブルの渦が浮いている。

 あの渦へと飛び込めば、元いた町へと帰還できる。


:うえ、酔った

:画面越しだときつい

:画面越しでもきっつ


「リアルでもキツいですあれ。弱い人は一発で酔いますよ」


:次から警告ぷりづ


「あ、そうでしたね。すみません」


 確かにその通りだ――と反省しつつ、涼は草原へと踏み出していく。


「ここからはお喋りを少し控えさせてもらいます。

 モカPもドローンの位置取り、注意して」


:《モカP》OKだ。無理するなよ

:モカPだ

:モカPきた


「がんばって撮れ高は上げるよ。鶏肉用意して待ってて」


:鶏肉ww

:《モカP》撮れ高次第で料理の内容は変わるぜ

:撮れ高報酬それでいいんだww


「なら、一番美味しいの用意しておくように」


:涼ちんすげー自信

:二人のやりとりすこ

:安定の鶏肉

:バディ感いいな

:《シロナ》ごちそうさまでした

:ん?

:なんだ?

:今なにかいたぞ?

:ごちそうさまってなんだ?

:ディアちゃん大あらぶり

:もしかしてディアちゃんのマネさん?

:二人揃ってお叱りフラグ立った?


 盛り上がるコメント欄を横目に、涼はドローンの頭を撫でてコメント欄のホロ表示を消すと、正面を見据える。


 香は、その顔がもっともよく見える位置に、ドローンを移動させた。


「それじゃあ、行こうか」


 凛々しい横顔で、小さくだけど不敵に呟く涼の声を、ドローンはしっかりと拾っていた。



【Idle Talk】

「白凪さん、なにハンドル付きでコメントしちゃってるんですかッ!?」

「はッ!? すみません、あまりにも美味しいやりとりだったのでつい……」

「美味しいってなに……?」



「二人とも、涼ちゃんねるの配信が終わったら偉い人からお話があるそうです」



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