悲しき再会2
と言って倒れた。
「怪我をしているようだね」
幸樹がマスク越しに言った。
「そうらしわ、先生、見てあげてください」
「じゃあ、足を診せてもらうよ」
幸樹が手慣れた仕草で足を診察した。
「足首の捻挫ですね」
言いながら、恐怖と寒さに震える女性の顔を見た。
「あなたは、、」
驚いたように言ったが、その後言葉がでない。
女性は、名前を聞かれたと思い、自分の名前を名乗った。
「はい、和泉舞です」
マスクをしていなかったら、舞は、先生が自分の心の支えであるお兄さんであることを、声で知ったことだろう。だが、痛さも加わり気付かなかった。
「お気の毒ですが、捻挫しているようですね、治療しますから、僕の医院に来ますか、それとも、救急車で大病院へいきますか」
「できたら、先生の治療を受けたいです」
と舞が医師の顔を見た。
だが、舞は医師が幸樹とも分からず、見えない目で、人を探すように、目をあらぬ方へ向けていた。
(なんて哀れな、別れの原因は、目が見えなくなったせいだったんだ)
幸樹は可哀相で、涙を止めることはできなかった。だが、マスクをしていたので和歌子には気付かれなかった。
「もしかしたら、お目が悪いのでは」
辛さを堪えて尋ねた。
「はい」
「いつからですか」
「昨年からです」
辛い再会に、幸樹は心で泣いた。
幸樹が辛さを堪えながら言った。
「さあ、少し我慢してください」
言うと幸樹は舞を抱き上げた。
「何をするんですか!」
舞が驚いたように言った。
「僕の車までお連れするんです」
舞は、恥ずかしそうに身体を硬くしたが、幸樹に従った。
「警察に被害届けを出しましょう」




