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PISA2018調査国際結果を読解してみる(2)

さらに詳しく見ていく。


2018年調査国際結果の要約

http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/03_result.pdf

”PISA 調査の概要


 ▶参加国が共同で国際的に開発し,実施している 15 歳児を対象とする学習到達度調査。

 ▶読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーの 3 分野について調査。


内容

 ・PISA 調査は,義務教育修了段階の 15 歳児が持っている知識や技能を,実生活の様々な場面でどれだけ活用できるかを見るものであり,特定の学校カリキュラムをどれだけ習得しているかを見るものではない。

 ・思考プロセスの習得,概念の理解,及び各分野の様々な状況の中でそれらを生かす力を重視。


各分野の定義


 ・読解力は,2009 年から 2015 年調査まで用いられた定義が次のように変更されている。なお,「書かれた」という語が削除されたのは,問題がコンピュータ使用型に移行したことによる。また,信ぴょう性や著者の視点を検討する能力を把握するため,テキストを「評価する」という用語を追加した。

 ・自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,社会に参加するために,(書かれた)テキストを理解し,利用し,()()し,熟考し,これに取り組むこと(取り消し線:PISA2015 から削除された部分,下線:PISA2018 で新たに加えられた部分)。

(注:それぞれ(かっこ)と傍点で表現)

 ・数学的リテラシーは,数学的リテラシーは,2012 年調査や 2015 年調査と同じく,次のように定義されている。

  ・様々な文脈の中で数学的に定式化し,数学を活用し,解釈する個人の能力。それには,数学的に推論することや,数学的な概念・手順・事実・ツールを使って事象を記述し,説明し,予測することを含む。この能力は,個人が現実世界において数学が果たす役割を認識したり,建設的で積極的,思慮深い市民に求められる,十分な根拠に基づく判断や意思決定をしたりする助けとなるもの。

 ・科学的リテラシーは,2015 年調査と同じく,「思慮深い市民として,科学的な考えを持ち,科学に関連する諸問題に関与する能力」と定義付けられている。なお,科学的リテラシーを身に付けた人は,科学やテクノロジーに関する筋の通った議論に自ら進んで携わり,それには科学的能力コンピテンシーとして,「現象を科学的に説明する」「科学的探究を評価して計画する」「データと証拠を科学的に解釈する」を必要とする。”



 PISA2018、つまり国際的な定義では、「読解力」が(紙の)文字から、コンピュータの文字へ、信ぴょう性や著者の視点を「評価する」という用語が入るようになった。


”(2)読解力の平均得点の国際比較


 ・読解力の平均得点は,(略)日本の得点は 504 点であり 15 番目に高い。OECD 加盟国の中では 7位から 15 位の間,参加国全体の中では 11 位から 20 位の間に位置している。

 ・「情報を探し出す」の平均得点は,日本の得点は 499 点であり 18 番目に高い。

 ・「理解する」の平均得点は,(略),日本の得点は 505 点であり,13 番目に高い。

 ・「評価し,熟考する」の平均得点は,(略),日本の得点は 502 点であり,19 番目に高い。


(3)読解力の平均得点の経年変化


 ・日本においては,2018 年の得点は,2003 年及び 2006 年調査を除き,2000 年,2009 年,2012年,2015 年との比較において 12 ~ 34 点低く,統計的な有意差がある。

 ・読解力が中心分野であった前回の 2009 年調査の得点より 2018 年調査の得点の方が高く,その差が有意であるのはエストニア,アイルランド,イギリス,シンガポールである。2018 年の得点が統計的に有意に低いのは,日本以外に(略)


(6)生徒の背景と到達度

 ・「読書への関わり」に関する五つの項目のうち,日本は「(2)読書は,大好きな趣味の一つだ」及び「(3)本の内容について人と話すのが好きだ」について「まったくそうだと思う」「そうだと思う」と回答した割合が OECD 平均よりも多い。また読解力の平均得点との関係を見ると,この 2 項目については、(略)「肯定」したグループの方が,(略)「否定」したグループよりも統計的に有意に読解力の平均得点が高い。

 ・「趣味として読書に費やす時間」について,日本は五つの選択肢の中で「趣味として読書はしない」「1 日 31 分~ 1 時間未満」と回答した生徒の割合が OECD 平均よりも多いが,全体的に OECD 平均との差は小さい。また,読解力の平均得点との関係を見ると,日本は「1 日 1時間~ 2 時間」と回答した生徒の平均得点が最も高い。

 ・「読む本の種類・頻度」に関する 5 項目のうち,日本は「(1)雑誌」「(2)コミック(マンガ)」「(3)フィクション(例:小説,物語)」の 3 項目で「月に数回以上」読むと回答した割合が OECD 平均よりも多い。また,読解力の平均得点との関係を見ると,日本は「(2)コミック(マンガ)」「(3)フィクション(例:小説,物語)」「(4)ノンフィクション(例:伝記,ルポルタージュ)」「(5)新聞」の 4 項目において,「月に数回以上」読むと回答したグループの方が,そうでないグループよりも読解力の平均得点が統計的に有意に高い。

