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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
95/143

認められない心。認められる心。




「結婚?」

「そう。結婚」

「……それはつまり……。私がエドの妻になるという事か?」

「そうだよ」


 見上げた相手はどこかまだ呆然としている気がする。

 それ以外にどんな意味があるのか。……ん? おぉ、俺がゴドーの嫁になるという手もあるのか。いや、でも女性としてって言ったのだから、やっぱり俺が夫でゴドーが嫁だよな。なんて考えながらゴドーが言葉を理解するのを待つ。


「……胸、小さいけどいいか?」

「気にしてないから! 本当に!!」


 どんだけ気にしてるの!? 俺、そんなにがっつり見てた!?

『時空神トキミの時にはガッツリ見てました』

 あれはノーカンでお願いします!!


「いや、そもそも、ゴドー、そこまで小さくないよ?」

「でも、昨日……」

「昨日?」

「しなかったのは……、がっかりしたからとかじゃないのか?」

「ち・が・い・ま・す!!」


 くっ! いかんこのままでは俺のイメージが巨乳好きになってしまう!

『否定は出来ないと思いますが?』

 煩い。こういう時にそういう突っ込みはいらないって!

 たとえそれが、事実だろうが何だろうが、断固否定する!!


「だって、ベッドの上にわざわざ転移したじゃないか」

「あれは……。怒ってたから、たしかにがっつり抱いてやろうとか思ったけど、ゴドーにあんな風に嬉しそうにキスされたら、なんかどうでも良くなって。だから普通に、夜のデートがしたくなっただけで……。全然ゴドーが思ってるような事じゃない。ゴドーはデート楽しくなかった?」

「楽しかった。エドにあんな風に手を握って貰えて嬉しかった。女になって良かったって思った」


 あれっぽっちでそんな嬉しそうに笑うなよ。

 見上げた顔に浮かんでた表情に俺は苦笑を一つして、キスをする。


「なぁ、ゴドー。結婚してくれ。俺の全部をゴドーにあげるから、ゴドーの全部を俺にくれ。ゴドーの事、独り占めしたい」

「……エドがそれを望むのなら、私の全てをエドに捧げたいが、それは出来ない」


 ……う、まぁ、そうなるよな。


「私は太陽と月の依り代。そのお役目だけは……外せない。私は、二柱が必要とした時はこの魂も体も差し出さなくてはならない。だから、私がエドに全てを渡せるとしたら、この心ぐらいだと思う」

「……ゴドーが生け贄になる事なんてあるの?」

「ないとは言えない。その心構えだけは、私達は持ち続けなくてはならない」

「…………そんなの、嫌だ……」


 ゴドーを強く抱きしめる。

 嫌だ。帰したくない。

 そんな想いが一気に心を占める。

 俺がどれだけゴドーを好きか、ゴドーの身に染みたら帰ろうと思ってた。

 でも……。そんな話を聞いたら、帰りたくない。帰したくない。


「二柱が必要としていない時は、私はエドのものだ。好きなだけ独り占めしてくれ」


 言って、ゴドーも抱きしめてくる。

 違う。ゴドー違う。そうじゃない。俺が『嫌だ』と言ったのは、そっちじゃない。

 ゴドーの命を、生け贄になんかに使われるのが嫌なんだ。


「……ゴドーは、なんでそこで素直に役割を受け入れるかな……」

「そういう風に作られたから、かな」

「…………」

「エド? そんな顔をしないでくれ。あくまで心構えで、実際にはまだ一度も実例はないんだ」

「そうなの!?」

「ああ。もし、あるとしたら、拡大解釈で一例だけ」

「どんなやつ!?」

「誰も止められそうにない殺人鬼を止めるために、神を呼び出そうとして依り代が自ら殺人鬼の前に出て殺された、くらいだと思う。確か……、あれから神降ろしが始まったんじゃないかな?」

「そうなの?」

「うん。確かそうだったと思う。それまでは依り代といっても神の目や耳になるくらいだったはずだ」


 つまり、敵がいなければ基本的には大丈夫って事か?

『ちなみに、今のゴドー様の一例はルベルトが言っていた、エジュラ族の話だと思います』

 なるほど。


「それに、こう言っては誤解されそうだが、エドが居る限り、私はそう簡単に贄には使われないと思う」

「ん? ゴドーに何かあったら俺が大暴れするって認識? それならあってるぞ。間違いなく俺、暴れるから」

「……いや、そうじゃなく……。エドが悪事に走った場合、止められるのは二柱を降ろせる私になるだろうな、っていう意味だったんだが」

「ああ、前に、俺と闘いたくないって言って、俺に食われた日か。……ちなみに、あの時は俺の事好きだったの?」

「ああ……。当時は言えなかったが……。あの三日間は凄く幸せだった」


 そう言って俺をぎゅーっとまた抱きしめてすりすりってしてくる。

 くっ! 可愛い!!


