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悲しみの海−7

一年後、

 鷺草の海は、強い強風に曝され、大波が白い牙を剥き、海岸目掛けて打ち寄せていたが勢い余って、松林の中まで入ってくる。

 鷺草の磯の上では、幸樹が打ち寄せる大波の飛沫を浴びながら、海に向かって叫んでいた。

「鷺草の少女が死んだのは僕の責任です。どうか、僕の命と引き替えに、少女を生き返らせてくだい!」

 幸樹が鷺草舞の死を知ったのは、十日前の夜だった。

 ニュースを何気なく見ていると、南紀の海で少女が溺れ死んだと伝えていた。

 幸樹は、見た瞬間、背筋が寒くなるように悪い予感がしたため、急いで、インターネットで、少女の名前を検索したが、名前と場所は伏せられていた。

 名前と場所を伏せているのは、自殺を誘発しないための措置と思った幸樹は、自殺と断定し、氏名と場所を調べたが、辛うじて分かったのは場所だった。

 それも、幸樹がもっとも恐れていた鷺草の海だった。

 また、鷺草舞が自殺したとする決定的な証拠は、少女が溺死した日が六月十一日、即ち、この日は、鷺草夫婦が自殺した命日にあたる日だったのだ。

(少女の願いは、大好きな両親の所へ行くことだった。それなに、僕は、自分の命を賭けた約束だから、と過信したために、少女を死なせたのだ。もし、過信しなかったら、必ず、両親の命日の六月十一日にこの場所に来て、少女を助けられた)

 と我が身を責めていた。

 だが、その時。

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 鷺草の海を囲む松林の中に緑色のレインコートを着た少女が現れた。

 よく見ると、幸樹が死んだと思っている舞だった。

 舞は、しばらくの間、荒れ狂う海を見つめていたが、決心したように、鷺草の磯の方へ向かって歩き出した。

 舞の行くてを阻むように、海は大波を松林へ打ち寄せるが、舞は怯まずに前進んする。

 一年前、幸樹に助けられた舞は、足の不自由な祖母を助けながら学校へ通っていたが、両親が借金を残して自殺したことが知れると、親しい友人達は手の平を返すように冷淡になり、やがて虐めへと発展した。

 しかし、舞は祖母の手助けをし、幸樹との約束を守るために、どんなに辛くても、歯をくいしばって我慢した。

 だが、祖母は息子の残した借金を苦にしたせいで、徐々に体調を崩し、一週間前に死んでしまった。

 祖母は死ぬ前、舞の実の両親は交通事故で亡くなり、鷺草家の養女になったことを言い残して死んだのだ。

 大好きな祖母の死、そして大好きな両親が実の親でなかったことを知った舞の悲しみは頂点に達し、両親の海に死にに来たのだ。

 舞が急に立ち止まった。

「お兄さんが来ている!」

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