永遠の別れ?4
舞は、いずれ、幸樹の前から姿を消さねばならないことを覚悟した。
幸樹といえば、若くして美しい舞に恋心を抱いたことを反省し、関わりを避けるように舞を見ないように心がけていた。
だが、心の中では、胸が締め付けられるほどの切ない恋心を抱き、電車で遠ざかる舞を見送っていた。
舞の目が不治の病、そして、慎一との婚約が破談したと知った先輩や同僚達は、急に苛めをやめ、優しくなった。だが、舞の目は、日に日に悪くなっていたが、先輩や同僚の暖かい助けにより勤務が出来た。
しかし、約束の十年後が、あと約二年となった六月三日。
舞はこれ以上、勤務していると、とんでもない過ちを犯すような気がしてきた。
そこで、勤務を終えた舞は、担当者に退職願いを提出した。
「退職願いは、一ヶ月前に提出することに決まっているので、退職日は一ヶ月後となりますが、それでいいですか」
担当者が言った。
「目の状態が悪いので、できましたら、もっと早く退職できないでしょうか」
「そう、でも、まだ、少しは見えるんでしょう。辞めるのは早くない?」
「いえ、これ以上、勤めていると、重大な失敗をするかもしれません。どうか、ご了承ください」
「そうね、じゃあ、上司に聞いてきます」
しばらくすると、上司が現れた。
「希望日時は?」
「六月十日です」
この日は、幸樹がみさき総合病院で勤務する日だった。
「特別な事情だから許可します」
「有り難うございます」
上司は、慰めの言葉を言おうとしたが、舞が哀れに思えて声が出なかった。
「長い間、お世話になりました。じゃあ、失礼しかます」
舞が出て行くと、上司が目に涙を浮かべ、可哀相にと呟いた。
紀ノ川駅へ舞が来ると、美鈴が待っていた。
「本当に退職するの?」
美鈴が心配そうに尋ねた。
「ええ、今月の十日にね」
「そんなに急なのは、また、目が悪化したのね」
「ええ、そうなのよ」
「貴女の悲しみを慰める言葉がみつからない、、でも、私が言えることは希望をすてないでってことだけ」
「ありがとう、美鈴の気持ちが嬉しい、あなたの言葉をきっと忘れないわ」