 そんな想いと共に俺はゴドーを抱きしめて、キスをし、肩に頬を乗せて思う。

 あれ? 俺、結局、プロポーズ流された?

 いや、でもあれはOKという流れでの話だよな? ……うん。そうだ。そうだよな……うん。

 

悶々と悩み出した俺にゴドーは頬やら髪やらを撫でて楽しそうだ。

 ああ、そうだ。あともう一つ、絶対にしなきゃならない事があった。


「ゴドー、今度は男になれる?」

「分かった」


 俺は少しゴドーから離れ、ゴドーはまた男性に戻る。

 体伸び縮みして痛くないのかな、なんて思いつつゴドーを見つめる。


「俺さ、ゴドーの事」



 ------お前、ホント、女みたいだよな。

 ------実は、---と付き合ってるんじゃねぇの?

 ------うわっホモだー!


 脳裏に蘇るクソガキどもの声。顔はもう忘れたのに、言われた言葉だけは覚えてる。

 うるせぇよ。

 付き合ってねぇよ。お前らのおかげであの後お互い大変だったんだからな。


「どうした?」


 ゴドーが心配そうに覗き込んでくる。

 俺は口端を必死に上げた。

 笑え。こういう時は笑え。


 ぎこちない動きで頬が動く。ゴドーはそれを見て、一瞬眉を寄せて、俺の頬に手を置いた。


「どうした?」


 先ほどよりもずっと心配そうに見つめてくる。

 頬に置かれた手に、自分の手を重ねる。


「名前、呼んでくんね?」

「エド?」

「そう、それ。ゴドーに呼ばれるの俺、嫌いじゃない」


 俺はもう、エドだ。もう--じゃない。


「エド」


 俺を呼んで、頬にキスをしてくれる。唇にも。


「……俺さ、昔、女顔だったんだよ。それが理由でイジメまでは行かなくても、ちょっと友達にからかわれてさ。それが丁度、このくらいの時期からで」


 ツラツラと話し出す。ゴドーの瞳が俺を見つめてきて、その瞳に、胸が熱くなる。


「母子家庭で、家事は主に俺がやってて、それで……、確かに周り女ばっかりだし、女っぽい考え方をしてたかも知れないけど、でも、男が好きだった事なんて、一度もなくて」


 ゴドーの手を握る指に力が入る。


「それなのに、そん時の親友とデキてんじゃないかってからかわれて。気まずい思いしてさ、親友と距離出来て、友達無くしかけて、それで……、絶対男なんか好きになんねぇよって反発しまくってて、絶対好きになるのは女なんだって……。強く思っててさ……。だから、俺……。……認められなくて……。あの日、から、ゴドーの事、友達以上に思い始めて……、認められなくて。ゴドーが女だったら認められるのにってずっと心のどこかで思ってて。気づかないふりして、ヒューモ族なら、友達同士でもする事は普通で、だからそれに縋って」


 だんだん自分が何を言っているのか分からなくなってきた。

 耳に木霊するのは顔すら覚えてないやつらのからかいの言葉。

 うるさいうるさいうるさいうるさい。

 耳に残る声にそんな罵声を返す。

 お前らのせいで、無くしてたまるか。

 俺のために、ここまでしてくれたんだ。

 

 喩え、全てを捨てる事になっても。


「俺、ゴドーの事が、好きだ……」


 喩え、前世の人格(日本人)じゃ居られなくなっても、俺は、ゴドーを選ぶ。


「男、でも、女、でも……。ゴドーの事が好きだ。愛してる」


 震えて、途切れ途切れになった。でも。


「やっと言えた」


 告げる事が出来た。自分の気持ちを認めて、伝える事が出来た。大好きな人に。

 安堵から笑うと、ゴドーに唇を塞がれた。

 触れ合う舌から感じる熱。

 思わず笑う。


「俺を食べてぇの?」


 ゴドーさんもしっかり男ですなぁ?

