涼 と みんな と マザーグースの親子丼
:さて何が出てくる?
:卵料理かぁ
涼と視聴者たちがワクワクしている中、スキレットをコンロに乗せた。
:卵、小型スキレット……
:これだけだとなんとも
:そりゃあ鍋だけ見せられて料理当てるとか難しいだろ
:親子丼、オムレツ、フレンチトースト辺りか
:すでに絞れている人がいるのなんなんだよ・・・
「あ、お肉も焼くんだ?」
「そうだよー。マザーグースのもも肉」
一口サイズにカットしたもも肉をスキレットで焼く。
それからタマネギを入れて、一緒に軽く炒める。
:これはあれですわ
:ここまでくればさすがに分かる
:いや最高では?
:料理好き勢はこれで分かるのか
:むしろ分からない勢がいるのに驚く
「ふふ、さらにここへ、赤バッパラの中途半端に残った肉のカケラをパラリと」
:マザーグースxバッパラ!
:これをマザーグースの卵で纏めるワケだから・・・
:読めた!家族でも友達でもない顔もしらないどこかの子供が勝手に自宅の布団に包まってる丼だな!?
:恐すぎるだろ!それに子供とは限らないんだぞ!
:子供じゃなかった場合は別の意味で恐いわ!!
:そもそも親子の間に我が物顔で挟まってるだろコレ
:つまり親子の間に我が物顔で知らないやつが挟まってる丼か!!
:しかも細切れでな!
:それいったら親はモモを切り取られ、子は潰され液状化してから固められてるぞ?
「あの、親子丼をそういう表現するのやめません?」
:涼ちゃんからマジツッコミあざますww
:でも料理ってだいたいそういうモンでしょ?
「そう言われるとそうなんですけど」
:ディアちゃん親子丼作ってたのか!
:いや間に挟まってる丼とかの時点で分かるでしょ?
:・・・すまん
:涼ちゃんが親子丼と言うまで気づかなかった人もいるんですよ!私とか!
:むしろこっちこそすまんな
:コメ欄の謎の謝罪合戦草
「涼ちゃんがコメント欄と戯れている間に、マザーグースの親子丼! 完成です!」
ぷりぷりとしたもも肉に、ほんのりと赤い小さなカケラたち。
それらが割り下の海に半身浴しており、とろとろの黄色い衣をかけられている。
「どんぶりのご飯の上にこれを乗せて、刻んだ万能ネギをぱらりと振りかけ、三つ葉を添えて……はい。どーぞ!」
「わー!」
:目を輝かせたパチパチ拍手
:この幼児化涼ちゃんが可愛すぎてな
:わかる
:守りたいこの笑顔
カメラの外でスタッフが作っていたモノも、ゲストたちに渡されていく。
「バッパラは面白いけど変わり種過ぎて満足感は薄かったと思うしね。やっぱ最後はこういうド直球な鶏料理の方が分かりやすいでしょ?」
「うん!」
ディアの言葉に、涼だけでなく、ゲストたちも「それはそう」という顔でうなずいていた。
:いまの「うん」ぐぅかわ
:普段ポーカーフェイスな分鳥が絡んで表情キラキラするギャップ良いんだよなぁ
:鳥が絡んで嬉しそうな時だいたい子供っぽいのもいい
:涼ちんのママになりたい
:ならばパパは私だ
:《モカP》保護者の座を譲る気はないんで
:モカPwww
:保護者自覚草
「それじゃあ、全員の元に届いたようなので――」
「いただきまーす!」
誰かの手元にカメラが切り替わり、映されるどんぶりの姿に、視聴者たちも生唾を飲み込んだ。
:うわぁトロットロやないですかい
:ふつうに旨そう
:親子丼としてレベル高くない??
