雷
「あ、もしもしのだっち」
「は?」
主人公一行を追跡中突然B班からの連絡がきたので、何事かと思って電話に出たら開幕このセリフである。
俺が知る限り、B班の中でこんな呼び方をするのはあの金髪男しか知らないが、多分そいつだろう。
「ま、まぁいいや……どうしました?」
「いやね……ちょっとめんどくさい事になっちまってですねー、早い話がうちの班のメンバーが、このアニメの重要人物と交戦中なんすよ」
「うわ、まじっすか」
「まじっす、なんでー事が収まるまで動きが取れないんでー、そこんところシクヨロって感じで」
冷静に考えなくともかなりの緊急事態なのだが、彼の軽いノリでの会話を聞いているとなんだか些細な事のように思えてくる。
当然、俺より金髪の方がS級カメラマンとしての歴は長いので、その分余裕があるのかもしれないが。
「救援とかはしなくて大丈夫ですかね?」
「あー、まぁ……こっちにはみやっちがいるんでケーオーっす」
恐らくOKと言いたいだろうがその言い方だと倒されている。
後、みやっちって誰だよ!
「あー、ソースっかぁー、そんじゃお気をつけてー、連絡あざっーしたぁー」
「こちらこそ、突然のお電話ごめんしたぁー、しょうゆことでー」
ピッ
「さて、本当は全班長に伝えるべき内容なんだけど、他のリーダーめんどくさい人しかいないから連絡しないでおこっと」
「着いてこれるか? 少年」
「何をぉ! なめるなぁ!」
燈真と少年が目の前で激戦を繰り広げているが、速すぎるのと、光が眩しすぎるのとで何が起こってるか全然わからない。
一旦足を止めたかと思うとすぐさま相手の目の前に瞬間移動し、電光とともに豪快な音が鳴り響く、おそらくお互いが殴り合ってるのだろうが眩しくて見えないので憶測である。
しばらくして燈真はその場で立ち止まり。
「……!」
燈真は、指先から放電し辺りの廃材に手をかざす。
するとそれらが燈真の手に引き寄せられていった。
「な……これは一体?」
少年は見たことがない光景に驚愕している。
「私のスーツには電磁石が内蔵されているのでな……お前もそこにある鉄の棒に針金を巻いて電気を通せばできるのではないか? 詳しい事はわからんが……」
「な、何をわけのわからない事を……」
「さて、ここで私は武器を手に入れた訳だが……」
「……!」
「私としても忙しいのでな……これ以上は遊んでいられない……」
「それは俺もそうだ! 早くお前らをここで……!」
「私としては、平和に納めたい……ここで私が本気を出した所で、お互い損をするだけだが…………どうする?」
燈真は、覚悟を決めたような、優しく語りかけるようななんとも言えない視線を少年に送る。
「ふ、ふざけるなぁー! 俺は!!!!」
「もうやめようよ! お兄ちゃん」
少年が叫ぶのと同時に奥の物陰から、数人の子供達が飛び出してきた。
見た目が少年と同い年くらいの子もいるし、その少年より一回りほど小さな子もいる。
「お、お前ら! 出てきちゃダメって言ったろ!」
少年は、燈真そっちのけで子供達を静止に向かう。
「お兄ちゃん、この人達は悪い人じゃないよ……」
「し、しかしなぁ……」
「多分……」
ズコッ
「お、お前なぁ……援護するならせめて自信を持って……」
「だって……あんな人達、僕知らないもん、でも知らない人をすぐに悪い人だって決めつけるのはいけないことだよ!」
子供らしい純粋な意見だが、ごもっともである。
「………ふぅ」
燈真が呆れた顔をして癒美の元へと戻って行く。
「燈真さん?」
「……後は任せた、俺は行く……」
「りょ、了解です! ありがとうございました」
そうして燈真はまたどこかへ行ってしまった。
「どうします? 翔平さん」
「い、今のうちにエスケープが無難っすかねー?」
「そうですね、それじゃ!」
スタタタ
「あ、おいこら! まて……」
「行っちゃった……」
癒美達はなんとか逃げ切った。
「おっとっとぉ!」
「はわ! 大丈夫ですか? 司さん」
岩が転がる足元が不安定な坂道を登っている最中、バランスを崩して転びそうになった司をアリスが手を伸ばして支える。
「すいません、大丈夫です」
「多分もう少しでこの山を抜けられると思います、頑張りましょ!」
「山田ー、ヘルプ! おんぶして」
「まったくしょうがないな……」
「冗談! 冗談! そこまで俺もひ弱じゃないよ、代わりにカメラ頼むわ」
「了解」
そう言って正道は、カメラを山田に手渡した。
「よぉーし、司! 気合い入れてくぞー」
「いや正道さん絶対バテるでしょ! やめとけやめとけ」
「ペース上げますか?」
アリスが涼しい顔で訪ねてきた。
「あ、大丈夫です……調子乗ってすいやせんでした」
「は……はい」
こうしてセティア一行と正道と愉快な撮影隊は山を越えたのであった。
次回 城下町
次も俺達の活躍見ていてくれよな!
明けましておめでとう