↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

屋根裏部屋のプロポーズ

作者: ぺしみつ
掲載日:2022/12/24

 コン、ココンと。癖のあるノックの音が響く。


「お嬢様、俺です」

「お入りなさい」

 ドアが開き、ふわりと部屋の空気が流れる。


「私の前に来て」

「はい」

「膝をついて」

「は、はい」


 声がする方に向かって手を伸ばす。

 硬い皮膚の感触。これは顎。頬と耳を辿って髪を触ると、ぴょんと跳ねていた。


「また髪が乱れているわ。ちゃんと鏡で確認しなさいといつも言っているでしょう」

「はあい、お嬢様」


 それから彼の胸元を触る。タイはちゃんとまっすぐだ。

 彼からは夏の夜の匂い、それと炙ったお肉や焦がした砂糖の香りが漂ってくる。


「今日は夏祭りの日だったわね」

「はい! だから俺、お嬢様を誘いにきました」

「……私は行かないわよ。つまらないし、迷惑になるもの。君は行ってきなさいな。帰ったら、どんな風だったか聞かせてちょうだい」

「俺、お嬢様が困らないようちゃんとエスコートします。外は涼しくて気持ちいいですし、屋台で売ってる串焼きも飴がけもきっと美味しいですよ」

「ごめんなさいね」


 私がそう答えると、彼は「そうですか……」としぼんだ声を発した。

 表情はわからないけれど、雨に濡れた犬みたいな顔をしていそう。


「じゃあお嬢様、屋根裏部屋に行きませんか?」

「屋根裏? まあ、それならいいけれど」


 屋根裏は危ないから入ったことがない。

 彼の手を借りて階段を登り、屋根裏部屋へと足を踏み入れる。


「お嬢様、そこから2歩前へ。手を伸ばしてください」

「これは木箱ね」

「はい。そこに座ってください」

「よいしょ。……ここは案外涼しいのね。窓が開いているのかしら」

「そうです」


「ねえお嬢様、いま俺たちの斜め上に窓があるんです。指をさしてみてください」

「なあに、何の遊び?」

 私は言われるがまま、斜め上を指さした。


「お嬢様が指をさしている先に、星があります。王冠座です」

「まあ」

 この国では夏祭りの日に王冠座へ愛を誓うと、神が祝福してくれるという言い伝えがある。


 ふと彼が何も話さないでいることに気づいた。

 いつもは止めるまで喋り続けるのに、どうしたのかしら。

 不思議に思っていると、彼は意を決したような声色で話し始める。


「お嬢様。俺はお嬢様が好きです。今はまだ未熟ですが必ずお嬢様にふさわしい人物になります。だからお嬢様、どうか俺と結婚してください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。