主人公の旅立ち
「よし! 移動するぞ」
正道が主人公を追跡するべく号令をかける。
「了解! 予定では主人公はこのまま次の町に向かいます」
「その間に重要シーンはあるか? 無ければ先回りしようと思う」
「次の村に到着するまで特にイベントはありませんね」
司がそう言うと、正道はトランシーバーを取り出した。
「源蔵さん、応答お願いしまーす。 はい……村の出口までこれますか? はい、そうです。 はい……わかりましたお願いしまーす」
本来離れた人との情報のやりとりは、特殊な携帯でしているのだが、源蔵さんの場合はいつも車の中にいるので、携帯よりものこちらの方が速いのだ。
「よし、車で次の村に向かうぞ」
「わかりました、一応総隊長の方に連絡を入れておきますね」
アニメ世界の撮影グループは大まかに撮影部隊と、総隊長や救護班のいる司令部隊に別れており、司令部隊は、連絡や緊急時の対応等をしている。
正道のように特殊な権限を持つ撮影部隊もいるが、基本的に司令部隊の指示によって撮影部隊が動くのが普通であり、何かあればとりあえず司令部隊に連絡を入れるのだ。
「そういえば司、なんで主人公は村を出たんだっけ?」
「え? あー、えっとですね……この世界に異術石という強大な魔力を持った石があるという設定は理解してますか?」
「あー、あのアニメで言うアレ……」
「そう、アレですアレそのアレもとい異術石はものすごい力を持っているので、色んな悪い人から狙われるんですね」
「なるほど、なるほど」
「なので、主人公的には争いの火種になる自分が村を出ていけばって事で」
「理解した! 理解はしたが、主人公が石を捨てれば済む話なのに捨てないのが理解できない」
「それは、近所の公園に不発弾を捨てるようなものですよ、アレはそれくらい強力なんです」
「なんで司そんな詳しいの? もしかしてこの世界来たことある?」
「いや、資料見たからだよ!」
…………私はセティア・オルスティー、異術石を手にした放浪の旅人だ。
母と父は、農家を生業とし父は、それに加えて村一番の剣の達人であり、いつ一人立ちしても良いよう、優しくも厳しく育てられた、特に剣の稽古の時の父は鬼のようであった。
「忌むべき争いの魔石がなぜ私の元に……」
異術石を太陽にかざし私は嘆く。
見た目はこんなに輝いてきれいな石であるが、その魔力は全ての者を狂わせ破滅に導く……
しかし、私にも好奇心というものはある。
この石が持つ力はどれほどのものなのか……剣を振り、一度は高みを目指した者なら理解してくれる感情だろう、どうやら私は聖人ではなかったようだ。
さて……とりあえず村を出たは、いいもののあてというあてはない。
物が物だけに誰にでも相談できる事ではないし……だが、ここで立ち止まってもしょうがない、今はとにかく前に進むべきだろう。
「まずは情報収集といった所か……」
たしかこの道をさらに進んだ先に大きな城下町があったはず。
しかし、もう日も傾き始めた時であり野宿だけはするまいと少し道をそれた先にある村を目指す事にした。
きっと私が石を手にしたのも村を出たのも運命の導きであると信じて…………
____一方その頃____
「今日も店じまいっと……あらいけない! 手が空いたら連絡をくれるよう言われていたんだったわ」
慌ただしく電話をかける女性の姿があった。
「えーっと説明書、説明書……ふむふむ、ここを押してこうしてこうして……」
プルル プルルルル
「ひゃあ!」
女性は携帯の音に驚き床に落としてしまう。
ガチャ
「もしもし、こちらアニメカメラマン司令部隊ですが」
「え? 誰がしゃべっているの……」
「もしもーし、もしもーし!」
「えーっと、声が聞こえたらこの機械に向かって話せばいいのね……も、もしもーし」
「もしかして、アリスさんですか?」
「は、はぁーい……アリスでーす」
次回
酒場
次回も俺達の活躍見ていてくれよな!
追放の次は、令嬢か……なら次は奴隷が流行りそうだな