私の瞳に大切な人がいますー時を遡る3
「その少女は本当に死んだんですか?」
舞は驚いて尋ねた。
「と思っている、なぜなら、少女は死んで両親の所へ行きいと言っていたからね」
私を勝手に殺さないでと思いながら尋ねた。
「顔を見たんですか?」
「極秘扱いなので顔は見えなかったが、十一、二歳の少女と報道していたからね」
「それだけで、その少女と信じたんですか?」
「確信は無かったけど、あんなに両親を慕っていたのだ、僕は、あの少女に違いないと思い、六月十日と二十一日には、この磯から、少女と少女の両親に詫びをし、冥福を祈っているんだ」
舞は、幸樹が自分や、自分の両親のことを思っていたかを知り、涙が止まらなかった。
しかし、今更、私がその少女ですとは言えないため、隠し続けようと思った。
「今日は、少女とその両親の冥福を祈りにきたんだ。もし、差し支えがなかったら、一緒に冥福を祈ってくれませんか」
「はい」
複雑な心境の舞は、ただ、はいとしか言えなかった。
幸樹は、持っていた二つの花束の一つを舞に持たせ、磯の上に立たせた。
舞と幸樹は、同時に花束を投げた。
(お父さん、お母さん、やっと、命日にこれました。これも、お父さんやお母さんの有り難い導きと思っています、どうか、安らかにお眠りください)
生きる苦労を知った舞は、両親の苦労が分かり哀れでならなかった。
「舞さん、ありがとう、きっと、少女と両親は喜んでいるでしょう」
「ええ、来て良かったわ。ところで、十一日後も来るんですか?」
「命を賭けた約束だよ。だから、その日まで、僕は病気や事故に遇えない、まして、死ぬ事は絶対に許されないのだ。舞さんの瞳の中に居る大切な人のようにね。すまない、余計なことを言ったりして」
舞は返答に困っていた。
「じゃあ、食事をしょうね」
幸樹は舞を松の木の下へ導くと、青草をテーブル代わりに、梅見の時と同じサンドイッチを並べた。
「これが、舞さんとの最後の食事となるかも知れません。さあ、召し上がってください」
普通なら悲しい会話だが、舞には嬉しくて涙が止まらない。
食事を終えた二人は帰途についた。
舞を家に送りとどけた幸樹は、舞を家に入れ、ドアを外から閉じると言った。
「僕は、舞さんが死ぬほど好きです」