B班
「はい、了解です! お任せを、はーい」 ピッ
「誰からですか? リーダー」
「例の一般人さんからですよ、俺達は黒幕の方を追うから、主人公側の撮影は任せましたと」
「なるほど、理解したっす」
私の名は白井 癒美、アニメカメラマン撮影部隊B班のリーダーをしています。
こんな名前ですが、髪の毛は黒髪で、得意戦法は近~中距離です……
今日は私達の班が夜遅くの撮影、いわゆる《夜勤》のお仕事の日。
ただ、夜勤と言っても撮影するような重要イベントが無いなら寝てくれていても構わないと言われています。
しかし、こちらとしても主人公の動向は監視(?)していないといけないので、暇な夜勤はあまりないのです。
「西坂さん、それでは行きましょうか」
「おっけぇー!」
この方は、撮影係の西坂 翔平さんです。
金髪の軽いノリの方で、色んな意味でフレンドリーな人……その見た目から元ヤンだのホストだの言われますが、二つとも正解という見た目通りの男性なのです。
「そういえばリーダー、みやっちは?」
「あぁ……あの人は、呼べば来るのでほっときましょう」
みやっちと言うのは、この班のもう一人の撮影クルーである、天宮燈真さんのことです。
無口で(多少の)放浪癖がある方ですが、肝心な時に名前を呼ぶと来てくれます。
なんかのヒーローみたいですね。
「主人公のセティアさんはこの先の宿屋に向かう予定ですね」
「なんか正道さん達が撮影した方がはやい気がしますが……」
「ま、まぁ……S級初心者の彼らに夜勤は、荷が重いでしょうし……今夜は休ませてあげましょ」
「そうっすね」
というわけで私達は、主人公が一夜を明かす宿屋に向かいます。
情報では、のちの仲間となるアレックスさんという方も一緒にいるようです。
「あ、リーダー! あれって主人公さんじゃ?」
私達が宿屋に向かう途中で、西坂さんが主人公とアレックスを発見したようです。
「あら、主人公サイドもまだ宿屋には到着していなかったのですか、一応会話も撮影したいので、今から撮影お願いしますね」
「了解しましたぁー!」
「なぁお嬢さん、いいだろ? 俺と飲もうぜ」
私セティア・オルスティーは、村の宿屋を探す。
だが、途中に寄った酒場で余計な者まで着いてきてしまった。
「まったく冷たいねぇー返答くらいして欲しいもんだぜ」
うざいので無視していたが、この村には初めて来たので、宿屋の場所がわからない。
「おーい、お嬢さん」
仕方あるまい……私は渋々男に歩み寄る、と言っても相手に喧嘩を売るかのごとく睨み付けながらである。
「セティアだ! 宿屋の場所を教えてくれ、そうすれば後の事は構わない!」
もちろん構わないわけがない、変な気をおこすようならその場で切り捨てる予定だ、いやこのさい異術石の力をこの男で試すのもいいかもしれない。
「……アレックスだ、よろしくな! 宿屋か? ここを右に曲がってすぐの所にあるぜ」
男……アレックスは、にやつきながら話す。
「すまない……それでは」
「まちな! 宿代奢ってやるぜ、その代わりに俺も旅の仲間に入れてくれ」
「貴様……なんのつもりだ」
「俺もしてみてーんだよ自由な旅ってやつをよ、セティアのような美少女が横にいてくれるんなら尚更よ」
「……」
突然何を言い出すかと思えば、この男はまだ酒が抜けていないらしい……そんな突拍子もないアレックスのセリフに困惑したのか……
「勝手にしろ! 私は知らん」
なんだか、了承したともとれるセリフを言ってしまった。
「なぁに、村一番の戦士である俺様だぜ? 後悔はさせんよ」
もうすでにお前に出会った事にだいぶ後悔している。
私は、アレックスから逃げるように宿屋に向かう、きっとアレックスも追いかけてくるだろうが、明日には酒も抜けて今日のセリフなんぞ忘れていることだろう。
「リーダー、もう俺らも泊まりません?」
「そ、そうですね……今日の撮影はこれだけなので、私達も休んでいいか連絡を入れてみますね」
今日は色々とあってもう疲れた、結局酔ったアレックスが宿代を私の分まで払ってくれた、できるだけ借りは作りたくなかったが、言っても聞かなそうだったのでやむ終えない。
ーー翌朝ーー
布団に入ったらすぐに寝てしまった、私の部屋は二階だったので、階段を下りて受付に向かう。
さっさとあの男を置いていきたいものだが……
「よぉ、セティアお目覚めかい?」
奴は意外にも早起きであった、二日酔いで苦しんでいればいいものを……
私は無言で受付を済ませ、宿屋を後にした。
「それじゃあ、これからよろしくな! セティア」
後ろから奴の声が聞こえるが、私は振り向かない。
どうせ何を言っても着いてくるのだろうから放っておいておこう。
とりあえず、異術石の情報を求めるべく、セティアはこの先の大きな町を目指すのだった。
「あー、まだ眠いわー」
「起きないと主人公行っちゃいますよ?」
「お目覚めに有効な香りでもかぎます?」
「もはやなんでもありだな……」
山田は香りの恐ろしさを思い知った。
次回 セティアの石の能力
次も俺達の活躍見ていてくれよな
一方その頃……
「西坂さん、起きてください」
「Zzz……」
「まったく……夜勤明けはいつもこうなんだから……疲れているのはわかりますが、緊急の連絡に対応しないと、はぁー、まぁ、私が起きてればいっか」
癒美は苦労人である。