助っ人参戦
「どうだい? 見ててくれたか、俺様の勇姿を」
酔っぱらいに絡まれた女性店員を見失った男は、元いた席に戻ってきた。
「あぁ……強いんだな」
「ひやぁー、冷たい反応だねぇ……その氷のような心、いつか溶かしてやりたいよ」
よくもまぁ、そんな恥ずかしいセリフを初対面の異性の前で堂々と言えるものだ、こっちが恥ずかしくなるぞ。
「で、では私はこれで……」
この男とあまり関わりたくなかったので、私はそそくさと飲んだ分のお代を置いてその場をあとにした。
「待ってくれよ、男一人で飲む酒は嫌いなんだ、少しは話くらい……」
男がそう言って後を追って来たが、私は気にせず店を出た、闇夜に紛れればそのうち撒けるだろう。
「主人公が外に出た! 追うぞ」
「了解、お会計はババ抜きで負けた正道さんお願いしますね」
「まじかよ……わかった、山田と先に行っててくれ」
「そう気を落とすな正道、次は運要素強めの勝負をしてやる」
「山田さん……それは辞めといた方が」
「何故だ?」
「正道さん運だけはやべぇほど強いんですよ……長い付き合いですが、運勝負で僕が正道さんに勝てたのは数える程度しかありません」
「そういうタイプの主人公だったか……」
「いや、はよ行け! 見失うぞ」
「あぁ、すまん……それでは」
「ごちそうさまぁー」
司と山田は主人公を追いかけるべく一足先に店を出た。
「さーて、店を出たはいいんですが、僕たちが探すべきは主人公の方ではないんですねー」
「ん? どういうことだ」
「貴方も資料を見てなかったんですか……はい、こちらをご覧下さい」
そう言って司は、一枚の紙を山田に見せた、そこにはこの世界の登場人物が描かれている。
「この顔にピンと来たらアニメ管理局まで!」
「この顔はもしや……さっきの」
「正解、さっき酔っぱらいに絡まれていた女性店員ですねー、そしてこの書類には登場人物の役割や経歴まで書いてあるんですねぇー、どうぞお読み下さい」
司は山田にその紙を手渡す。
「えーっと……超重要人物……物語の黒幕の娘……
だとぉー!」
なんとびっくり! あのおどおどした店員は今回の物語のボスの実の娘であった。
「はーい、こんな序盤に黒幕の娘さんに会っているんですねぇー、主人公さんは」
「な、なぜ黒幕の娘が酒場の店員など……」
「それは後々わかるとして、今はその黒幕の匂わせのシーンの撮影になります」
「なるほど……さっぱりわからん」
「恐らくですが……今、店の裏側の方で、その娘さんと部下が合流しているでしょう、今回はその会話のシーンを隠し撮りです」
「突然難易度が上がったな!」
山田がもっともなツッコミを入れたその時……
「あ、あのぉーすいません」
突然誰かに声をかけられた。
「あ! はいなんですか?」
司が声の方に向かってライトを向ける。
「え? あ、貴方は!」
司が驚くのも無理はない、そこにいたのは……
「は、初めまして……私はアリス・リュシェールと申します……あなた達がその……あにめかめらまん? と言う方達ですか?」
「うぃー、おまたせぇー」
同じタイミングで支払いを終えた正道が店から出てきた。
「え! あ、貴方は!!!」
「あ、はい! 初めまして……」
「誰だっけ?」
「あーあーあーーー」
司と山田はずっこけた。
「正道さん、覚えてないんですか? 村で主人公と話していた花屋の」
「あー、茶髪の花屋さんの!」
「いや髪の毛で記憶してんのかよ、……って言うか、あ、アリスさんでしたっけ?」
「は、はい!」
「今、アニメカメラマンとおっしゃいました?」
「はい、依頼(?)を頼んできた人があきらかに周りの人達と違う服装をしているから見たらわかるはずと……あの、人違いでしたか?」
「た、多分合ってます。 いや合ってるんですが」
つまり、その言葉が指し示す意味は……
原住民で、主人公の幼なじみで、村のお花屋さんの少女が……
「アニメ管理局からの助っ人……だと」
司は困惑した、何か別の作品のタイトルだろうか?
「この人、護衛とかできんのかなぁー?」
「正道、それ以前に私の護衛対象が増える可能性を考えないのか?」
「私は大丈夫です、私なりのやり方で自分の身は守れるので」
正道達の心配とは裏腹に、彼女はやる気まんまんのご様子…………
「ま、まぁ……この辺りの地理に詳しい人がいるのは心強いですよね、ね?」
「そ、そうだな……」
「それは一理あるな、地理にだけに!」
「これが今話題のアニメ、氷結の正道……か」
司が呆れた声を出す。
「い、一応改めて名乗っておきますね……」
彼女が、艶やかな茶髪の髪をかきあげると、辺りにとても良い香りが広がる。
そして……
「セティアさんの動向を見守る一輪の香る花、《花屋のアリス》管理局に呼ばれて推参いたしました!」
\\ドン!//
管理局の助っ人は必ず肩書きと名乗りがあるらしい。
次回 動き出す陰謀
次も俺達の活躍見ていてくれよな!