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犯人は誰だ!!

犯人は誰だ!!


「ちょ、ちょ!なんだよ!郵便局じゃないのかよ!」


「ちげーよ。おっさん。まあ外で話すのもなんだから家に入れてくれよ。」


「い、入れるか!バカ!誰だよお前らぁぁぁあ‥ぁ。」


 そんな抵抗虚しくというか、いきなり入って来てすぐにスタンガン突き付けて、抵抗を排除した。


「よし。汚いおっさんの住処だが、まあ好きに上がってくれや。」

 

 という言葉を聞いてこの家に上がりたい気持ちにはなれなかったが、後ろにいた進藤が、「ま、まあ。もしもの時はこの人に襲われそうになって正当防衛で。って言い訳を三人で言えば大丈夫じゃないかなぁ。」と苦しい言い訳を私も乗っかる形で、不法侵入を果たした。


 家自体はやはり綺麗ではあったが、中は個人の清掃具合による。と言うところだろう。上がり框にそのまま靴のまま上がるのに躊躇がないほどゴミが散らかり、フローリングにも埃が丸まり、倒れた家主を引っ張ってリビングまで運ぶと、見事なまでに埃を除去した線が出来た。


「よし。じゃあ進藤。こいつを縛り上げろ。」


 バックから取り出した縄を片手に家主を指差す。


「え、えええ。俺がやるの?」

「じゃあ誰がやるんだよ。こんな汚いおっさんと清廉潔白、不可侵なJKの体が触れるのがどれだけこの世において罪深いことか。穢れの象徴であるこやつを縛り上げるのはいつも使用人の役目だろ?」

「おいおい‥俺はいつから轟の使用人になったんだか。」

 肩を竦める進藤に顎で指示飛ばす様子から、二人の普段の関係性が窺える。


「愚痴はいいから早く縛れ!起きたらまた電気ショック与えないとだろ?本当にやり過ぎたら死んじまうかもしれないだろう?いくらなんでも正当防衛で人殺すのはハードル高いからなー。ってことで、早めに縛ってくれや。」


「んーん。まあ分かったよ。縄を回すのくらいは手伝ってくれよな。」


「あ、それならそこの女が得意らしいから。手伝って貰ってー。私はこいつのPCを漁るところから始めないとね。クックック。」

 

 そう言うと首をコキリと曲げて手首を鳴らすと、リビングの隅、ゲーミングチェアとデスクトップPCが置かれた場所に座る。そして早速何やらハッキングらしき事を始めたらしく、画面には黒画面に白字で英語が羅列されていた。


「ああ。申し訳ないけど、縛るのに必要だから、ちょっと上半身を支えてくれるかな?」


 進藤に言われるがまま私はこの見ず知らずの男性を縛り上げる事に協力した。大分弛み切った肉体を、ボンレスハムのごとくきつく縛り上げると、男は時折小さく呻き声を上げたが、まだ意識は戻らないようだった。

 

「ほうほう。なかなか面白いな。」

「何か見つかったか?」

「見つかるも何もキモヲタとはこう言うやつを言うんだなぁ。としみじみと感じたよ。」


「おいおい。そのキモヲタを縛り上げる我々は何なんだよ‥。」

 

 苦々しい顔を浮かべる進藤はため息を漏らす。


「ほら!見ろ!完全なるペドフィリアの証拠だ!」


 そう言ってパソコンの画面に写し出されたのは、10歳から5歳くらいまでの女児のキャラクターを集めた画像集であった。こう言ったアニメキャラクターを好きになる人がいるのは知っていたが、実物を見たのは初めてだった。


「うあ。なんかそう言う感じかと思ったが。で?この人をそれで社会的に抹殺する。とかそう言う感じか?」


「いいや。甘いな。これは全部フィクションだ。作り物には罪に問えない。現物(なまもの)を必要とするだろうな。」


現物(なまもの)って。なんか物騒な響きだな。」


「まあ、いい。とりあえずはこのパソコンから学校の生徒達にSNSを使って噂をばら撒いていたのは間違いない。が、しかしだ。どう遡っても依頼のメールやらSNSのやり取りが出てこない。これは困ったものだ。」


「つまり真犯人はわからずじまいってこと?」


「そう言うこと。まあ、いいさ。ここに生き証人がいるんだ。このいかにもこのブタ野郎!って言えば喜んで答えてくれそうな感じするし。」


 そう言うと、轟は縛られた男性にキッチンから見つけてきたミネラルウォーターを頭からかけていく。床面が水浸しになるのも気にせずにかけ続けると瞼がピクピクと動き始め、しばらくして息を吹き返した。


「ぶ、ふはぁ!!し、し、ぬ!」


「あーら。おっはよーございます。そして答えによってはさよならー。の挨拶をしなくてはならないのが非常に残念なのだけれど、ま、いいわ。知ってることは全部吐け。いいな?」


 狂気じみたその言動は側から見れば精神構造が異常な人間が人を監禁して暴行するという犯罪現場だが、ここは黙って見過ごす。もしも幇助犯で警察に捕まったら全面否認して、全ての罪はこの女に、と心に決める。


「だ、誰なんだよ。もう。知ってるも知らないも、まずはこの縄を解けよ。」

「あ?生意気言ってんじゃねぇぞ?どっちが上か下か、それもわかんねーのか?おめえの命はこっちが握ってるんだよ?それ理解してる?アンダースタンド?」


 片手にバチバチとスタンガンを鳴らしながら残ったミネラルウォーターを男性にかけていく。おそらく今男性にスタンガンを当てればショック死する可能性は高い。それだけに単なる脅しが恐怖に変わるのは容易いことだった。


