70/77
私の瞳に大切な人がいますー時を遡る6
「分かってくれて、心の重しがとれました」
舞は、自分が鷺草の海で助けられた者だと、告白したかったが、幸樹の愛を失うような気がして言えなかった。
「貴女の愛する人は、鷺草の少女?それとも私?」
「どちらも同じくらい愛しているけれど、少女への愛は子供への愛、舞さんへの愛は、恋する女性への愛です」
「嬉しい、でも」
「じゃあ、少女を愛してはいけませんか」
「貴方のお心のままに」
「何だか、投げやりのように聞こえるんですが」
舞はつまらない事を言ったと後悔した。
「貴女が誰を愛していても、私は平気よ。だって、貴方が好きなんですもの」
「僕だって同じだよ。例え、舞さんに大切な人が居てもね」
「あら、覚えていたの?」
舞は心の底から楽しそうに笑った。
「愛する人が言った言葉だから、忘れる筈がないよ」
「でも、貴方の心を傷つけるような人ではありませんわ」
その時、電車が入って来た。電車に乗った幸樹と舞は再会の駅を後にした。