酒場
「やはり夜の酒場というものは賑わってるな、司くん」
「賑わい過ぎてうるさいですけどもね……山田さん」
「うーむ、そうだな正道」
「………これだ!」
「残念、ババだ」
「うわー、負けかよ山田のポーカーフェイス強すぎ」
「ほぼ無表情ですもんね、ババ抜き最強では?」
「そんなことより遊んでていいのか?」
山田にそう言われたものの、主人公がこの酒場にやってくるまでには少し時間がある、アニメカメラマンたるもの常に切羽詰まって緊張していては、いい仕事はできないのだ。
「まぁまぁ、そんな急がんでも」
「おっ、正道さん朗報ですよ」
司が嬉しそうにパソコンの画面を観ている
「どした?」
「管理局員がこちらに向かっているそうです。 ここでの撮影を終えた頃には来てくれるかと」
「オッケー! これで今夜は安心して眠れるな」
正道は注文した料理を食いながら言った。
「見ず知らずの土地で余裕の表情で飯が食えるなら、気にせず寝れそうなものだがな……」
まぁ、いざとなれば君の影に隠れればいいからね♪
そのとき、客の来店を告げるベルの音がした。
「主人公来た! 構えて構えて」
「いや構えるのはカメラマンのあんただよ」
私セティア・オルスティーは、休息もかねて近くにの村の酒場に来ている。
酒場には色んな人間が集まるので、情報収集にももってこいの場所だ。
「いらっしゃいませ……か、カウンター席でよろしいですか?」
扉を開けてすぐに、小さな女性の店員に話かけられた、やけにおどおどした喋り方だが新人の方だろうか?
「あぁ、大丈夫だ……」
「か、かしこまりましたぁー、こちらへぇー」
私自身もあまりフレンドリーな人間ではなく、誰にでも笑顔を向けるような人間でもないので、もしや怖がらせてしまったのだろうか? たしかに夜の酒場に単身でやって来る女性は少ないだろうが、さすがに0ではないだろう。
などとカウンター席で一人考えていると
「よぉ、嬢ちゃん隣いいかい?」
見知らぬ男が話かけてきた
「かまわない」
「ありがとよ、しっかしこの酒場でこんな綺麗はお嬢さんと飲めるなんてなぁ、もしかして旅のお方かな?」
なんだこいつは…………フレンドリーというよりは、図々しい奴だ。
しかし、今回は情報収集もかねての来店である。
見るからに口の軽そうな男だし知っている事があればペラペラと喋ってくれるに違いない。
「ま、まぁそんな所だ……」
「女一人でかい? また危なっかしい……綺麗なお嬢ちゃんは悪い奴らのかっこうの獲物なんだ、気を付けな」
「……気を付けるよ」
「おっと怖がらせてちまったかな、大丈夫俺はこの村一番の戦士だからよ、これも何かの縁! トラブルがあったら任せときな!」
村一番のうざいやつという事はわかった。
そう思った最中、「オイゴラァァ!」
酔っぱらいの怒鳴り声が聞こえた。
「す、すいません、すいません!」
「てめぇ! 俺様をこんなに待たせやがってなめてんのか?」
「い、いえそんな事は……」
対応しているのはさっき私を案内してくれた店員のようだ。
どうやら、酒の影響で短気になった酔っぱらいがしびれを切らし、どなり散らしているらしい……
「おっとぉ、これはこれは……酒場の喧騒は華だが、お嬢ちゃんに手を出すのは見過ごせねぇなぁ」
男は席を立ち、酔っぱらいの方へ向かった。
どうやら戦士というのはハッタリではなかったらしい、普通の人間なら、あのような体格の良い怒り狂った酔っぱらいに近づくことさえ恐ろしいだろう。
しかし、彼は臆する事なく近づいていった…………
「よぉ、兄ちゃん何をそんな吠えてるのかは知らんが、少し冷静に……」
「あぁ!? んだとゴラァ!」
「まぁまぁ……話なら俺が聞いてやるぜ? このアレックス様になんでも」
ドカッ!
男がそう言いかけた時、彼の顔を酔っぱらいが顔を殴りつけてきた。
「タイマン希望か? 上等じゃねぇか……お望み通り村一番の戦士様が相手になってやるよ!」
しかし、男は何事も無かったかのように酔っぱらいの腕を掴み、払いのけた。
「クッ………おりゃぁぁぁ!」
酔っぱらいは、少しよろけたが体勢を立て直し、再び男に襲いかかる。
「おいおいそんな図体して腰が引けてんぞ、これじゃあ、避ける必要もないかもなぁー」
男は、余裕の表情で相手の拳を避わしている。
「くそ! くそ! この俺を! バカにしやがってぇー!」
酔っぱらいは、近くにあったテーブルを持ち上げ、力まかせに叩きつけようとする。
「さて、もういいか……終わりにすっぞ」
「うぉぉぉ!!!」
「とりやぁ!」
「ぐぉっ……!」
男は酔っぱらいの腹めがけて、蹴りを放つ。
その一撃は見事に命中し、酔っぱらいは体勢を崩した。
「おーりゃー!」
そして男は、酔っぱらいの懐に頭から潜り込み、なんとそのまま両手で持ち上げてしまった、体格差が二倍はあろうかという相手をである。
「うぉわー!」
酔っぱらいも情けない声を出してもがいている。
「せーの、フンッ!」
男はそのまま、店の扉に向かって酔っぱらいを投げつける。
ドガッシャーンという木が砕ける音と共に扉のベルが衝撃で鳴り響いた。
「ひゃあ! なんですか……何があったんですか」
今まさに、店に入ろうとしたお客も大慌てである。
「へっ! ざまーみやがれ」
男はやり遂げたといった顔をしている。
「うぉーー! すげぇー!」
「やるなあいつ!」
「うむ、参考になる戦いだった」
「山田……参考にするのか? これを……」
周りの客から歓喜の声と拍手が鳴り響く、騒がしい酒場がさらに騒がしくなった。
「割れんばかりの拍手と歓声ありがとうございまーす!」
どうやら、うざいのもたしかだが、腕もたしかなようだ。
「あれ、さっきの店員のお嬢ちゃんは? ま、いっか」
次回
助っ人参戦!
次回も俺達の活躍見ていてくれよな!