「お、おい。まさか本当にやるなんてことしないよな?ま、マジで危ないからやめてくれよ。頼むよ。」


 30代後半の男性が青ざめた顔に惨めに懇願するところなんて気持ち悪くて見たくもなかったが、ノリノリで拷問する轟を見てると、なんだか感覚も麻痺してしまう。


「んじゃまあ、早速質問ターイム!と行こうか。うちの学校の生徒から依頼受けただろ?依頼内容と、依頼主、教えて貰うか?」


「依頼?学生から依頼なんて山ほど受けてるからわからねーよ。せめて学校名とか言ってくれ。」


「ほうほう。じゃあT高校って言ったら分かるか?県内の高校だ。」


「T高校‥いや、待てよ。待てよ。思い出せそうなんだよなー。なんか特殊な依頼だった気がするんだよなー。」


「おい特殊な依頼ってなんだ?」


「いや、だから普通はSNSでやり取りして、電子マネーで支払いをして貰うんだが‥確か‥その時は何故か直接非通知で電話が来て、支払いも現金書留だったから不思議だなぁ。とは思ったんだけど、学生の割には金払いが良いからあんまり気にしてなかったんだよなぁ。でも支払いが終わった後に、証拠は全て削除するように。って手紙で言われて。んでそのまま言われた通りに、SNSで噂広めたアカウントとかは削除して。それで終わった。ってだけだけど?」


「おい。その手紙は持ってるか?」


「え?そんなのどっかにやっちゃったよ。多分ゴミ箱?無ければ捨てたよ。」


「おい。てめぇの命はここで終わりたいのか?ちゃんと思い出せ。」


 轟の語気を強めた威勢に押されて背筋を伸ばした男性は斜め上を見上げては回想をする。


「は、はい。えっと。キッチン近くの督促状の束と一緒に置いた気がします。カードローンで借りまくってたら督促状がやばくて。それと同じところに放置したかと。」


「おい。進藤探してこい。」


「はい。了解。」


 やる気なさげに返事をした進藤はキッチンで物色を始める。するとものの10分でお目当てのものを見つけた。


「あ、あった!!」

「こっち持って来て。」

「はいよ。」


 進藤から手渡されたハガキにはボールペンで「依頼に関する事は破棄すること。なお今後一切の連絡は不要。」とある。

「ん。じゃあ尋問の続きね。」


「んえー。まだ続くのかよー。」

「おい、口答えするとガツっと行くぞ?」

「は、はいぃ。」


 轟の脅しに男性は身を竦める。


「一切の連絡は不要とあるが、こっちから連絡する手段があったのか?」


「ああ、それならゲームのアカウントだよ。チャットで会話出来るんだけど、もうアカウントも消されてて、会話の履歴もないよ。そもそもそんな大した内容はやり取りしてないし。

 依頼通りSNSでの噂の拡散した。って証拠と、現金受け取りました。ってただそれだけ。」


「ちなみになんてゲームだ?」


「アビュワールドってゲームだよ。バトルロワイヤル系のシューティングゲームさ。知らないのか?」


「おい。何上からもの言ってんだ。知らねーな。そんなゲーム。まあいい。とりあえず知りたい情報は手に入れたからな。」

「おお。やっと解放か。」


 安堵の表情を浮かべる男性に両頬を片手で押し潰すように持った轟は例によって脅し文句を並べる。


「てか。今日のことをサツに言ってみろ?お前の犯罪歴が暴露されるからな。」


「な、何を!人を縛り上げて、勝手に家を漁って警察には言うな。ってそっちの方が無理ゲーだろ!」


「ああん?うるさいおっさんだな。んじゃ現行犯で逮捕されるか?ホラ。」


 パシャリ


 あっという間の出来事過ぎて理解が追いつかない。轟が、私のスカートを捲し上げて、その瞬間にスマホを差し出したのは見えた。


「女子高生の下着写真。って下着黒なのか。なんか卑猥だな。まあ、コイツをお前のパソコンに入れておくから、何かあって警察さんが調べた時には撮影罪で逮捕されるから。そこんとこよろしくー。」


 その言葉を聞いて私はようやく事の重大さを知る。


「ちょっと!!私のスカートの中を盗撮してどうするのよ!」

「いや、だからそいつの犯罪の証拠にするんだってば。」

「だったらあなたの下着撮りなさいよ!」

「えー。嫌。こんな穢らわしい汚物の眼前に私の下着が晒されるなんて生きていけない。」

「はぁ?ちょっと!スマホ貸しなさい!」

「嫌だよーだ。んじゃねー。」


 そのまま家主を放り出して身軽な体を生かして逃げる轟を私は捕まえようとするが、するりと腕から抜けて行った。そのまま轟は忍を彷彿とさせるような軽快さで部屋を出て行く。私は逃げられまいと後を追った。


 しかし思った以上に速い。


「え!ちょっと!待って!」


 と取り残された進藤も追いかけてくる。


「ん‥‥いや帰るなら縄解いてぇぇ!!!」



 後ろからおじさんの断末魔が聞こえた気がするが、轟の事で頭がいっぱいだった私は全く歯牙にもかけなかった。

 

おじさん‥


ちなみにこの後隣人に助けられたおじさん‥


緊縛プレイをしていたら、彼女に逃げられた。と弁明したそうです。


悲しいね‥笑

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