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とにかく厳しい幼馴染の話  作者: タン塩
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第一話

俺は何かとつけて「普通」を好む。

「普通」なこと以上に楽なものはない。と言ってもその考えに至ったのはごく最近のことだ。


俺の通う私立東南高校は小高い丘の上にあり、午後には近くの海からの潮風が吹き付ける。

「今日もいい日だ…空が青い。」


金曜日、4限目の体育、そのあとの昼食、そしてこの5限目の古典…今日の日程はどう考えても


「さあ、今から寝てください!」

と言われているようなものだろう。


それじゃあお言葉に甘えて。心地いい風に催促され、

すでに撃沈しているクラスメイト数人を横目に目を閉じた。


何度でも言おう、「今日もいい日だ…」


「ちょっと!起きなさい!」

これがなければ。


目を閉じたのもつかの間、耳に、誰かのささやき声が当たる。反射で肩が大きく揺れた。

驚きはしたものの声の主はだいたい見当がつく。


そもそも俺を注意するやつは限られている。

一人目は古典教師、もう一人はとなりの席のあいつだ。


まあ、この透き通った女性の声は隣の席のやつ以外ありえないだろう。

そんなことを考えていると、今度は耳に尖ったものが侵入してくる感覚がした。


「ひえあっ、、、」

衝撃のあまり素っ頓狂な声が出てしまう。


「な、何すんだよ!」

俺は右耳を押さえて思わず右隣に座る樋口綾乃を睨みつけた。


すでに正面に向き直り真面目に板書を映していた彼女はおもむろに「不快」という顔をしたのち、こう言い放った。


「あなたが声をかけても起きないから、耳に何か詰まっているのかと思ってシャーペンでグリグリしただだけよ。まったく、隣にいるからには、私の気が散らないように真面目に授業に取り組んでほしいものだわ!」


なるほど、少々強引だったが耳かきってことか…ってそうじゃない!


お前の真ん前で机につっぷしてるやつにはノータッチなのに?!なんて理不尽な。


そう言いたいのをこらえて俺は黙って教科書を取り出す。

机には何も乗っていない、

それにあんな大声を出したんだ、寝てたやつを含めこのクラスにいる全員が俺を見ていた。


顔がほてるのを感じる。


教科書を出し終えると先生の咳払いと同時に授業が再開された。


それにしても厄介な奴が隣になったものだ。

樋口綾乃は小さい頃からの仲で、よく二人で遊んだりしたものだ。それに小学校では奇跡的にすべて同じクラス。一学年五組あったのに。


その後樋口は都会の中高一貫校に進学した。そのまま都会の高校に進むのかと思いきや、今、何故か俺の隣の席で同じ授業を受けている。


ともかく、なんとも運命的で感動的なこの展開には少しだけ理由がある。



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