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猫に寝転ぶ

ようやく答え合わせの時が来たようですね。


あなたは真実を知る‥


大した事ない真実を‥

猫に寝転ぶ


「ちなみになんだが、ブラは借してくれないのか?」


「え、それも?」


 物凄く嫌そうな顔をしたかなみは何をどう考えたのか私の方見て助けを求めてくる。せっかく出来た友達が困っているのに何もせずに見捨てるのは薄情者の誹りを免れないだろう。ここは何かないかと一考すると、サイズのことに気がつく。


「えっとさ、かなみと松田さんじゃブラのサイズ違うから変にならない?」


「おお!そう言えばそうだった!良いところに気がつくな!ユミッキー!ちなみに結城ちゃんのサイズはいくつなんだい?私はDカップだ!」


 なんの悪意も持たずにこうもずけずけ聞けるとむしろ清々しさも覚える。


「いや‥」


 かなみはとても答えづらそうにしているが、助けて船を出したはずが援護射撃した格好になった私は正座に両手を膝に置いて沈黙を貫く。



「Eかな??」


どう考えてもセクハラパワハラ案件だろうが、松田さんは止まる事を知らない。


「いや‥F‥です‥。」


「おお!それはそれは!見かけよりも大きい!さては隠れ巨乳を隠しておったな!もう、すみにおけないなぁ、結城ちゃんは。流石にそのサイズ感では結城ちゃんのブラは着れないかー。よし!ならば諦めよう!上は無しで帰る!」


 ポリシー貫きやがった。


 正直言ってここまでくると彼女というか、もはや獣のような淫乱な生物を止める術はなく、もう好きにしてくれ!とばかり匙を投げた。


 しかしだ、ようやく制服を着た松田さんの胸がもうダメだ、気になる。どう見ても白いシャツに肌色が透け過ぎている。どうかこの人間を淫乱な罪で逮捕してほしい。


「いやはや、ミルクのやつ今日はやたら機嫌がいいな。男には寄り付かないくせに、やたら女の子には食いつきがいいんだよなー。特に可愛い子にはベッタリだもんなぁ。」


「いやいや、そんな事ないでしょ。元々人懐っこい性格なんじゃないかな。」


「んーん。そうだろうか。家でも父には寄り付かないんだが。試しに他の男で実験しようと連れてきたのだが、進藤と佐藤がいないのでは無駄骨だったな。」


「まあ、私としては可愛い猫ちゃんに会えて嬉しいけど。」


 自由なきままな白猫は、部屋をキョロキョロと見回してから、ここが良いだろうとばかりに、まっさらなベッドに飛び乗ると体を丸めて寝息を立てる。


「しかしミルクは放浪癖あるので大変なのだよ。去勢しているからそんなはずはないのだが、なんかどっか可愛い女の子でも探しに行ってるのかもしれんな。」


「そうなんだ。ちなみに前に大山氷川神社で見かけたよ。」


「おお!あの神社か!あそこは縁結びの神社で有名でな。夜な夜な男女の情事の場になっており、男女が交じ合う音と女性の喘ぎ声が夜の森を彩る、青の聖地と呼ばれていてな‥」


「ストーップ!!そんな嘘はいけません!芽衣ちゃん信じちゃダメだからね。大山氷川神社は無人の神社だけど、そんな噂は一切ありません!」


「おいおい、私の妄想話を否定しないでくれたまえ。ちなみに女が三つ集まると姦という漢字になるが、一文字でみだらと読むらしい。つまりあれだな、今この瞬間はみだらな状況なわけだ。どうだろう。これを聞いたら卑猥な気持ちにならないか?」


 いやドン引きだ。それを言うなら姦という文字は姦しい。という使い方もある。


 その意味はおしゃべりでうるさい。やかましい。という意味らしいが、今の松田さんにぴったりだと思う。


 思うがそれはそこまでで、敢えて口に出すほど仲良くないので、私は愛想笑いで誤魔化した。どうしてこんなデレカシーを捨て去ってポリシーを大切にする変態と仲が良いのかと、私は普段のかなみの交友関係を疑ってしまいたくなる。


「いや、ならないよ。あゆみちゃん。とりあえず情事とか、みだらとか、そう言った方向の話から一旦離れようか?」


「うむ。あまりに過激に話し過ぎると逆に興が削がれるということもあるしな。ではここら辺にしておこう。ちなみになんだが、「交わる」と「付き合う」はどちらの方がより淫靡な響きに聞こえるだろうか?ユミッキーの意見を聞かせてくれるだろうか?」


「え?」


「いや、つまりだな、「交わる」とはその単語一つで男女の情交を表すことも可能だが、「道が交わる。」という使い方や男女の交際関係を表す。という点では淫靡な印象はない。一方で「付き合う」という言葉の意味自体には特段の淫靡な印象はないが、言葉の響かせ次第では「突き合う」という淫靡な響きになり、より男女間の営みを想像させる隠れワード的な要素があると思うのだよ。故に私の頭の中では「私と付き合って!」という言葉は「私と突き合って!」と変換されるが故に青春映画のワンシーンが不純な交友関係を想像してしまい、映画に集中出来ない。という悩みを聞いて欲しかったのだが、これは真面目な話。という認識で構わないか?」



