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#4 part3

「試合は現在3-1でブルーバーズが優勢。4回の表を迎えております。いやー僅差ですねぇ、中々に競ったいい試合じゃないんでしょうか。あとは先発の海原(うなばら)がどう踏ん張るかですね。裏とはいえローテーションの頭を任されている投手なんでしっかりリードを守り切ってほしいですね。前回みたいに爆発炎上しないといいですけど。幸いウチはリリーフが盤石ですから、6回まで繋げられれば勝てますよ。そこはもう任せてください。というわけで続き、やっていきましょう。それではKK、次のハガキを頼む」


 黒鵜座が箱をポンポンと叩いてハンドシグナルでハガキを取るようにKKに促す。流石に二回目なものだから、その意図はすぐにKKに伝わったらしい。ウンウンと首を何度も縦に振って箱を持ったかと思えば、両手で強く叩いた。バシン、という音がブルペンに響く。突然の事に黒鵜座も一瞬固まってしまうも、すぐに意識を取り戻した。


「って違う違うKK! え、何で!? 何で箱叩いたわけ!? さっきは伝わったじゃん!」


「アハン?」


「いやまぁ叩きはしたけどさ……あくまでも軽くだよ!? っていうか違うし、この中から引けって事だから!」


「Pardon?」


「あっ、ダメだ伝わってないなこれは。お願いしますホークさん」


「~~~」


「OK」


 ホークの通訳を通してようやく意味が伝わったらしい。大人しくホークさんに頼っておけばよかったと黒鵜座は後悔した。一枚の紙を取り出すと、ホークに渡した。ホークがそれを読み始める。


「Pen name『言語を覚えたカエル』サンから。『黒鵜座サン、カイルサン、コンバンハ。僕は来日以来カイルさんのファンで、ユニフォームを持っています』。~~~」


「~~~」


「それはとてもハッピーだね! と言っていマスね。『お二人に質問したいのですが、初めて会った時の第一印象を教えてください!』ということデスネ!」


「ありがとうございますホークさん、ハガキの内容まで読んでもらっちゃって。そうですね……僕から見たKKの第一印象というか、抱いた感想なんですけど『いよいよギャング連れてきちゃったよこの球団』と思いましたね。ただでさえでかい上にピアスとか入れ墨してるし、もう見た目がマフィアとかギャングとかのそれだったんですよね」


「~~~」


「~~~」


「それは心外ダって言ってるよ!」


「そこ訳さなくてもいいのに……大丈夫、今はそんな事思ってないから。で、話を戻しましょうか。ウチの外国スカウトの方がいるんですけど、その人もその人で顔がいかついというか怖いんですよ。以前監督をやっていた人なのでもしかしたらファンの皆さんも見覚え自体はあるかもしれないですね。本当にジャパニーズヤクザの組長と言われても信じるレベルの見た目なんです。まぁあの人見た目に反して結構気さくだし自分の見た目をある程度自覚している人なんで、こういういじり方しても怒られないから言わせてもらっているわけですけども。……え? 相手の様子見ていじるかどうか決めるなんてダサいって? 仕方ないでしょ、あの人の場合下手に怒らせたら何も言わずにドスを渡してきそうだし。うん、あれに関しては無理ですよ。それでもビビりというならお前やってみろやオオン!? ゴホン、大変お見苦しい所をお見せしてすみませんでした。まぁ長々と話してしまったわけですが、第一印象としては『日本と海外のマフィア同士が条約を締結したのかと思った』っていう感じですね」


 割と酷い言い様だけど、これを本当に思ったのだから仕方がない。スカウトの人がボスで、KKがその側近。結構これが絵になる、まぁ任侠映画だったらの話だけど。


「でも話してみるとKKは本当に良い人ですよ。皆さんこれを機にKKの良さを知ってください。彼は真面目だし家族思いでもある。そして何より勉強熱心なんですね。まぁ熱心すぎてたまに変な事を覚えたりもしますが、そこも長所と言えば長所ですね。助っ人外国人の鑑だと思います、ってホークさん伝えてもらえます?」


「I see! ~~~」


「~~~」


 何かホークとKKが会話したかと思うと、唐突にKKは笑顔で黒鵜座の頭を撫で始めた。元々黒鵜座は平均男性の中ではそこそこ高い身長ではあるが、プロ野球選手としてはそこまで高くはない。それとひきかえKKはかなりでかく、黒鵜座の頭がKKの肩にあるくらいだ。わしゃわしゃと頭を撫でる黒鵜座は当惑するほかない。


「ちょっ、えっ!? なんで頭撫でんのKK!? ホークさんマジで何て言ったんすか! というかそれよりも今何言ってるか通訳してもらえます!?」


「素直じゃないけド、たまにそう言う所がまた小動物みたいでいいよねって言ってるよ!」


「いや僕そんなにチビじゃないですから! そもそも年そんなに変わらないでしょ! っていうか分かった、分かったから撫でるのをやめろぉ!」


 黒鵜座がKKの手を掴んで、引きはがす。頭を撫でられるなんて小学生以来だよ本当に。


「~~~?」


「気に入らなかったカ? って」


「……別に、そういうわけじゃあ無いですけど。ただ髪の毛のセットはちょっとこだわってるんで。あーあ、自慢の黒髪ショートがちょっと乱れちゃいました。あの角度と長さを気に入ってたのに。それよりもKKからの第一印象ってどうなのよ?」


「~~~」


「~~~」


 KKが身振り手振りを交えながら何かを説明している。あ、今ちょっと背が低いってジェスチャーしたな。だからKKがちょっと背が高いだけで僕は普通だっての、と黒鵜座はこぼした。


「最初はこんな線の細い人が本当に野球選手なのか疑った! 背も低いし体格には恵まれてなかったからネ!」


「肉付きが良くなくて悪かったですね。そういう体質なんですよ昔っから。頑張って食べてはみるけど中々体重は増えないし、そのせいか以前は被弾する事も多かったのが悩みでしたもん」


「でも年が経つ程ハジメの凄さが分かるようになっていったよ! あんな独特な直球、メジャーでも見た事無いね! それに結構ハジメはチームメイトを大事にする人間だし、黙って結果を残す仕事人みたいな存在!」


「Like a……like a……dried squid」


「ウーン、それはまるで、例えるなら……スルメみたいな人間デスネ!」


「スルメか……スルメかぁ。え、褒め言葉だよね? しつこいとかそういう意味じゃなくて、噛めば噛むほど味が出る的な。肯定的に受け取っていいんだよね? ……ハッ、もしかしてこれは暗示!? このままだとお前、干されるぞというメッセージなのか!? でも人をいじるのはやめませーん、何たって楽しいですからね!」


「では、CMのお時間デス!」


「そこホークさんが言うんだ!?」

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