永遠の別れ−3
病院を出た舞は、歩きながら自分に言った。
(お兄さんは、私の目が見えないと知ったら、どんなに悲しむか知れないから、私の正体を絶対に知られてはならない)
舞は悲しみに堪えられず、泣きながら家に帰ったが、義父母に心配を掛けたくないと思い何も言わなかった。
しかし、慎一のことを考えると、こんな私と結婚してくれるだろうかと、不安になったが、隠す訳にもならず、運命と割り切り、慎一に目のことを話した。
慎一は、舞が失明すると知り、心細くなったのか、両親に話した。
すると、両親が猛烈に反対したために、結婚は破談となった。
舞は覚悟していたとはいえ、その辛さははかり知れないものがあり、自分一人で胸に収めていることが出来ず、養父母に泣きながら話した。
養父母は、舞と共に悔し涙をながした。
「頑張るんだよ、舞」
養父母が悔しさを堪え、舞を励ました。
「でも、慎一さんはなんて薄情なんでしょう。許せないわ」
養父母が涙を流しながら言った。
「今更、人を恨んでも仕方ないよ」
妻の怒りを収めるように養父が言った。
「そうね、嫌われているのに、無理に結婚しても、舞の幸せは無いのよね。舞さん、辛いけど辛抱するのよ」
「はい、私には優しい両親が居るから、どんな悲しい目にあっても、我慢できます」
「我慢できるか、、安心したよ」
養父が言うと。
「いえ、私は安心できないわ」
養母が不安そうに言った。
「何が?」
「舞の今後が」
「そうだね、それを思うとね」
「心配しないで、私は何度も苦しい目にあっているから、これぐらいで負けないわ」
言うと、舞は自分の部屋に入り、肩を震わせ泣いた。
だが、舞は、もう、死のうなどとは考えなかった。まして、本来なら、慎一と婚約が破談になった時点で、病院を辞めるべきだったが、養父母を悲しませたくないために辞めること出来なっかった。
その辛さを幸樹に絶対に見せられない。
幸樹に不幸な自分を見せることは、舞にしてみれば、死ぬより辛いことなのだ。