守衛隊員ゾルダン
「ようこそ我が都へ、広いから迷わないでくれよ」
「おぉー、噂には聞いていたが本当に広いなぁー」
「無駄に広い所くらいしか取り柄はないが、まぁ……子供の遊び場には困らないさ」
「すげー、武器屋なんて俺初めて見たぜ」
アレックスは、初めての光景に少しはしゃいで勝手に遠くに行ってしまった。
「ハハハ……元気が良い人だ……」
「あいつのことは、放っておけ……用があるのは私の方だろ?」
「ま、まぁそうだな……こっちだ」
ゾルダンに案内され、セティアは町の中の教会のような建物にたどり着く。
「ここだ、この中に守衛隊の仲間もいる」
「…………」
ゾルダンは体をセティアの方に向ける。
「君に協力して欲しいんだ……あの組織を放って置いたら大変な事になってしまう」
「まだ私にはわからないことだらけだ……この石も、組織も、そして貴方の事も……私が信じるべき者は、私が決める」
「なら、改めて自己紹介した方がいいな、私の名はゾルダン、君の連れが言っていたように王族直属の守衛隊の一人だ、私はそのリーダーを担当している」
「まて、守衛隊がなんなのかはいまいちわからないが、王族直属ということは王様の護衛もするのだろう? そんな人間が城を離れてほっつき歩いていていいのか?」
「王族の護衛をする時もあるにはあるが、守衛隊は王様の命令で各地に派遣されることがほとんどだよ、城の護衛は城にいる者達でやればいい」
「町直属の守衛隊はいないのか?」
「そんな戦力があるなら我々としても安心だが、無理だね……戦える人間なんて少数派さ……それに」
「……」
「俺がこの町を守るんだ、だからここの勤務地を希望した……よくわからない人間にやらせるより自分で守っていた方が安心だろ?」
「なるほど……貴方の誠実さはわかった」
「とりあえず、話だけでも聞いてくれるかい?」
「あぁ」
「向井リーダー、主人公が建物内に入りましたぁー」
「了解! 影山行けるか?」
「少しお待ちをぉー、もう少しで結果がでますでーす」
「…………zzz」
「神崎! もう少しだから起きてろ、外で寝るのは色々な意味でダメだ、せめて屋内で……」
「……はぁい」
「はぁーい、結果出ましたぁー! 建物内の方が安全でぇーす」
「よし! 神崎……立てるか?」
「なんとか……」
「寝ようが、喚こうが、カメラだけは持ってろよ」
「神崎ちゃんが喚いたところ見たことないですけどね……」
そしてセティアは、この建物の一室に案内された。
「皆の者、いるか? 客人を連れてきた!」
「客人? はて……その用なご予定はなかったはずでは」
ゾルダンがドアを開けた部屋には、なんというか……魔術師の用な格好をした緑髪の女性がソファーに座っていた、どうやら読書の途中だったようだ。
「緊急だ、守衛隊のメンバーをここに集めろ」
「そう焦らない、お客様はこの方ですか?」
「そうだ、挨拶は後でまとめてするから今は早く皆を揃えてくれ」
「よくわかりませんが……承知いたしました」
そう言って彼女は、部屋を出ていった。
「好きに座ってくれ、大丈夫……私はマナーに疎いほうだから」
気楽にしてくれ、をそんな言い方で表す人間も珍しい、きっと彼も緊張しているのだろう。
言われるままにセティアはゾルダンの向かいのソファーに座る。
「今日は、みんな町にいるはずだからあまり待たせる事はないと思うが……」
すると……扉の向こうからドタドタと足音が聞こえた。
バタン! と勢いよく扉が開かれると、そこにはさっきの女性が息を切らしながら立っていた。
「ゾルダンさん! 大変です」
「どうした?」
「町の西門にて、組織と思われる男三人と女性一人がエルトアさんと交戦中! 至急支援願います」
「なんだと! 恐らく男三人はさっきの奴らか……」
「行くのか?」
「あぁ、セティア君はどうする?」
「私もいこう……」
「よし、だが戦闘は私に任せてくれ、おそらく術士がいるだろうしな」
「わかった……」
そして三人は部屋を飛びだし、西門へ向かった。
「起きろ神崎! ここから戦闘シーンの撮影だ、寝たら死ぬぞ」
「なんでよぉ……屋内なら寝て良いって言ったじゃないですかぁ……」
「良いわけねーだろ」
「仕方ない……影やまぁ、あれある?」
「ありますよー、はい目覚ましドリンク」
「ありがとぉ」
そう言って神崎は、ドリンクを一気に飲み干した。
「はぁー、やっぱりこれがないときついわ……」
「ほら、ゴミよこせ早く行くぞ!」
「はぁーい……」
「我らの道行きに幸あれ」
俊介一行も西門に向かうのであった。
次回
組織との対決
次も俺達の活躍見ていてくれよな!