守衛隊加入
「と言うわけだ、まだ組織の奴らには謎が多い、そもそも異術石を人工で作るなどと奴らの存在を知るまでなら絵空事のはずだった……だが奴らはそれを成功させたんだ」
会議室でゾルダンは語る、あの石がなんなのかを、あの組織がなんたるかを。
「この石が自然のものである事はまぁ、わかっていた、実際私が手にした時この石も、花畑に落ちていたやつだしな……問題はこれがどこから来たかだ」
セティアがゾルダンに質問を投げ掛ける。
「おおよその検討は着いている、空からだ……この石がやって来たのは」
「隕石……という事か」
まとめると、この強大な力を持つ異術石は宇宙からやって来て、それを人工で再現に成功した組織がよからぬ事を企んでいる。
ということだろうか……
「それともう一つ、さっきの奴らとの戦いで確信した事がある」
「石の力を使うと疲弊すると言う事か?」
「それもそうだが……セティア、君の石の力はなんだ?」
「氷……か」
「そうだ、そして私が炎、メルスは草木の力を借りたり人の治癒能力を向上させたりできるから、自然の力と言うのが良いだろう……では、今回襲撃に来た術士のレストとドフレーの石の力を覚えているか?」
「潔癖と……ストレス……なるほど」
「そうだ、私達の力は自然を利用した力だが、奴らの石の力は、人間に関連した力ばかりなんだ」
「人工だからか……」
「どうだろうな、まぁ現時点でわかっている事はそれくらいだが……おい、そこのお前! 会議中に寝るな」
「あ、アレックスさぁ~ん」
メルスがアレックスの肩をゆさゆさする。
「………はっ! おぉ、すまねぇ……退屈な話だったんでつい」
「つまみ出してくれて構わない、私としてもその方がスッキリする」
「お……おい勘弁してくれよセティア……で? ゾルダンさんよぉこの話をして俺達にどうしろって言うんだ?」
「一応話は聞いていたようだな……単刀直入に言う、セティア! アレックス、君たち二人を守衛隊に迎え入れたい」
ゾルダンは机に手を置き前のめりになって話す。
「おいおい、いいけどよセティアはまだわかるとして俺もか? 俺は石なんて持ってねーぜ?」
「それは俺もだよアレックス君、なんだ? 最強の戦士たる君が臆病風かい」
エルトアが挑発する。
「んなことねぇーし! いいぜ俺にまかせとけ、セティアも来るよな? お?」
「……わかった、ここまで乗り掛かった船だ、私の故郷の平和のためにも、私は剣を取ろう」
「決まりだな、歓迎しよう我が同志たちよ」
セティアとアレックスは、守衛隊に加入することになった。
「して、これからどうするんだ? ゾルダン」
「正直このまま、奴らのアジトに特攻しても勝ち目はないと思っている、もちろん我々の力不足もあるのだが、まだまだこの人数では不安なのだ」
「そうですね……組織の人達が何人態勢でアジトを守ってるのかの見当も付きませんし、仲間は多い方がいいです」
ゾルダンの意見にメルスも賛同した。
「そこでこれから私達はロッサム国王に会いに行こうと思ってる」
「………!」
「国王様に……」
場の空気が一瞬静かになった。
「国王様が忙しい方であるのは十分にわかっている、だがこの問題は、守衛隊個人でなんとかできる物ではない! ほんの少しでも国が協力してくれれば……」
「……私はゾルダンの意見に賛同する」
セティアが口を開いた。
「俺はセティアに着いていくぜ、国がどうとかそういうのはわからねーけどな」
「勿論ゾルダンの意見に異義はないさ、ただ一つの組織の壊滅に国が協力してくれるかどうか……」
「案ずるな、エルトア……もう被害は出ている、危惧する声があるのならば国王様もないがしろにはしないはずだ、大事なのは声を上げる事だ」
ゾルダンの熱弁により、皆の意見は一致した。
「でもゾルダンさん、私達が離れてシーガルの町は大丈夫なんですか?」
メルスが心配そうに訪ねる。
「私もそれは心配している、だが奴らの狙いは異術石のはず……この町に異術石を持つものがいなければ、むやみに手を出して四方からヘイトを向ける事もしないだろう」
「………もはや希望的観測ではないか」
セティアは少し困惑した。
「この町には少しの辛抱をしてもらうことにしよう、俺としても心苦しいが、この行為が平和に繋がると信じて」
エルトアは、目をつむり胸に手を当ている。
「出発は早めが良い、今から準備にとりかかる」
ゾルダンの話によるとロッサム城下町は、山を一つ越えた先にあるらしい、そこそこ遠出になるが山を越えさえしてしまえば、後は平坦な道だそうだ。
「影山……今ロッサム城下町に一番近い場所にいる撮影班は?」
「えっとですね~……B班です」
向井達は、望遠レンズで建物の外から撮影している、さすがに部屋に入るわけにはいかないので考えうる最善の方法を模索した結果である、時には屋根の上から撮影するなんていうこともあるらしい……アニメカメラマンは過酷なのである。
「了解、すぐ連絡を入れてくれ先回りして欲しいからな……それと神崎、襲撃が来る前のあの時会議室の撮影はしてあるよな? 撮影舞台すら撮れていれば合成でなんとかなるからな、俺からしたらそれも品質が落ちるからあまりやりたくないが……」
「……へ?」
「あー、そうかドリンク飲む前だったからお前寝てたんだったな……」
俊介は頭をかかえたが、こんな事で泣いていたら神崎の面倒など見れんとばかりに冷静であった。
「仕方ない、俺がなんとかしておく……」
「向井さーん、B班への連絡完了でーす」
「ありがとう、さて……このままいくと俺たちは山登りをしなきゃいけなくなるわけだが……」
「……」
「神崎、もう眠いか?」
「……はい」
「しょうがない、そこのシーンは正道に任せるか……D班に任せてもいいが……いや、最終手段か」
「向井リーダー……なんでD班に任せたくないんですか?」
「あまりあいつと話したくない……きっと、いや確実に説教される」
「燈真さんとは話せるのにです?」
「勘違いしているようだが、俺はあいつと喧嘩をしたわけじゃない、あいつの事は俺より癒美に任せた方が良いと思ったからちゃんと話合って追い出したまでだ」
「丁寧なんだか暴挙なんだか……」
「………zzz」
「正道への連絡は俺がしておくから影山、悪いが急遽車を手配してくれ」
「了解でーす」
こちら正道一行
「え? 山登りのシーンを、OKわかった」
「俊介さんはなんと?」
「ロッサム城下町に行く途中の会話を撮影して欲しいだとよ」
「あー、俊介さんのメンバーじゃ山登りは厳しそうですもんねー、いやまてよ……アリスさんが一緒で大丈夫なんでしょうか?」
司が心配そうな顔をしているが……
「山登りですか? 昔お父さんとよくしてましたね、高山にしか自生しないお花もたくさんあるので……」
この少女はそこらの男より頼もしい存在であった。
次回
電光の燈真
次も俺たちの活躍見ていてくれよな




