C班
「で……あいつらどこにいるんだ?」
「居場所聞いておかなかったの!」
「いやまさかこの町がこんなに広いと思わなくてさー」
「いやわかるだろ! 話の流れからめっちゃ広いことは、予想できたことでしょーが」
司くんが手を大きく広げてプンスカしている。
「うーん、どうしたらいいかなー?」
「まったく……トランシーバーと携帯があるでしょ?」
「あ、その手があったか! さすが司くんは頭が良いなぁ……」
司の冷めきった眼差しを受けながら、正道がトランシーバーを取り出す。
ちなみに、我々アニメカメラマンの連絡手段は、特殊な電波で通じる携帯とトランシーバーの二種がある、なぜ二種類あるのかは知らん、二つあった方が便利だからだろう。
「あ、あ、こちらA班リーダー野田正道、応答せよ、応答せよ」
※正道は携帯をつかっています。
「もしもし……C班リーダー、向井俊介だ」
「俊ちゃんおひさー、今どこにいるの?」
「今、お前の後ろにいるよ」
「いや怖えーよ!」
そう言って正道が後ろを振り向くとそこには……
「まさか、お前にまた会う日が来るとはな……」
「うわぁーーでたぁぁぁーー!!!!」
「し、失礼な! 相変わらずイラつくやつだ」
紹介しよう、この男は向井俊介、俺がS級アニメカメラマンになる前に所属していた班のリーダーである。
そう、俺は少し前まで、司と俊介の三人+源蔵さんと仕事をしていたのだ。
そして、俊介は途中でリーダーを辞めて俺と同じ班から抜けた、別に喧嘩をしたわけではない、俊介が優秀過ぎて、S級アニメカメラマンの資格を取ったからである。
そして、俊介が抜けた後は俺が班のリーダーになった、そろそろもう一人くらい誰か俺の班に人が入るかなー? と、思っていた頃にS級アニメカメラマンの話が俺の元にきたのである。
「今回の撮影部隊のメンバーリストにお前の名前がしかもリーダーの欄に書いてあったから、目を疑ったが……本当にお前が……」
「いやぁ、俺も不本意なんだけどね……でも久々の再会ができて嬉しいよ」
「そうだな、よし撮影交代だ、はやく休憩に行け」
「お、おい……」
「あちゃー、やっぱ変わってませんねぇー俊介さん」
俊介は、例えるなら司をもっと真面目にして冗談を通じなくさせたような男である。
当然言い方もきつくなるときがあり、聞いた噂によると何人か俊介の影響でC班を離脱した人がいるらしい。
俺や司は長年のよしみで気にしてないが、間違いなく人に好かれるタイプではないだろう。
「つれないこと言うなよ俊ちゃん、ここは少し交流会といこうぜ?」
「あまり時間に余裕はないぞ?」
「ね?」
「……とっとと済ませろよ」
ツンデレ俊ちゃんである。
「やぁC班の皆さんこんちわ、A班リーダーの正道です」
「司です」 「護衛担当の山田だ」
「アリス……あ、私は助っ人? でして……」
「………私は神崎朱嶺です……おやすみなさい」
「わたしは、影山魅月よろしくです」
どっちも女の子じゃねーか!
「俊ちゃん、お前……いつのまにそんな趣向に」
「違う! ちょっと前まで俺以外の男もいたんだ! でもな、そいつは、何度注意しても好き勝手ほっつき歩くから解雇したんだ」
「なーるほど、ていうかこの娘達って強いの?」
「あんまし……あいつが離脱する前は、いざ荒事になってもいくらか安心だったが……今じゃ頼れるのは、魅月の占いくらいか? まぁ、それも戦闘を回避するという意味での話だがな」
「貴女占い師?」
「はぁい、正道さんでしたっけ? 貴方……運が良いとよく言われるでしょ? オーラが出てますよ」
「神崎にいたっては、もはや数会わせ……ま、雑用としては優秀だがな……」
酷い言いぐさだ、まぁ俊ちゃんだし仕方ない。
「おーい、朝だぞー! なーんてな」
眠そうな神崎の前で、正道が手を目の前で振る
「……私は、夢の世界の住人ですよ? 現実の世界では、力を温存しています」
ここは、アニメの世界だけどな……
「そうか、ご苦労」
同じ目線に合わせつつ正道は棒読みで応答する。
「その顔は信じてませんね? 貴方も向井リーダーと同じ……」
「いや、信じるとも!」
「本当に?」
「イェース」
「なら……次に会ったとき……貴方の口から言ってください」
「な、何をだい?」
「ふぁ~ぁ……なんでも良いです、貴方が覚えていたという証明ができれば……なんでも……おやすみなさい」
「こんな所で寝たら風邪引くぞ……」
「正道さぁん、正道さん」
魅月が無邪気に正道の袖を引っ張る。
「何だい?」
「今、貴方を未来視してみました、出会い運がかなり良好ですね、近々いい出会いがあるのかもです」
「え……カードとか水晶玉とか使わないでわかるの?」
「運気の流れとかなら見た方が早いのです、カードとかを使う場合は、例えるならどっちが正解でしょう? とかそういう時です」
「あー、なるほど……わかんね」
「もういいだろ、俺達は仕事に戻るぞ」
「あ、ありがとな俊ちゃん」
すると、俊介はすれ違い様に正道の肩を掴み……
「もしもの時は俺を呼べ……必ず守ってやる」
「うん……」
俊介とその一行は、主人公を探しに歩いていった。
「安心してくれ、俊ちゃん……俺にはもう仲間がいるからさ…………な、そうだろ?」
正道が、後ろを振り向く。
「ひゃあ! は、はいぃーー」
「A班のメンバーいねぇぇー!」
「あ……お二人ともお手洗いに行くとか……」
アリスが辺りを見回しながら話す。
「ま、まぁ……休憩中だし仕方ないか……あ、そういえば、アリスはこの後どうする? ここからお店に戻るのもあれっちゃあれだけど……」
本音を言えば、撮影が終わるまでずっと着いていて欲しいくらいだが、何せアリスは、ただの花屋の少女のため(多分俺らより強いけど)いささか心配である。
「わ、私は大丈夫です!」
「そ、そうか……俺達も慣れない勤務で色々迷惑かけちゃってたら悪いと思って……」
「私、こう見えても精神力に自信がありますから」
「じゃあ、俺達のメンタルが潰れた時はよろしく……」
「だめですよ、弱気になっちゃ……自信が無さそうに見せるのは口調と顔まで! 言葉にしてはいけないんです」
つ、強い……
「そうだな、気を付けるよ」
「ま、そういう私も慣れない環境だとあわあわしちゃうんですけどね、お互い精進です」
この娘本当にアニメ本編で脇役なのか?
次回
守衛隊員ゾルダン
次も俺達の活躍見ていてくれよな!