血ぃすうたろか 2
アランは抵抗するが、ヤァは全く動じていなかった。
すると今度はローブの裾から同じ蔦が現れ、足元からもアランの腕めがけ、蔦が迫ってきた。
焦るアランの頭の中で、走馬灯のように魔女らの言葉が駆け抜けていく。
『生き血をすすられるぞ、一滴残らず』
このことかと、アランは血の気が引いた。
(これまでか)
アランが思ったその時だ。
ヤァは足元から迫りくる蔦をむんずと掴んだ。
そして魔植物に言った。
「ヤ」
大人が子供に言い聞かせるような声音であった。するとどうだろう、なんと、蔦は大人しくローブの中に消えではないか。
「助けてくれたのか……ありがとう」
胸をなでおろすアランに、ヤァは言った。
「ヤ」
何か言いたいことがあるらしいとアランは受け取った。
呼びかけに首を向けたアランへ、ヤァはローブの右袖をそっとたくし上げて見せた。
現れたものを見て、アランは目を疑った。なんということだろう、魔植物の蔦が絡まり合って手を形成し、蠢いているではないか。
異様な光景に言葉を失っているアランへ、今度はローブの裾を少しまくって見せた。
それは本当に、痛ましいとしか言いようのない光景だった。手と同じように、右足も魔植物で形成されていたのだ。
「……」
アランはとうとう固まってしまった。
編地を持って呆然としているアランを尻目に、ヤァは魔女の両手を膝に置いてやり、華奢な体を毛布で包むのだった。