02 ヨルノイクサ
__深夜2時
丑三つ時と言われるこの時間帯は妖が行動しやすい。
チリン…チリン…
暗闇にまみれる黒猫様は鈴の音を鳴らしながら、静かかつ優雅に足を進める。
「…カナメ。あそこだ。」
黒猫様の指すほうを見ると一つの家があった。
庭は小綺麗にしてあり、見事なもみじが月の光に照らされてまた違った雰囲気を醸し出している。
ガチャ…
黒猫様が近づくと一人げにドアが開く。
チリン…チリン…
家に入るとかなりの闇が広がっていた。
ただの闇ではない。妖が残す残り香のようなものだ。
「黒猫様、2階のようです。」
「そのようだな…。いくぞ。」
チリン…チリン…
家中に鈴を響かせるように黒猫様が歩く。
(すごい闇だ。)
2階は1階のものとは比べ物にならないくらいこい闇が広がっている。
しかもこの闇、小さくではあるが動いているのだ。
だんだん依頼者に近づいている。なんとなくそう感じさせる。
チリン…。
鈴の音が止まる。
「カナメ、この部屋だ。準備はいいか?」
小さく息を吐き出した。
「はい。」
キィィ…
鈍いドアの音。
先ほどよりもさらに濃い闇。
うっすらと見える部屋はシンプルではあるが可愛らしい小物がちらほら見える。
ベットに横たわる少女。
その上には…
「ほら、見つけたぞ。」
黒猫様が獲物を見つけたかのようにニヤァと笑う。
「…オマエ…ダレ…クルナ…」
妖だ。真っ黒なシルエットに紫色の目だけが見える。
「貴様を払いにきたのだこのバケモノ。」
黒猫様の綺麗で透明な目が光る
俺でさえも怖いくらいに。
もう待ちきれないというように荒い吐息が聞こえる。
「…チガウ。…チガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウ!!!!!!!!」
闇が一気に広がり、妖が巨大化する
何度経験してもこの瞬間は好きになれない。
闇にすべてを呑まれる。
「「「「バケモノジャナイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
「「カナメぇぇぇ!!!!今だ!!!」」
主に名を呼ばれた時、ここからが俺の仕事だ。
「闇に囚われし妖よ。我が主の名で貴様を永久の地獄に封印する。」
チリン!!!!
「ガァァァッ!!!!」
一瞬だった。
黒猫様が妖に飛びつき、周りの闇が瞬時に消えた。
「依頼完了…。」
「だな。」
そういって黒猫様はぺろぺろとかおをあらう。
「そんじゃぁ帰るか。」
「はい!」
そう言って部屋を出る…
「…誰…ですか…?」
はずだった。
「えっ。」
先程まで悪夢にうなされていた少女がこちらを見ていた。