いちゃいちゃ、まったり……と?
サクサクト進むけど、わりと重要?
一週間もたつと、ここでどう過ごすかの形も出来てきた。
ゴドーは朝、着替える時に男になるか女になるか決めて、その後、家の周りにあるご神木こと生命の樹木に、朝の祈りをして過ごす。
俺は分身達とまずはくじ引きだ。
アタリはゴドーの朝の祈りを観賞。
ハズレは朝ご飯作りである。(同時に、昼と夜も作るけど)
片付けはゴドーが担当。魔法で一瞬なので、それだけでは不満らしく、三時のおやつもゴドーが担当である。
俺はその様子をニマニマしながら見守っている。
あとは散歩に行ったり、海に行ったり、食ったり食われたり。
俺が魔道具作ってたりするとゴドーは俺の背中を背もたれ代わりにし、シムが用意した日本の童話を読んでたりする。
そこからダンゴって何? とか、リンゴって何? とか。ガラスの靴って履いたら割れないか? なんて話になったりもする。
二週間目には、例の新素材も出来たので、それを使っての洋服作りを始めた。
魔力に反応して、指定されていた二種類に変形する。
これで最低でもブラをタンクトップに、女性用ショーツをボクサーパンツに出来る。
まだ自由自在と行かないのが悲しいが、これで、女から男になったゴドーを変態にしなくてすむ! と俺とシムは意気揚々と服を作っていく。
「……なぁ、エド、コレってもしかしなくても凄い素材だと思うのだけど……。これ、全部私の洋服に使うつもりか?」
「当然でしょ?」
「……いや、でもなぁ」
「あのね、ゴドー。俺達にとってゴドーの洋服に使えるかどうかの価値しか無いから」
「……そう、か」
「ん。今は大人しく、俺とシムの着せ替え人形になってよ」
「はぁ、分かった。……確かに、どうやら私は、私が思ってるよりも愛されているらしい……」
そんな言葉がゴドーの口から出てきて、俺は勢いよく振り返る。
「当然でしょ?」
ゴドーの言葉が嬉しくてそんな言葉を笑顔で返してキスをすると、ゴドーはとても複雑そうな顔をしてたが、最終的には笑ってくれた。
そうして、ゴドーの性別に合わせて、セットコーデが自動で切り替わる服が十着ほど出来た。
コレに関してはもうちょっと自由自在に変えたいなぁ。
頑張れ、生命の樹木。さらなる素材を生み出してくれ。
三週目のある朝、お風呂入って着替えようとしたタイミングで、ゴドーの表情が不可解そうになって、そして、みるみる青ざめていく。
「ゴドー? どうした?」
「あ……、そ、れが……」
明らかに動揺している。
俺はゴドーの手を握り、頬に触れる。
ゴドーは俺を見て、視線を揺れ動かし、不安げな顔で口を開く。
「男に……戻れない」
「え?」
思わず聞き返したが、頭の中は呆然としていた。それからはっとしたのは、ゴドーの表情がさらに不安に青ざめていってから。
その時になってやっと、俺のせいでゴドーが不安になっているのだと気づいた。
「ゴドー。大丈夫だから。たとえ男に戻れなくても、あの時の様に怒ったりしないし、嫌いになったりしないから」
抱き寄せると、安堵の息がゴドーから零れてくる。
「すまない……」
「何に対して謝ってるんだよ。他に体調が悪いとかはない?」
ゴドーはしばし考えていた様だが頭を横に振る。
俺の方で鑑定しても特には理由らしきものが見当たらないが、シムの方では何かが分かったのだろうか。俺達に声をかけてくる。
『二週間ほど様子を見ましょう』
シム? 理由が思い当たるのか?
『これはマスターのみへの回答と先に報告します』
そう言ってシムは勝手に平常心と冷静を起動させ始めた。
つまり、ゴドーのために、顔に感情を乗せるなって事だろう。
『ゴドー様は妊娠している可能性があります』
!!
『その確認に一週間から二週間の時間が必要とします』
すぐにスキルで分かったりはしないんだ?
『受精はしても着床が長く続かず、妊娠できなかったという可能性がまだあるのです』
妊娠してるのに? 妊娠できなかった??
『今はまだ妊娠の前段階という事です。この段階から流れるという事もあり得るのです』
了解。分かった、ゴドーにぬか喜びさせないために、今は黙ってろって事ね。
『はい』
「とりあえず、シムが言うように二週間は様子を見よう?」
「……ああ……。…………嫌わないでくれ」
「嫌ったりしないって。たとえこのままゴドーが一生男に戻れなくても、俺はもうゴドーから離れるつもりはさらさらないよ」
「……ああ……。ありがとう」
涙をぽろぽろと流してゴドーは俺を抱きしめた。
俺もそのままゴドーが落ち着くまでずっと抱きしめた。
それからゴドーが不安にならないように、俺はずっとゴドーの傍に居た。
若干、うざくねぇかな? ってくらいには。
ゴドーは何度かスキルを使おうとしているようだったけど、俺はとりあえず、二週間はそのままでいよう、とそれを止める。
ゴドーはいいのか? っていう目で見てくるけど、俺はもちろん、頷く。
っていうか、そこまで追い詰めさせる事になるとは、反省である。
ゴドーは今日も俺の腕の中で、過ごしている。
「……すまない」
「どうせなら俺、ありがとうがいいなぁ」
あの日以前にも普通にゴドーと沢山触れあってきたし、一緒に過ごしていた。でもあの時はどちらかというと、イチャイチャしたいっていう愛情がメインの触れあいだった。
でも今は、不安を少しでも和らげたいっていう意味で、ゴドーは俺に触れている。俺の傍に居る。
「エドの言葉を信じていないわけじゃないんだ。ただどうしても……不安になってしまう……」
「うん。いいよ。何度でも言うから。ゴドーが喩えずっと女性だったとしても、離す気はないよ。ずっとここに居て。俺の手の届くところに」
ゴドーは頷いて、俺を抱きしめてくる。
俺も抱き返しつつ、キスをする。少しでも元気になれば良いと思いながら。
途中で言った方がいいんじゃないかって思いもしたけど、これで、ぬか喜びさせたらどれほど落ち込むか分からないので、とても口には出来なかった。
そして九日ほど過ぎた朝。
『ゴドー様の妊娠を確認しました』
シムがそう俺達に報告してきた。
「え?」
「お! 確定したか!?」
『はい。確認しました。マスターの鑑定の方にも出ると思います』
俺は促されるままゴドーを見る。確かに『妊婦』という文字が出てる。
「え? 妊娠?」
「そう、俺とゴドーの子!」
「……いや、しかし、私は……」
『前回農園に来た時に食べた『生命の樹木』の果実は覚えているでしょうか?』
「もちろんだ」
『あの果実により、あえて不完全として作られていたゴドー様の体は治療されてしまいました』
「…………じゃあ……」
「俺とゴドーの子供。黙っててごめんな。ぬか喜びさせたくなくて。あの時点だと、まだ確定じゃ無かったらしくて」
謝るとゴドーは頭を横に振り、俺に抱きついてきた。
言葉も無く涙を流すゴドーを俺は撫でてやりながら、良かったな。俺も嬉しいよ。と言葉をかける。
言葉もなく何度も頷くゴドーの顔は涙に濡れていたけど、久しぶりに見る笑顔があって、可愛いな。って思いながら口付けを交わす。
ゴドーさん妊娠。
さて、女の子か男の子か双子かはランダムアプリ様に任せるか。
明日は久しぶりに朝8時に予約投稿。
明日は有る意味何度も書き直した話……。