:あ!お前らグラサンしてるか!?スチャ
:そうだった!スチャ
:あぶないあぶないスチャ
:指摘サンキュースチャ
:見るからに輝きそうだもんなスチャ
艶めかしい親子丼の雰囲気に飲み込まれかけていた視聴者たちの中にいた正気の者の一言で、コメント欄がスチャ弾幕で埋まっていく。
当の涼はそんなコメント欄など気にも掛けずに、親子丼を口に運んだ。
「んー!」
そして、一口食べた涼の顔が今日イチで輝いた。
:たーまやー
:これは見事な輝きで
:そんなに美味いんかー
:目がー!目がー!
:親子丼に見蕩れててスチャスチャしそびれてるやつそこそこおるな笑
「もも肉ぷりっぷりで、歯ごたえしっかりな感じ、軍鶏肉に似てるね!」
「そうなんだよね。ふつうの七面鳥と違って旨味もかなり強いから、こうやって親子丼にしてもしっかり旨味あるんだよ」
「でも鶏や軍鶏じゃなくて七面鳥って味だよね。
卵も、しっかり濃い味で、コク深い卵ながらもマザーグース由来の独特の風味があるから、他のお肉との相性は何とも言えないけど……。
マザーグースの卵だからマザーグースのもも肉との相性は完璧だと思う。
そこに少し混ざる赤バッパラ肉の、ピリとした感じが、全体をまとめて引き締めてる感じ。これはすごい親子丼を食べてる!」
:輝きながらの饒舌な食レポ!
:しかも早口だ!
:喋りながらも輝きは増してるぞ!やばいな親子丼!
:確かにふつうに美味しそうだもんなぁ
:カモカツカレー、わんぱく唐揚げマウンテン、親子丼……コラボの〆はいつも分かりやすくて強烈なのが多いな
「そりゃあ、珍しい料理や変わった食材も面白いけどさ。
最後はやっぱ分かりやすくてリスナーが盛り上がれる料理じゃないと――って打算はあるよ」
:ディアちゃんが配信者の鑑みたいな発言してる
:配信用の配膳順ってコース料理の配膳順とは別の組み立てが必要そうだなぁ
:味の組み立てと共にリスナーの盛り上がる順番も考えるのか面白そう
:またガチ料理勢が何か言ってるぞ
「個人的な配信用コース料理の組み立ての基本的な考え方ですけど――
最初は見栄えのインパクト。食材だったり味付けだったりがインパクトある方がいいですね。あるいは完成した料理がド迫力だったり。同時にこのあとの配信に出てくる料理に興味とワクワクを持って貰えるような感じ?
最後は味が分かりやすくインパクトがあるもの。この親子丼もそうですし、以前のカツカレーとか唐揚げマウンテンとかですね」
:食べる人だけじゃなくて見る人を楽しませるワケか
:確かに視聴者は食べられないもんな
「中盤は面白かったり、味が分かりづらかったりするのでも大丈夫です。むしろそういうのは分かりやすいネタでサンドイッチするように配信します。
変わり種連投はネタになりますけど、料理配信なのに味が分かりづらいみたいなところがありますからね。そうすると、料理ガチ勢以外は興味なくなる可能性があるので」
:勉強になる
:ふつうに配信する時にも使える考え方では?
