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トライトライトライ

トライトライトライ


 散々運動して疲れた一行は青春の1ページに筋肉痛を刻み込んで今日の会はお開きとなった。しかし犯人探しはと言えば、むしろここからが本番ではあった。


 押収したスマートフォンの通信履歴解析、今まで使われた基地局の割り出しが出来れば自ずと敵の居所はある程度分かってくる。家のデスクトップ型のPCに、デジタルフォレンジック機器を合わせて敵の痕跡を辿る。自室のDF機器は以前ホワイトハッカーとして協力して欲しいと依頼されて仕事をしたサイバーセキュリティを専門とする会社、エクステンドから譲り受けたものだ。聞くにDF機器はなかなかの高額な値段をする貴重な機器らしいが、エクステンドの社長、高嶺潤一郎は警察など公的機関からの仕事をバンバン請け負い、その信用を高めると民間企業からもサイバーセキュリティ関連の仕事が山のように舞い込んでいるらしく、彼はちょっとした素封家になっている。 


 それもあってか新しい機器を導入したエクステンドは、お祓い箱になった少し旧型のDF機器を私に譲ってくれたという経緯がある。それに高嶺は優秀な人材には投資を惜しまない。という矜持があるらしく、私のハッカーとして技量を見込んでの将来投資だと言って腹を揺らして笑っていた。無論恩を売られても返す義理はないが、暇な時は仕事を手伝うと約束してしまったので、今後もこの高嶺氏との関係は続いていくのだろう。


 そんな事を思い出しつつDF機器を使ってスマートフォンを解析していくと、思ったよりもデータは簡単に抽出出来た。


 主な通信履歴や位置情報などをデスクトップ型PCに情報を映していく。この情報からすると、同じ県内の特定の民家から通信が発せられており、アプリのトーク履歴からは、一人突出した回数の人間がおり、その相手に弓木芽衣のスマートフォンの利用状況を報告している事が分かる。ここから分かることはこのスマートフォンを所有していた人間もまた犯人に協力している人間であることだ。ここまで警戒する犯人の用意周到さには舌を巻く。それでももう尻尾は掴んだ。犯人は予想通りというべきか、学内の生徒だ。


 この情報をもって調査終了し、あいつと弓木に真実を伝えるべきかと思案をめぐらせる。しかし動機もまた気になるところではあった。学内の生徒の情報は大体は知っているつもりだが、さすがの私も膨大な生徒の情報全ての仔細に把握しているわけでもない。この一カ月を通してこの犯人の協力者と、犯人本人を懲らしめる算段をつけてから知らせるのも悪くないだろうと、私の中の欲望が囁く。この醜い人間の深淵を覗いてみたい。


 どうにも私は人の醜い部分が好きなのかもしれない。自分の中の欲望が私の中の行動指針を決めていく。どうにも綻ぶ顔に手を当てながら、私は高揚した気分に浸る。

 

 ゲーミングチェアに背を預けてぐるりと一周回る。明かりを消した自室の天井にはPCの光に照らされた私の影が大きく映る。その影は私の欲望の深さを表しているようだった。

これにて轟舞は一旦終わり!!次回は誰が語り手となるのか!

是非読んでね!!

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