動き出す陰謀
正道達一行は酒場の裏側へ向かう、そこにままだ例の女性店員がいるはずだからだ。
「そういえば、アリスさんお店の方は大丈夫なの?」
その間正道は、アリスに色んな質問をしていた。
「はい、仕事と言うよりはお母さんのお手伝いですが、今回この話をお母さんにして、長期休暇を取らせてもらいました」
誠にご苦労様である。
「お母さんよく許してくれたな……」
「これは私のわがままでもあります……お母さんには、セティアさんが心配で仕事にも手がつかないと話しました……」
たしかに、幼なじみが不本意にも旅に出ると言い残して去っていったら心配にもなるだろうが、見ず知らずの人間の手助けまで了承するのは、お人好しというか、なんというか……もしかしたら、ここにいる誰よりも強靭なメンタルの持ち主なのかもしれない。
「それに、旅をしていたらお父さんに会えるかも……」
「あっ! いたいた! 見つけた、さっきの子」
「しっ……正道さん! カブトムシ見つけた子供じゃないんだから、静かにしなさい」
「あ、すまん……よし、撮影といきますか」
店の裏側には、夜の闇に隠れるようにして、女性店員一人と部下と思わしき男二人が会話をしていた。
「ふぅー、か弱い女を演じるのも疲れるわ、変な男にも色目使われるし……あぁーイライラする!」
「目的達成してるし、良いじゃないですか?」
「そのためにここのお仕事をしているのでは?」
「黙りなさい! 私の力と怒りはあまり関係ないのよ、それは姉様の方、その気になればあんな男なんか力を使わなくたって……」
「もしかして、あの男を始末するために、私たちを呼んだので?」
「呼んだっていってもいつもすぐ近くにいるけどねー」
「てめぇ、俺の揚げ足とってどうすんだ! 俺にストレスを与えんじゃねぇ!」
「ふん、やはりあんたらは見る目ないのね……もっとすごいのが近くにいたじゃない」
「え?」
「それは?」
「誰だろう?」
「私か?」
「山田さん……貴方は、ボケないで」
「はぁー、まったく……あの赤い髪の女よ、私達と同じ匂いがしたわ、間違いなく持ってる」
「そんな奴いたか?」
「いたようなぁー、いないようなぁー?」
「ダメねぇー、私の部下として恥ずかしいわ……そんなんだから」
そして女性はこちらを指差す
「あそこに隠れてる奴らの気配すら気づけないのよ!」
「え?」
「え!」
「うわぁ! ばれてんじゃねぇか!」
「正道さんが、騒ぐからでしょ!」
「気配と言っていたし、どのみちバレていたとおもうがな……」
「まぁ、今日は夜も遅いし私も眠いわ……あんたら二人で始末しておきなさい」
「えー! こういう時こそ、力の使い時では?」
「そーだ、そーだ!」
「この程度の負荷で力はでないわよ、始末の仕方はなんでもいいけど、逃げられないようにね」
「しゃーねぇ、久々に本気出すかー」
部下の男はナイフを取り出した。
「まぁ、話聞かれたからには生かしちゃおけないよねー」
もう片方の男は拳を握りしめ、構えた。
「じゃあ、山田後はよろしく!」
「了解!」
「あれ、兄ちゃん武器は持たない系? じゃあ僕が拳で相手してあげるよ」
「では、お手合わせ願おう……」
ーーROUND1ーー Fight!
まずは、お互い距離感の確認……勝負は一瞬である。
「いくよぉ! おりゃあ」
相手のパンチの連打を、山田はガードしてやりすごす。
防戦一方に見えるが、向こうから近づいてくるなら山田としてもやりやすい。
「そこだ!」
一瞬の隙をついて、相手の足を思いっきり踏んづける。
「あ痛!」
男は思わず声を出し、体制を崩す。
そして、そのまま相手のみぞおちに一撃をかます。
「ぐぁっ!」
そして、男が倒れるよりも先に、腕を片手で掴み……
そのまま、一本背負いで相手を地面に叩きつける。
そして……
「これで終わりだ!」
山田の体重を乗せたボディプレス、敵は潰れる!
「この、俺がぁ……ぐはっ!」
YAMADA Win
「ふぅー、なんとかなったか……」
普通の人間相手では異世界の人間といえどなんとかなるようだ。
一方で……
「悪く思うなよ、なぁにこいつで一刺しすりゃすぐに終わりよ」
大きめのナイフを構えた男が正道達に迫る。
「ひぇぇー、怖いよ司きゅーん!」
「気持ちわりぃな! ほら正道さんもカメラ構えて構えて!」
「そんな事言ってる場合か! あと、カメラは鈍器じゃねぇ」
「まぁまぁ、皆さん落ち着いて……」
「あ、アリスさん危ないよ」
二人の様子を見かねたアリスが、キレイな色の液体が入ったビンを持って、男に歩み寄る。
「おっと、女だからって容赦はしねぇぞ! こっちは、こぇー女の世話係やってんだ」
「そんな気を張らないで、ね? そんな貴方にこの香りを届けましょう」
アリスの開けたビンから不思議な香りがひろがる。
「な、なんだこれは……なんだか、力が抜け……」ガクッ
男は、その場にへたりこんだ。
「おやすみなさぁーい」
「あんたは死ぬ気でカメラまわせぇーーぇー……」
正道と司もその場にへたりこんだ。
「ハルスの花屋特性、脱力フレグランス! 普段はこれを薄めて販売していますが……ちょっと配合量を間違えましたかねぇ……まぁ、いっか……」
「くそっ、せめて刺し違えても……」
男が力を振り絞って立ち上がろうとしている。
「あらあら、いけませんね」
そう言ってアリスは、ハンカチをひろげ、男の口元に押し付ける。
「ふぐっ! …………zzz」
男は眠ってしまった。
ARISU Win
「全部ただの香りですから、体に害はありませんよ♥️」
「やっぱりこいつら化け物じゃねぇか……」
正道は震えた。
「薬も過ぎれば毒となる、物は使いようですから」
へたった正道達に手を貸しながら、アリスは言う。
「ありがと……よし! 司、山田、アリスさん」
「アリスで大丈夫ですよ」
「こいつらが、起きる前に宿屋に向かうぞ!」
「「「いえっさぁー!」」」
そして正道達は今夜の寝床を目指した。
次回
B班
次も俺達の活躍見ていてくれよな!