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#4 part2

「いきなり先制しましたね、我らがブルーバーズ。このままリードを広げて勝利の方程式が起用される事無く試合を終えてほしい所ですね」


「~~~」


「~~~」


「ワタシは登板しても構わないヨ! だそうですよ黒鵜座サン!」


「うっわー流石タフネス右腕、言う事と信頼感が違う。これ聞くと多分仲次コーチも金子監督も喜びますよ」


「何たってワタシのお給料に関わるからネ!」


「あ、そういう……結構そこら辺ドライなんですね」


 放送が再開した頃には、ブルーバーズが4番・ドゥリトルのタイムリーで先制に成功していた。とはいえまだ一点差、こういう緊張感のある試合で登板するのが一番プレッシャーになる。だから黒鵜座としてはあまり登板したくはないのだが……、KKはビジネスとして割り切っている分投げたがりだ。成果主義の傾向が特に強いプロスポーツ選手にとっては当たり前の事だが、チャンスは多ければ多い程よい。その結果悪い方向に転がる事もあるが、それはある程度仕方のないことだとも言える。


「えーそこはまぁ置いときまして。では引き続きハガキの紹介に戻っていきますかね。ペンネーム『そよ風の使者』さんから。『黒鵜座選手、カイル選手、どうもこんばんは』、あそっか今もう夕方だね考えてみれば。『お二人の活躍をいつもテレビから見ております、二人ともとてもカッコよくて子供たちも憧れています』、うんうん、ありがたいことですね。『お二人にお聞きします。カイル選手は日本に来て驚いたこと、黒鵜座選手はこれまでのプロ野球人生でびっくりしたことを二つずつ教えてください』との事です。というわけでホークさん、通訳」


「~~~」


「Yeah,yes,yes.~~~」


「~~~?」


「~~~」


「OK,OK」


 中々にこの状況はシュールだな、と黒鵜座は思う。とはいえ、間に挟まるようなことは出来ないけれども。改めて通訳とは大変なんだなと痛感させられる、これで代理人の仕事もやっているんだからすごいものだ。何でこの人通訳やってるんだろう……?


「アー、まず一つ目はタトゥーをしていると温泉に入れないことですネ。モチロンそうではない所もありますが、一番入りたかったところがダメだったのでショックでしタ」


「文化の違いですね。外国から来た方で驚く人は多いんじゃないでしょうか。確かにNGな所も結構ありますからね。タトゥーをしている皆さんは温泉に行く前に先に調べておきましょう」


「次に二つ目。ジャパニーズベースボールとメジャーリーグの違いね。メジャーの野手はセーフティバントくらいしかしないけど、二ホンはバント多い。それに足でかき乱してくることも多いから、最初はとても困惑したネ。クイック覚えたのも二ホンに来てからだし」


「小技をからめて得点を取るのは日本流ですよね。メジャーリーグはとにかく振ってヒットやホームランを打つビッグベースボールが主流ですから。海外から来る選手は新鮮でしょう」


「だけど、二ホンの人優しい。ワタシがここに来るときもいっぱいサポートくれた。おかげで家族みんなで二ホンに来れたヨ」


「あー、そういえばウチの球団は外国人に対して色々尽くしてくれますからね。家の手配から始まり家族の生活のサポートまで。だから結構ウチの球団は助っ人選手に感謝されるんですよ。前いた選手なんて別れるときに泣きながら『ここでの思い出は僕にとっての宝だ』とまで言ってたらしいですから。異国に慣れるためのサポートはやはり必須ですね」


「ウンウン」


 あ、そこで頷くのはホークさんなんだ。まぁ日本語分かるのはホークさんだし仕方ないか。


「それで僕の場合ですよね。一つ目は……分かってはいたつもりなんですけど、皆さんやっぱ球が速いんですよね。メジャーでも驚いたんじゃないですか?」


「~~~」


「~~~」


「そうですネ、向こうでは150km/hは普通だから。160km/hを投げるピッチャーを見た時は驚いたね。球が速い投手と言えばブルーバーズにもエンヤや北がいるけれど、最初は生き残れないかもと思わされたヨ」


「メジャーリーグの基準で考えるともっと顕著ですね。球速ってぱっと見で一番分かりやすい数字ですから、やっぱりすごく目立つんですよ。一応コントロールの良さとかを表す指標もあるにはあるんですけど、そういうのは数試合消化してからじゃないと分からないという欠点があるから球速のシンプルさには勝てないですね。話を戻しましょう、やっぱり球が速いというのは強いですよね。僕はプロになって球がそこそこ速くなった感じなんで初キャンプの時はすごい驚かされました。僕なんかすぐにクビになるんじゃないかと思いましたもん」


「~~~」


「~~~」


「それで、次の話は? って言ってますネ」


「そんなに気になる? いや~どうしよっかな~」


「ハジメ、イジワル!」


「分かった、分かったよ。ていうかそこは伝わるんだ。えーあれは二年前、つまりKKが加入した年だね。その6月……いや7月だったかも。そこのどっかの試合で代打に出されたことですかね」


 思い起こすのは、あの日の記憶。愛知ドームでの試合、延長戦で迎えた11回の裏、それも満塁のチャンスで黒鵜座は確かに()()として試合に出場した。


「~~~」


「~~~」


「そんな事もあたネ! びっくりしたのを覚えてるよ!」


「いやあの瞬間一番驚いたの僕ですからね。代打としてコールされる前に金子監督に『お前、バッティングに自信はあるか』とか言われたんですから。まさか野手を全員使い果たしたとは思わないじゃないですか。しかもその前最後の野手を代走に出してるし。投手のところに回るまで勝負を着けるつもりだったんでしょうけど、その目論見もものの見事に粉砕されてるし。マジでこの球団ブラックだなって思いました。あ、ジョークですよ? 軽いジョークですけど」


「~~~」


「~~~」


「ハジメ、そのジョーク中々にキレッキレね! とはいえあの打席の裏でそんな事があったとは思わなかったよ! それでも打つのがすごいよハジメ!」


「へへっ、よせやい。まぁ『とにかくバットに当てさえしてくれればいい』って監督に言われて。その通りに従ってそれだけ意識して見たら案外芯に当たりましてね。外野が前進守備だったのもあって打球はセンターの頭の上ですよ上。いやー当たった時の感触は気持ちよかったですね。あの時の相手ピッチャーの顔! ふふっ、多分あれは一生忘れないですね。ヒーローインタビューも投手の時より目立ってたし、なんやかんや打てて良かったと思います。それでは一旦コマーシャルです」

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