私の瞳に大切な人がいますー鷺草の海6
言った舞は、目がみえたらと泣き出した。
「気を悪くしないでください、僕が愛しているのは舞さんだけだから、そうだ、まず、傷の手当をしようね」
幸樹は、舞を抱き上げると、松の木の下へ連れてき、治療を始めた。
「でも、驚いたね、こんな痛い思いをしてまで、来るとは想像もしていなかったよ。なぜ、そうまでして来たの」
幸樹が心配げに尋ねた。
「貴女のことが心配で堪らなかったの」
目に涙を一杯ためて言った。
「そう、そんなに僕のことが心配だったのか」
舞が頷き
「お弁当を持ってきたわ」
言って、幸樹に渡した。
「あれ。これは、僕が大好きなサンドイッチだね。ありがとう」
すると、舞が泣き出した。
「なぜ、泣くの?」
幸樹が心配げに尋ねた。
「貴方の大好きな卵焼き出来なかったの」
舞が悲しげに言った。
「火が使えないんだから仕方ないよ。卵焼きなどどうでもいい。僕は、舞さんが作った食事なら、何でも美味しいよ」
「嬉しいわ」
「でも、よく、一人で来られたね」
「一度きたら、目が見えなくても来られるわ」
舞の言葉を聞いた瞬間、幸樹の顔が驚きに変わった。
「その言葉、何時も、夢の中で聞いている!」
幸樹は、舞の顔を凝視した後、昂る心を抑えながら言った。
「君はもしかしたら」
意味が分からない舞は、幸樹の次の言葉を待っていた。
「君は、鷺草の少女だね」
隠し事がばれたのだと知り、舞の目から涙が溢れでた。
「嘘をついてごめんなさい」
舞は、どんな罰でも受ける覚悟をした。
「立ち上がって、君の顔を良く見せてください」
幸樹は舞を立たせると、ハンカチで舞の涙を優しく拭いた。