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永遠の別れ−2


美鈴の話は、全て、自分と恋人のことだった。舞は、その恋愛話を聞いている間に、孝子駅に着いた。

「じゃあ、また明日。慎一さんとの甘い夢を見ながら、ゆっくり帰ってね」

 美鈴は言いながら下車し、暗闇の中へ消えていった。

 発車した電車は、数分後の午後六時過ぎ、みさき公園駅に着いた。

 駅周辺は暗闇だが、駅のプラットホームは、スポットライトを浴びたように明るく照らされていた。

 舞は、幸樹の姿を求め、プラットホームを見渡していると、少し薄暗い物陰に一人の男が立っていた。

 目をこらして見ると幸樹だった。

(やっと、お兄さんを見つけたわ!)

 舞の喜びは言葉で表せないほどだった。なぜなら、この車両には病院関係者が一人も居ないため、誰の目を気にせず、幸樹の顔を見ていられるのだ。

 幸樹が、明るい所へ出て来て、舞を見た。

(お兄さんが私に逢いにくる)

 幸樹が自分の所へ来ると早合点した舞が立ち上がろうとした。

 しかし、幸樹は乗って来なかった。

(お兄さんは、次の急行電車を待っているんだわ)

 そう気付いた舞は、同電車に乗ろうと考え、電車を乗り換えようとしたが、その行動が、あまりにも露骨だと気付いたので止めた。

舞の考えでは、幸樹が舞を鷺草の少女だと気付いてくれるのは何の支障もないと考え、幸樹に逢うたびに、気付いてくれることを願っていた。

 なぜなら、十年後の約束を自ら解消しなくてもよいからだ。

 もし、幸樹が解消しようとすれば、聞こえない振りをすればよいと思っているのだ。

 舞は、私よ、早く、私だと分かってと心の中で念じ、幸樹を見ていると、また、目が霞んで幸樹の姿が見えなくなる。

 舞は、目を拭いてまた見たが霞んで見えない。

 涙のせいと思った舞は、しばらく目を閉じてから開けると、幸樹の顔がはっきりと見えたので、疲れているんだと思って帰っていった。

 二週間後の木曜日の朝、舞は、表情に出さないが、胸を踊らせ、急行電車に乗った。

 そして、そっと、幸樹の顔を見た、だが、幸樹の顔が霞んで見えた。

 舞は、席に着くと目を拭く、だが、霞は取れない。

 しかし、また、見え出した。

 その状態は、仕事中、そして、帰りの電車で幸樹を見ても同じだった。

 そこで、目の異常に気付いた舞は、泉佐野駅に着くと、駅近くの眼科医へ行った。

 医者の診断によると、原因不明の難病だと聞かされ、病状の悪化は早く、やがて失明すると宣告されたのだ。

 その瞬間、舞は幸樹の顔が浮かんだ。

(もう、お兄さんと逢えなくなった)

 と泣き伏せた。

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