 ・「デジタルでの読みの活動」に関する 6 項目のうち,日本は「(2)ネット上でチャットをする(例:LINE)」「(3)ネット上でニュースを読む」「(4)ある特定のテーマを調べるためにネットで検索する」の 3 項目について,「月に数回以上」すると回答した生徒の割合が OECD 平均よりも多い。また,読解力の平均得点との関係を見ると,日本は「(1)E メールを読む」「(2)ネット上でチャットをする(例:LINE)」「(3)ネット上でニュースを読む」「(4)ある特定のテーマを調べるためにネットで検索する」「(6)生活情報をネットで検索する(例:スケジュール,イベント,ヒント,料理のレシピ)」の 5 項目について,「月に数回以上」すると回答した生徒の得点が「しない」と回答した生徒の得点よりも統計的に有意に高い。


 ”「読書への関わり」に関する五つの項目のうち,日本は「(2)読書は,大好きな趣味の一つだ」及び「(3)本の内容について人と話すのが好きだ」について「まったくそうだと思う」「そうだと思う」と回答した割合が OECD 平均よりも多い。また読解力の平均得点との関係を見ると,この 2 項目については、(略)「肯定」したグループの方が,(略)「否定」したグループよりも統計的に有意に読解力の平均得点が高い。”


 ”「(2)コミック(マンガ)」「(3)フィクション(例:小説,物語)」(略)「月に数回以上」読むと回答したグループの方が,そうでないグループよりも読解力の平均得点が統計的に有意に高い。”

 これは、「マンガやファンタジーとか読んでるから云々」とかいうちまたの意見とは全く別の結果だ。


 また確かに、短文であろう「(2)ネット上でチャットをする(例:LINE)」の割合はOECD平均より多い。しかし、twitterで連続投稿して長文を書くのは日本人くらいだとも聞いたことがある[要出典]。

 そして、さらに重要なことに

 ”「(2)ネット上でチャットをする(例:LINE)」(略)と回答した生徒の得点が「しない」と回答した生徒の得点よりも統計的に有意に高い。”


 おいおい、「SNSのせいで読解力が低下した」という話はどこから出てきた? 全く逆のことが書いてあるぞ。この調査結果のどこをどう読解したら、そんなことが書けるんだ。


 チャット以外にも”「(3)ネット上でニュースを読む」「(4)ある特定のテーマを調べるためにネットで検索する」(略)もOECD 平均よりも多い。”そして、”「(1)E メールを読む」「(2)ネット上でチャットをする(例:LINE)」「(3)ネット上でニュースを読む」「(4)ある特定のテーマを調べるためにネットで検索する」「(6)生活情報をネットで検索する(例:スケジュール,イベント,ヒント,料理のレシピ)」の 5 項目について,「月に数回以上」すると回答した生徒の得点が「しない」と回答した生徒の得点よりも統計的に有意に高い。”


 読書量云々もさることながら、こういう行動もまた、読解力に関係するらしい。前話の”小論文の神様”には、スマホで遊んでいるようにしか見えないんだろうけど。



”(7)国語の学習環境”

 引用は控えるが、一言で言えば、「国語教師がクソだと生徒の読解力の点が低い」といった印象。


 この中に、「統計的に有意に高い」という表現が多用されていることにお気づきだろうか?

「個人の体験・感想・意見」と「統計的に有意に高い」の違いがわかるには、前提として「数学・科学的リテラシー」が必要だ。そちらは高得点なわけだから、問題ないはず。

 文系・理系の問題ではなく、例えば法学部では「法的に云々」、史学科では「一次史料が云々、史実として云々」みたいな考え方があると思う(他はよく知らない)。

 超ざっくり言えば「裏付けがあるかないか」。


 歴史学者が最新の研究を一般向けの本にすると、「(司馬遼太郎とかの歴史小説に書いてある)史実と違う」とかいちゃもんつけてくる人がいるらしい。



 ここまで読んで、「おっしゃチャット(twitterやLINE)しまくればいいのか」と早合点してはいけない。

 「統計的に有意に高い」というのは、関係があることを示すが、どちらが原因でどちらが結果かは示さない。こういう堅苦しい書き方をしてるのは、その点をはっきりするためだと思う。

 

 チャットは結果で、もともと読解力の高い人が、長文も書ける人が、短文チャット「も」してるのかもしれない。あるいは、チャットが原因で、文を書く習慣が全くない人よりは、短文チャットでも少しは練習になって、高得点になるのかもしれない。それがわかるにはまた別の調査が必要だ。


 個人的には、「(1)E メールを読む」「(2)ネット上でチャットをする(例:LINE)」「(3)ネット上でニュースを読む」「(4)ある特定のテーマを調べるためにネットで検索する」「(6)生活情報をネットで検索する(例:スケジュール,イベント,ヒント,料理のレシピ)」は、従来は本読んだり辞書引いたりしていたのが、ネット上の情報に変わっただけに思える。「チャット」に相当するのは、授業中にノートの切れ端とかに「先生(あだ名)のハゲ」とか、くだらない短文が行き来してたのに似ている。


 ところで、おっさんが学んだ昭和時代の国語は、小説・情緒的表現を偏重するきらいがあった。

 こういった調査データとかも読むと面白いんだけど。


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