別れの連鎖2
「分かったわよ」
言い争いを避けるために、幸樹は了承した。
「私と再婚することを考えた」
早苗が押し付けるように言った。
「僕の考えは変わらないよ」
幸樹は、言質を取られないように、できるだけ簡略に言った。
「そう、今日は、まだ、沢山時間があるから、今でなくてもいいわ」
早苗は、幸樹を追い込んでくる。だが、早苗のお陰で、どんな難題を吹っかけられても堪えることができる訓練にはなった。
早苗の話を適当に聞いているうちに、電車は泉佐野のホームに入っていった。
幸樹は、舞の姿を探し、プラットホーム上を隅々まで探したが居なかった。
早苗さえ居なかったら、幸樹は舞の思い出に更けることが出来た。
しかし、今はそれを許さぬ者が横に居た。
「プラットホームに誰かいるの?」
黙っていると、
「返事ぐらいしなさいよ」
声を荒げる。
「病院の先輩が乗る筈だったんだが、どうも乗らないようだ」
適当に答えた。
「そう、それは残念だったわね」
泉佐野駅から、みさき公園までの間は、幸樹と舞にとって、顔や表情に表さないが、とても、幸せな時間であった。
その思い出を早苗は壊した。
幸樹は、早苗に、これ以上、自分と舞の幸せを壊されたくないと思い、電車が一秒でも早く、みさき公園に着く事を願っていた。
やがて、みさき公園駅に到達し幸樹は席を立つ。
「この駅で降りるの」
早苗の決心は変わらないのか、幸樹に付いて電車を降りた。
「病院までの時間は?」
「十五分くらい」
「そんなに歩くの、私、歩くの苦手なのよ」
早苗は、文句を言いながら後に付いてくる。
「帰りも、一緒に帰りましょうね」
「遅くなるよ」
「いいわ、みさき公園で動物や魚などを見物して時をすごし、貴方の仕事が終わった頃に病院へいくわ」