喜びの後3
「もし、長く、疲れが取れないないようだったら、一度、診察しましょうか。僕の医院は、外科医院の看板を掲げていますが、内科診療も行っているんですよ」
「緊張による疲れだと思います。だから、帰って眠ると、すぐ治るんですよ」
「それならいいんだ」
「私の体調までも心配して頂いて、嬉しです」
「話は違うが、今日、道を歩いていると、梅の花の芳しい薫りが微かに漂っているんですよ。舞さんは気付きましたか」
「ええ、とても芳しい薫りでしたわ」
「今は、梅の花が満開だからね」
「間もなく散るのね、名残惜しいわ」
「じゃあ、明日の日曜日、梅の花の薫りが一杯の所へ行きませんか」
和歌子の厳しい顔を思い出した舞は、恐ろしくなって、返事をしなかった。
「何を躊躇しているんですか、梅林に入れば、どんな憂いも晴れますよ、行きましょう、もし、返事をしなければ、強制的に連れて行きますよ。それが嫌なら返事してください」
連れて行って下さいと言えない舞は、返事をしなかった。
「分かった、強制的に連れて行くからね」
「梅林は何処ですか」
あまり遠い所へいくと、和歌子に知られる恐れがあるので尋ねた。
「大阪城公園の梅林」
「人も多いでしょうね、邪魔にならないかしら」
「もし、人の少ない方がいいのなら他にもありますよ」
「他に?」
「南部の梅林です」
「みなべ?」
「そう、和歌山県にあるんですよ。広大な梅林がね」
舞は、鷺草の海を思い出し、涙がでそうになったが堪えた。
「遠いの?」
分かっているが尋ねた。
「車で約二時間半程度かな」
二時間半は、鷺草の海から海田阪急駅迄の時間より多い。
「二時間半も?」
呟いた舞の目に和歌子の顔が現れた。
「大阪城にします」
「決まった、じゃあ、明日、迎えに行きますからね、待っていてください」
言うと、嬉しげに出て行った。
翌日、幸樹は舞を車に乗せ大阪城へ向った。