悲しき再会4
「無理したら悪化するから、痛い時には歩いてはいけないよ」
「はい、でも早く治りたいのです、何時になったら、以前のように歩けますか」
「そうだね、半月くらいかな」
舞に無理をさせないため、多めに言った。
「半月も、私、そんなに待てないわ」
「待てない?何を」
「一日も早く仕事がしたいのです」
「仕事」
「はい、先生に助けて頂いた時も、仕事を探しに行く途中だったんです」
こんな悲しいことに負けず、仕事がしたいという舞、幸樹は哀れで舞の顔が正視できなくなった。
(みさき公園駅で、僕を見つめていたあの美しい目は、哀しみの始まりだったのか。虹は幸せを呼ぶと思っていた。その美しい虹の中に消えていったあなたが、不幸のどん底に落ちていたとは、なんと悲しいことなのか。僕は幸せへの別れだと辛さを堪えていたのに)
幸樹は心の中で舞に誓った。
(今日から、僕が貴女の手足になります)
治療を終えた幸樹が言った。
「僕が仕事を探しましょうか」
「嬉しい、先生がお仕事探してくれるのですか」
「よい仕事が見つかるかどうかは分からないけど、一生懸命、探してみます」
「わたしからもお願いします」
養母が平伏するように言った。
「でも、なぜそんなに仕事をしたいのですか」
「仕事には希望があり、生きているという感覚と、みんなと同じ世界に居る実感がするのです」
「わかりました、じゃあ、帰りますが、くれぐれも無理はだめですよ」
言って、幸樹が舞の部屋を出ようとしたが、急に振り返って尋ねた。
「何か特技はありますか?」
「何もないです」
「じゃあ、目が見える時の仕事は何をしていましたか」
「病院で医療事務をしていました」
「病院ですか、じゃあ、僕の医院で受付をしてください。無論、正規の受付ではありません、僕や看護師は忙しい上に、昼の休診時間を利用し、患者さんの往診に出掛けているので、医院が不在になります。難しいしい仕事ではありません、ただ、かかってきた電話を受け取るだの仕事なので、目が不自由でもできると思います。そして慣れたら、もっと難しい仕事をして頂くことになります。どうでしょう、来ていただけますか」