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別れの連鎖5


 「そうでしょう。だから思い切って移転しましょう」

 和歌子は、幸樹の母親が生きているころから彼方医院の看護師をしていたので、幸樹の母親が亡くなってからは、幸樹を我が子のように世話を焼いていた。

そのため、幸樹は、和歌子の忠告を聞き入れる習慣が身に付いていた。

「移転、父と死に別れた上に、この病院とも別れるか」

 幸樹が悲痛な声で呟いた。

 父が設立した医院を閉鎖するのは忍びないが、このままなら、いずれ閉鎖しなければならない。

「決心しました?」

 和歌子が尋ねた。

「まだ、だよ」

「私、いい移転先を見付けていたのよ」

「早いね。移転先は?」

「私が住んでいる泉佐野市です」

「泉佐野市‥‥」

 幸樹の脳裏に舞の顔が浮かんだ。

「良いところよ、医者も少ないし、きっと、成功するわ」

「和歌子さんも便利だしね」


「そうよ」

 素直に認めた。

「じゃあ、明日、案内してください」

 幸樹は、舞に逢えるとは思わなかったが、せめて、舞がどんな町で住んでいたのか知りたいと思い移転を決めた。

 翌日、幸樹は泉佐野市の市場町へ行き、和歌子が見付けた土地を見に行った結果、環境や立地が気に入ったため、早速、土地を購入し、建設業者に医院の建設を依頼した。

 医院が完成したのは、七ヶ月後の十月だった。

 最初の一ヶ月は、患者の数も少なかったが、インフルエンザの大流行が始まり、多くの患者がきた。

 それが切っ掛けとなったのかは定かでないが、十一月に入ると、インフルエンザ以外の患者が来るようになり、医院としての経営が容易になった。

 また、医院の発展を願う和歌子は、油断は禁物だとばかりに幸樹に提案をした。

「先生、この地域には体の不自由な人が沢山います。その人たちの往診を始めたら、多くの人が、彼方医院の存在を知ると思うのです。如何でしょうか」

「成程、きっと、患者さんが喜ぶだろうね」

「じゃあ、明日からでも始めましょう」

「往診の時間は夜?」

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