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永遠の別れ?6

駅に着いた幸樹はベンチに座り、空を恨めしげな顔で見ていたが、小さい声で言った。

「じめじめした雨の日の別れは、あまりにも哀しすぎる」

 舞との別れは悲しい、まして、雨ならなおさら悲しい。

 幸樹は天に向かって祈った。

(どうか、晴れてください)

 その願いが通じたのか、やがて西の空が明るくなり、西日が射してきた。

 幸樹は天に感謝した。

 六月の太陽は、午後六時なら、まだまだ日差しが強いため、地上を水浸しにした雨も、簡単に乾かした。

 雨で飛ぶ事を封じられていたトンボが現れ、羽をきらりと光らせながら、上空を楽しげに飛び回っていた。

 幸樹は、ベンチに座り、暑い西日を背に受けながら、出入りする電車をみていたが、ふと違和感を抱いた。

 その原因が分かったのか、急に幸樹の顔が歪む。

(全ての電車は、暑い西日を受け、日除けを下ろしている。これでは、女性と別れができない。なんて、馬鹿なお願いをしたんだ)

 やがて、六時の時報が、山々にこだましながら、プラットホームに届いた。


その時報が終わるのと同時に、木琴で奏でる美しい音楽が流れて来た。

その音楽が佳境に入ったとき、各駅電車が入ってきた。

 幸樹はベンチから立ち上がり、電車を迎える。

 その幸樹の顔が失望で歪み、残念そうに呟いた。

「やはり日除けが降りている」

 やがて、各駅電車はゆっくりと幸樹の前を通り過ぎる、その窓は、全て、日除けが降りていた。

 幸樹が失望の目で後方の車両を見た。

 後方から二番目の車両に一本に黒い線が現れては消えていた。

 どうやら、線路の曲がりがそう見せているようだ。

 やがて、黒い線は、近付くに従い幅が広がり、日除けが降りていない窓が一つ現れ、その窓から、舞が西日の暑い日差しを顔に受けながら幸樹を見つめていた。

(貴女は、日除けを取り外してでも、僕と最後の別れをしたいんだね)

 幸樹は胸が熱くなる程の感動を覚え、思わず、我を忘れて電車に駆け寄ろうとした時、舞が心の中で、幸樹悲しい別れを告げていたのだ。

(お兄さん、もう、二度と私の目でお兄さんを見ることが出来なくなりました。そして逢うことも。だからお兄さんの顔を目に焼き付けます。けっして、舞を哀れと思わないでください。私の胸には、いつも私のものが居ます)

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