「あくまで私の考え方なので、参考にしてもいいけど、役に立たなくても怒らないでねー」
:だそうだから、切り抜くやつは気をつけとけよ
:しかし今日は探索者ニキたちの出番ないなー
:マザーグースが分かりやすすぎる相手だったしな
:最近はお説教も必要なくなってくる程度にはリスナーも飼い慣らされてきたから
「さて、ゲストの皆さん。親子丼はどうですかー?」
ディアの質問に合わせてカメラがそちらへと向く。
それに、最初に反応したのは守だった。
「いや最高だ。なんつーかこう、一番しっくりくる。そして美味い」
「わっかる~~! バッパラ肉も良かったんだけど~~、なんか安心するよね親子丼。そしてめちゃくちゃうま~~い!」
守と心愛からは好評のようだ。
「極上の親子丼であるな。旨い。
こうなってくると、モンスター食材というのももっと視野に入れるべきかもしれぬ」
「涼さんの言ったように軍鶏に似た食感ですが、風味は異なりますね。独特のクセのようなモノはありますが、それがむしろ美味しい。これは恐らく卵によるモノでしょう」
「元の食材についてはともかく、この親子丼は見た目も味も最高だな。こういうのを食べていると、自分はやはり日本人なのだと感じるよ」
一成、旋、良轟たちもまた太鼓判を押していく。
「よかったー! 試食した時も美味しいって思ったけど、皆に食べて貰うまではやっぱり不安だったからね」
:あの見た目で不味いワケがないんだよ
:くそ親子丼食べたくなってきた
:配信終わったらコンビニ行って来る
:近所親子丼食べれる定食チェーンがあったはず
:そのどちらもないやつはどうすれば・・・
「ぷりぷり、とろとろ、ふわふわ、ぴりぴり……ディアさん最高でした! おかわり!」
「もちろんあるよー!」
:どう考えてもおかわりの流れじゃなかったよね!?
:流れ的にごちそうさまだと思ったんだけど笑
:そしてちゃんとおかわりあるのは流石で草
:さて、雰囲気的にはそろそろか
:時間的にも終わりが近づいてるしね
:絶対くるぞー
:なんだ?なにがそろそろなんだ?
:裏で誰も配信してなかったしなぁ
:あー・・・それも恒例になってるよなw
「まだ配信が終わってなくても……ッ!」
「もはやアタシらには関係ねぇ……ッ!」
「むしろ待たれている気配まであるなら乱入だ……ッ!」
:来たな
:あーあ来ちゃった
「剣名ツボミ!」
「灯籠カママ!」
「羽粉リン!」
:まぁた無駄にポーズ決めてww
:ヒーローみたいに乱入してきたwwww
:前回のやつで味を占めたなこいつら笑
:この子たち誰?
:ディアちゃんと同じ事務所のダンジョン配信者ちゃん
「我らディアちゃん以外のダン配三人娘!」
「完全に大角ディアの人気に抜かれてしまった者!」
「我らおこぼれを目的とするべく義など無く乱入しに参った!」
:自虐が酷くなってるww
:自虐が悪化してて大草原
:そしてもはや助太刀ですらなくなってる笑笑
「……あげませんよ?」
:涼ちんがおかわりを背中に隠してる
:前回も唐揚げをそうやって隠してたよな
:その姿勢でどうやってるんだか食べるのやめてないのがすごいw
「その子供のような隠し方が人気の秘訣と見た!」
「アタシらもパクるべきかもしれない!」
「パクるとしていつやるの?」
:この子たちさぁwwww
「ともあれ! ワタシたちの分がありましたら今回も是非分けてください!」
「その為だったらディアの靴だって舐めるわ! いつものようにツボミが!」
「もういっそその為に奴隷にしてくれて構わないから! これまで通りツボミを!」
「やっぱりワタシ生け贄!? でもいつものようにディアさんの好きなようにいたぶってください」
「だいぶ人聞きの悪いコト言ってる自覚ある!?」
ディアのツッコミに、さりとて三人は気にした様子はない。
:相変わらず賑やかだなぁw
:でもこの子たちが来たってコトは……
「ディアさん。そろそろ〆の時間だってカンペでてます」
「あ、ほんとだ!」
「え? ワタシたち食べれないの!?」
:ツボミちゃんさぁww
:いつも配信後に貰ってるの忘れてて草
「いつもと同じく用意してあるから。ほら、あっちでスタッフさんが手招きしてる」
「ほんとだ! ありがとー! ディアちゃんやっぱいっぱい愛してる!」
「ディア! いつも私たちの為にありがとうね! 涼ちゃんも!!」
「やっぱディアさんも涼さんも良い人ですよね! では失礼します!!」
:ものすごい勢いでフェードアウトしてったなw
:まぁでもあの料理が待ってるんだとしたら気持ちは分かる
:わざわざスキル使って高速移動してるもんなぁ。。。w
「ヤキトリうまぁぁぁぁぁぁぁい!!」
「なにこのステーキ面白ぉぉぉぉい!!」
「親子丼とろとろさいこー!!」
:声がデカい!
