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第11話「はみだし勇者 ざまぁ系」

『どうしてこうなった⋯⋯」


まだ第二階層だというのに、俺のパーティーは危機的状況だ。


「おいッ!しっかりしろガルマッ!」


「いてぇ⋯⋯」


モンスターとの戦いじゃケガひとつしなかった男が弱小アンテッドのリッチーの

攻撃を受けてこんなにひどいダメージを⋯⋯ 失った右腕の傷口からどんどん

身体が紫色に変色していく。クソッ毒まで与えられたか。


「く、苦しい⋯⋯ケレン、お前の魔法でなんとかしてくれ」


「ムリよ。ここで魔力を回復になんて回したらリッチーの攻撃を凌げない」


「おいッ!仲間だろなんとかしてやれないのか」


「そもそもこの男が序盤から体力全開で突っ走るからいけないんでしょ。

それにリリ、あんたも加減しなさい!」


『ファイヤーアローッ!』


「そうやって考えなしで魔力を使うからもう回復薬がないのよ」


「なんなのおばさん!うるさいんだけど。せっかくシオンがいなくなったんだからもっとリリの自由に戦わせてよ。

それにリッチーはもう片付いたし」


「でかしたぞ。リリ」


「そもそもケガしたのだってガルマがたるんでいるからいけないんでしょ!

王様からもらった褒美で夜のお店に入り浸ってきれいな女の人を取っ替え引っ替え遊んでたもんねぇ」


「リリ⋯⋯それをいうな⋯⋯」


「言い争っているときではないぞ」


「ふーんだ。リリは先行くから」


「おい待てリリッ!」


「あらら拗ねちゃった。お子ちゃまねぇ。付き合っていた男が遊んでたくらいで。

そこは余裕を見せてあげるのが大人の女。わからないか。さてと」


「おいどこへ行くケレン」


「帰るのよ」


「帰るだとッ⁉︎」


「だってこんなところであんたたちの道連れになって死にたくないもの」


「ガルマを見捨てるつもりか」


「もう死んでるわよ。その男」


「⁉︎ ガルマ!ガルマ!」


***


魔術師ケレン視点


「まったく夜から貴族の殿方たちとダンスパーティーがあるというのに下着が汚れちゃったわ」


勇者にも迷惑ね。急にダンジョン攻略なんて私たちを呼び出して。

他の2人はどうだったか知らないけど私はもう引退、ドラゴン倒した天才魔術師として気楽に過ごして暮らすんだから。


「⁉︎」


もの音?


振り返っても誰もいない⋯⋯


「気のせいか……それにしても勇者ハルティスのパーティー弱くなったわね。

? もしかしてシオン・ベイルが抜けたせい⋯⋯まさかね」


きっとブランクのせいよ。


グサッ


「? な、なに⋯⋯なんだか腰のあたりが生暖かいんだけど」


腰に触れた手のひらを見やると真っ赤なーー


「血ィ⁉︎」


「キッキキ⋯⋯」


「コ、コボルト⁉︎ いつのまに⋯⋯⁉︎」


気づいたら暗闇に光る物体に囲まれている。


こいつら全員コボルト⋯⋯


『グオオオ』


しまった! 飛び出してきたコボルトの大群が一斉に群がってくる。


「きゃああ!やめてやめてわたしを食べないで痛い!」


はやく、はやくなんとかしないと。そうよ回復魔法。回復魔法を使って回復しないと。


「ぎゃあああッ」


ダメ、数が多くて回復が追いつかない。


このままじゃ、このままじゃーー


「かいふくッ! ⁉︎ ⋯⋯ウソでしょ。魔力がきれた⋯⋯いやあああッ!」


***


「今のはケレンの悲鳴⁉︎ まさか後方にも敵が⋯⋯」


マズい。一旦引き返して立て直すこともでくなった。


こうなったらなんとしてもダンジョンを攻略してみせろということか⋯⋯


『きゃあああッ!』


リリの悲鳴⁉︎


「リリ、どうした! ⁉︎」


な、なんだこのスケルトンソルジャーの数は?


リリがすでに息を上げている。限界だ。


「クソックソッ! お前たちみたいなザコモンスター、いつものリリの攻撃だったら簡単に倒せるのにッ!」


リリが俺に気づいて俺を見やる。


「よかったハルティス!魔力回復の薬ちょうだい。そしたらこんなザコたち一層できるから」


「す、すまない⋯⋯さっきので全部だ」


「え?」


「荷物持ちがいないんだ。必要最低限しか持ってきていない!」


そんな顔をするなリリ。


「シオン⋯⋯いまさら戻ってきてって言っても遅いかな。

ごめんなさい。知らなかったリリたちがこんなに脆いなんて⋯⋯」


「リリッ!」


スケルトンソルジャーたちが遠い目をしたリリに覆いかぶさる。


瞬く間にリリの姿は見えなくなった。


***


ようやく辿り着いた最下層⋯⋯


すでに俺は限界だ。


壁を手がかりにしないと歩けない⋯⋯


「ウソだ⋯⋯」


こんな状況ありえない。


それにリリは最後になんて言っていた?


シオンに戻ってきてほしいだと?


ありえない。死の間際に血迷ったか。


荷物持ちぐらいしか役に立つことのないシオンだぞ。


俺の機嫌が悪いときに殴ってスカッとしたいときのために置いてやったシオンだぞ。


だけどもし⋯⋯シオンの探知能力があったらトラップに気づいてガルマはケガすることはなかった。


シオンがいたらリリの魔力の減りを抑えさせて、少なくともリッチーとの戦いですべて尽きるなんてことはなかった⋯⋯


認めたくない⋯⋯


俺のパーティーはシオン・ベイルがいなかったら弱小パーティーだということを。


「⁉︎」


「ガルルル」


暗がりからドラゴンの顔がーー


「⋯⋯」


気づかなかった⋯⋯いつのまにここまで接近されたんだ。


アンデット化したドラゴン⋯⋯このダンジョンの主か。


俺は鞘から剣を引き抜いて構える。


強いモンスターと対峙するこの感覚久しぶりだ。


「俺は勇者ハルティスーー覚悟しろドラゴン!」


俺が俺の力だけでダンジョンを攻略できるということを証明してやる。


「グルルル」


「⁉︎」


なぜかドラゴンはそっぽを向いて巣穴まで引き返していく。


「ちょっと待て!どういうことだ⁉︎ それは俺が相手にならないっれことか?

待ってくれ!待ってくれ!」


キルリスもドラゴンも俺に愛想を尽かさないでくれ!


「うッ!」


く、口からクモ?


「ぐはっ!」


吐血? なぜ⋯⋯どうしてだ⋯⋯


「まさかッ!ぐはああああ」


血に混じって大量のクモが口からーー


俺の身体はすでにこいつらに食われて⋯⋯


そうか。あのドラゴンはそれがわかっていたからーー


「奴にとってはもはや戦うまでもなかった⋯⋯」


ダメだ。涙が溢れる。


悔しくて悔しくてしょうがないがこれほどまでにシオンにいてほしいと思ったことはない。


認めたくないという思いを認めるという思いがうわまわる。


憎たらしい⋯⋯


シオン・ベイル⋯⋯頼む戻ってきてくれ⋯⋯



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