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喜びの後9


(私はお兄さん、いえ、先生を幸せにできない女、去るしかないのね)

 だが、去るに際し、鷺草の海で助けた少女が、今の舞だと知られていないかという心配があった。

 幸樹の脳裏には、少女の悲しい顔や姿が強烈にのこっていたために、美しく成長した大人の舞が同一人物には見えていなかったのだ。

 舞は、幸樹と別れる理由に、他の仕事がしたいと言おうとした。

 だが、それを今日、言うべきではない。

 今日は大好きなお兄さんと楽しい最後の別れをしたいと思った舞は、涙を拭き、精一杯、幸樹に甘えた。

「舞さんダンスを踊ろう」

 幸樹が舞の手を取った。

「私、下手だから恥ずかしいわ」

「下手だからこそ、ひた向きに踊る、その姿には純心の美があるのです。さあ、恥ずかしがらずに踊りましょう」

 幸樹は、優しく舞の手を取り、立たせ、芝生の上に誘い、ゆっくりと踊り始めた。

 青い芝生が見えない舞は、幸樹と一緒に見た鷺草の浜辺やみさき公園駅のプラットフォームを目蓋に思い浮かべて踊った。

 踊りながら舞が言った。

「先生、私、とても幸せよ」



「先生」

「何だい」

「私の仕事、先生には重要で役立ってますか?」

「当然だろう、僕に取って、大事な仕事ですよ。無論、舞さんもね」

「じゃあ、私がこの仕事を何時までもしたいと言ったら許してくださるの」

「一生居てもいいよ。いや、居てくださいと僕がお願いしたいくらいだよ」

「嬉しい」

「そんなに嬉しい?」

「ええ、天にも昇るほどにね」

「そんなに喜んで頂いて、僕も嬉しいよ」

 話しているうちに舞の家に着いた。

「今日は私の為に梅の花見に連れていってくださって有り難うございました」

「また、さくらの花見に行こうね。でも、舞さんには見えない。それが残念です。僕の友人に優れた眼科医が居ます。治るか治らないか、一度、診察してもらいませんか」

「ぜひ、お願いします」

「じゃあ、診察日が決まったら報せますからね」

 舞を降ろすと、幸樹は自宅へ帰った。


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