:うるせぇなぁww
「涼ちゃん、おかわり食べ終わった?」
「うん」
「じゃあ〆に入るよ?」
「おっけー」
:はやいな
:乱入者とやりとりしながらガッツリ喰ってたもんな
「なんだか最後にドタバタしましたが! 美食家の皆さん、チキンの皆さん! 次回も私のキッチンと!」
「涼ちゃんねる、それぞれの場所でお会いしましょう!」
:涼ちゃんが珍しく棒じゃない!?
:しかも結構楽しそうな顔してる!?
:なんかレア映像見せられてない!?
「またねー」
「コンゴトモヨロシク!」
:ばいばーい
:こっちはいつも通りの棒で安心した
:おつかれさまー
:やっぱ棒じゃなきゃな
「ディアちゃんおかわりある?」
「ちょっとツボミ、さすがにそれは……」
「おかわりあるなら俺も欲しいぞ」
「守がもらえるなら心愛ちゃんもほしい~~!!」
:画面が暗くなってく中で好き勝手言ってら笑
:もう終わりだってのに終わる気配がない感じすごいww
:いつものこといつものこと
「どうしたの涼ちゃん? え? うん。まだマザーグースの肉はいっぱいあるけど」
「じゃあ、ボクが焼くんで貰っても?」
「いいよー」
:待って!?
:完全にブラックアウトした裏でなんで料理しようとしてんの!?
:涼ちんの料理とか撮れ高ありそうじゃん!?
:これあとでアップされるよね!?
:なんで毎度カメラが回らなくなったところで動くやついるんだよ!
:《出部長》今回もみなさまありがとうございました。まぁブラックアウトしても賑やかなのはいつものコトなので気にしないでくださいな
:無茶言うなwwww
:《モカP》涼があまり反応できてなくて申し訳ないですがスパチャなどなど色々ありがとうございました
:《出部長》今後ともディアーズキッチン、涼ちゃんねるをよろしくしてやってください
:《シロナ》そういえばいつもの挨拶をしてませんでしたね
:いつもの?
:ああそういえば
「涼ちゃんカンペでてる」
「これから新しく作るのに?」
「いやほら、一応区切りってやつは必要なので。こっちはこっちで新しくいただきますすればいいからね」
:確かに
:それを忘れるのは涼ディアらしくないなw
「では、涼ちゃん」
「うん」
「せーの……」
『ごちそうさまでした!!』
:ごっそさーん
:スタッフ含めた一斉の声いいよね
:改めておつかれさまでしたー
:ごちそうさまでしたー!
===この配信は終了しました===
【Idle Talk】
いつものごとく、配信後のアウターイベントの様子は出部長によってワーブラーに投稿されました。
撮影中、カメラ外の個別の表情集などもワブに公開され、ゲストも含めて好意的にネタにされるのでした。
何気で良轟の表情が一番豊かだったのもあって、何気に弄られるコトに。
ディアーズキッチンへの、再出演の要望も少なからずあった様子。
===
これにて三章終了となります。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
キリの良いこのタイミングで是非とも ブクマや評価などで応援をして頂ければ幸いです。
すでに、ブクマや評価などをして頂いた皆様、いつもありがとうございます。引き続きよろしくしていただければ嬉しいです。
ここしばらく駆け足だったのでだいぶ息切れしてしまいましたので、少し休憩してから四章を始めたいと思います。
再開しましたら、またよろしくお願いします。