 どうも真面目に不真面目な話がしたくて仕方ないのか、それとも頭の中がそう言った話しか興味がないのか。彼女を止める術が欲しい。


「いや、それはもうダメだよね。はぁ。じゃあさ、今日の部活の話しよ!ハンドボール部の練習内容言っていって!」


「おお!我がハンドボール部に興味を抱いてくれるとは!有頂天外とはこのことだ!まずは軽いランニングだ。心肺機能をいきなり酷使すると体に負担がかかるのでな。次にストレッチだ。2人組で互いの身体を伸ばしてほぐす。そしてパス連だ。2人組と3人組でのパス回しをする。そしてシュート練習だ。その後は試合形式の練習を行って、最後はまたストレッチで終わる。どうだろう。何かに似てるとは思わないか?」


 その質問に全くの興味もないし、答える義理もないのだろうけど、一応これから仲良くなろうとは思ってるわけで、あまりに素気無く対応するのは忍びないと、一瞬でも思った私は愚かであった。


「うーん。なんだろう。勉強とかかな。やっぱり準備して本番に備える感じとか勉強にも通ずるところあるのかなぁ。とは思うけど。どうかな?正解?」


「うむ。非常に惜しいと言わざるを得ない。本番というワードは非常に素晴らしい。よって60点と言えよう。」


「じゃあ何が正解なの?」

 

 そうかなみが聞いてしまったのはとても愚かな行為だった。


「ふふふ。それはね。情交だよ。まずは一人でする人がほとんどだろう?そして初めて二人ですることになり、ストレッチという名の前戯を行う。そしてパス連という名の焦らしプレイ。そしてシュートという挿入。それらを組み合わせた試合という名の本番。そして終わった後にストレッチという名の愛を育む後戯。まさにスポーツの名に相応しい。どうしてオリンピックの公式競技に採用されてないのか不思議なくらいだ。選手村では避妊具が配られるくらいだ、いっそ夜のオリンピックを中継しても良さそうなものなのに。」

 

 おいおい、いつからオリンピックはR18規定が採用されるようになったんだ?そんなスポーツに誰が感動するのか。実況中継付きの情事なんて斬新過ぎるが、全く笑えない。


 いやまてよ、案外サッカーの実況で「入ったー!」とか「行ったー!」と解説者やアナウンサーが興奮して伝えるシーンが思い浮かんだ私は、実況が付くと笑えるのかもしれないと本気で想像してしまった私は愚か者だ。ちなみに一番想像しててツボに入ったのは「ピッチの上がびしゃびしゃですね。」と言うシーンがお気に入りだ。ダメだ、私も同類だったと自覚しては勝手に自己嫌悪に陥った。


「ねぇ、まさかとは思うけど、本気で言ってないよね?」


  かなみが松田さんに少し眉を吊り上げる。


「ふむ。どうだろう。人類最古のスポーツであることは異論ないとおもうがな。」


「ダ、ダメだよ。そんな風にパートナー同士の関係性を茶化したりするのは。もっと愛とか思いやりとか、人間同士の気持ちを通わせる大切なコミュニケーション手段なんだから。」


 怒り慣れていない彼女が頬を膨らませた顔は、漫画のヒロインのようでどうにもほっこりしてしまう私がいた。その反面、その言葉の重さに私は心が少しずつ、でも確かに締め付けられていく感覚に苦しさを覚えた。


 愛や思いやり。私の中でどうしても信頼の欠けたその言葉の虚しさに私は顔を背けた。


「そうだな。まさに結城ちゃんの言う通り。ならば妄想の中で留めておくのが良いということだろう。では話を変えよう。谷崎潤一郎作品におけるマゾヒズムについて議論しようではないか!」


「ねぇ!あゆみちゃん!話聞いてた?」


「聞いていたとも。茶化すのはよくない。故に芸術的観点から真剣に語り合うのは良いのであろう?それに文学作品ならば現代文の勉強にもなる。勉強会の名目にもかないピッタリではないか!」


 それなら教科書に載っており、テストでも扱われる太宰治、芥川龍之介、夏目漱石や森鴎外辺りを語り合う方が余程テストで良い点が取れると思う。などと反駁するのは野暮なのだろう。ある意味その性に対する執着心こそフェティシズムの根源のようにも思える。そう考えると今まで松田さんはフェティシズムに関する文学的表現を語っていたのであり、徹頭徹尾微塵も邪な考えはなかったのかもしれない。そうであるかもしれない。そうでもないかもしれない。そうであったならいいな。いや、そんなわけないか。


 まあ少なくとも松田あゆみという女性は、愉快な人間であることは、隣でどこか幼気で純粋な彼女の困り顔と笑顔が証明してくれている。そんな松田さんの独壇場は1時間も続き、いよいよ呆れ果てたところで、かなみの母親が帰宅して勉強会はお開きとなった。疲れと共にどこか心の重しが消えたような感覚になる。そんな不思議な一日だった。

 

「ピッチの上がびしゃびしゃですね。」はつまりどう言う状況か。皆さんはお分かり頂けたでしょうか?もちろん大雨が降って芝生の上に水溜まりが出来ている状況‥なわけないですよね笑

ピッチとはベッドであり、びしゃびしゃになったのは言わずもがな、あれが、あーなって、あら、むふふ。ということですよ。


それが理解出来るのはあなたは似たもの同士と言う事ですね。是非、フェティシズムについて討論しましょう笑

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