表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/77

私の瞳に大切な人がいますー鷺草の海

「舞さんを死ぬほど愛している、と言わなかったらよかった!」

 幸樹は、我が家に着くなり、血を吐くように叫んだ。

「自分の心を満たすために、僕は舞さんを悲しみの渦に巻き込んでしまった」

 幸樹は頭を抱えて床に倒れこんだ。

 舞の愛を得、その幸せに酔っていた幸樹だが、舞を家に送りとどけた帰り道、舞を愛するあまりとはいえ、自分が死んだ時の舞の嘆きを気付かなかった愚かさに気付き、自分を責めているのだ。

「舞さんは、僕の愛を知らなかったら、僕が死んでも、それほど辛い思いをしないだろう。だが、今の舞さんなら、悲しみに耐えられず、僕の後を追うかもしれないのだ。しかし、もう遅い」

 幸樹に出来る唯一の手段は、鷺草の少女の自殺を防ぐしかない。

 しかし、あの少女が哀しげな顔をし、一緒に死んでと言われたら、絶対に断れないことは分かっていた。

 自分勝手な思い込みから、舞を死なすかもしれないと思うと、幸樹は居ても立ってもいられなかった。

 しかし、時は待ってくれず、約束の日の前日が来た。

和泉舞への愛は幸樹の命より大切である。

同時に鷺草の少女への愛と約束も幸樹の命より大切なのだ。

和泉舞を取るか、鷺草の少女を取るか、幸樹には決められない。

(定めに従うしかない)

 幸樹は、運命を天に任せ、鷺草の海へ行くしかない。

 午後の診察を終えた幸樹は、和歌子が入院している病院へ行った。

 病室へ入ると、和歌子は眠っていた。

「和歌子さん」

 和歌子が驚いて目を覚ました。

「幸樹さん」

 和歌子はこの病院では、紛らわしいので、幸樹を先生と呼ばないようにしていた。

「どうですか、病状は?」

「日々、快方に向っています。それより、幸樹さんの手助けできないのが辛いわ」

「そんなこと心配しなくてもいいから、早く良くなってくださいよ」

 幸樹が和歌子の手を優しく握る。

「幸樹さんに優しくされて嬉しい」

 和歌子の目から涙が出る。

「和歌子さんは、僕にとって、母親同然です。いつまでも元気でいてくださいよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ランキング参加しました。ポチとクリックお願いします。 いつもランキング応援ありがとうございます。 人気ブログランキングへ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