 つい、からかうように言ってしまう。


「……いや……、我慢する」

「なんでだよ、しなくていいよ」


 言いつつ、俺はベッドへと転移する。

 二人分の体重を突然かけられたベッドは大きく軋んだ。

 その音もなんだかエロいなって思ってしまった。


 ゴドーを見上げて笑う。


「満足するまで食って良いよ。その代わり、満足したら交代な?」

「ああ。分かった。ありがとうエド」


 そんな言葉と共に、もう一度深く口付けをしあう。


 きしみ、悲鳴すら上げそうだった俺の心と体は、ゆっくりと、本来の位置へと戻っていくかのように、緩んでいく。

 無理矢理押さえ込んでいた、想いが、熱量が、何にも邪魔されず大好きな人へと向けられていく。

 それは、きっとヒューモ族ならではの幸福感だったのかもしれない。

 好きな人に好きと言える。たったそれだけで俺の中の何かが弾けるように、花開くように、溢れ出す。

ゴドーと初めてした時の衝動よりも、もっと強い何か。それが俺を浸し、満たしていく。


「愛してるよ、ゴドー」


 そう言うと、大好きで愛しい人が嬉しそうに笑う。なら、何度だって言おう。

 恥ずかしいとかそんな思いよりも、ゴドーが笑ってくれる方が、ずっとずっと、大事で嬉しい。


「私も愛しているよ、エド」


 そう言われたら、きっと俺も同じ様に幸せそうに笑っちゃうんだろうな。

 そう考えるとちょっとやっぱり、恥ずかしいかな?

 まぁ、ここは、お互い様って事で、キスでもして誤魔化そうか。






 体を起こす。

 あくびを一つして、伸びをする。窓から見える景色はどう見ても、真昼過ぎ。

 やべぇ、時間感覚、完全に無くなってる。


 ちらりと隣を見ると気持ちよさそうに寝ている女のゴドーがいる。

 布団をゴドーの肩までかけて、違和感に気づく。

 視点を切り替えて、確信した。


 俺、成長してる。え? いつから?

『睡眠を取った辺りからです』


 へぇーとそのまま第三者視点で俺は俺を見る。

 十八か十九と言った所だろうか。

『マスターにとって、結婚出来る年齢ですね』

 ……なるほど、納得した。


 俺はとりあえず、足先をゴドーに合わせてゆっくり寝っ転がる。

 …………僅差で俺が勝った?

『はい』

よし!!

 一人ガッツポーズを取り、上機嫌でゴドーの寝顔を覗き込む。

 俺の麗しの天使は今日も可愛いです~。

『マスター。ゴドーさまの衣服に関しては、先日作った約百着は、完全に無駄になる可能性がありますがよろしいでしょうか?』

 いいよ。分身の練習って思う事にするから。

 

 起こさないように気をつけながら、前髪を上げる。

 おでこ全開ゴドー、珍し~!


『では、生命の樹木に、新しい素材となる種子を放出させます』

 ほいほい。よろしく。


 キスしたら起きるかなぁ。でも、このおでこの魅惑には勝てないかもな~。

 んー。どうしようかなぁ。


『次に、ヒューモ族の隠しアビリティ『魅惑の芳香』についてなのですが』


 シムの言葉に、ゴドーの寝顔にと近づけていた顔が止まる。


 なんだって?

『ヒューモ族の隠しアビリティ『魅惑の芳香』について、です』

 隠しアビリティ?

『隠しアビリティです』

 え? どうゆう事?

『マスターの心と体のバランスが取れた辺りから、マスターから性フェロモンに似た分泌物が大量に放出されはじめました。この分泌物の効果や生産量はステータスに依存するらしく、また、一度生産されたものは体外に放出されない場合、体内に蓄積されるようです。現在、マスターが心と体のバランスを崩し始めていた頃に蓄積されていた分が大量に放出されています。けして農園から出ないでください』

 ……ちなみに出たらどうなる?

『元の世界に戻った場合、周りに居る全てのヒューモ族に狙われると思って貰っても構いません』

 了解です。絶対に出ません!

『試算では一週間程度で蓄積されていた魅惑の芳香が全て放出されます。その後マスターが一日で分泌する量を確認後、これを抑える方法を探します』

 よろしくお願いします。


 シムもよく分かってないみたいだし、今はとりあえず、ここでのんびり過ごしますかねぇ。

 しかし。

 ヒューモ族って、絶対ツキヨちゃんの設計だよな?

『肯定します。エジュラ族は太陽神。ヒューモ族は月神。バースト族は武神。ハビット族は時空神。アルフ族は月神と時空神の合作。ダビル族は太陽神と武神の合作。ダワーフ族は武神と時空神のようです』

 あ、しっかり調べ直したのか。

『はい。事後報告になりますが、森羅万象スキルを対価に調べ直しました』

 そっか。そこら辺はシムに一任してるからいいよ。

 ……ところで、月と太陽は?

『ありません。失敗したようです』

 …………。

『ゴドー様はとても丁寧に作られたと思われます』

 …………そうだな。


 俺は眠るゴドーの額にお預けになっていたキスを落とす。

 

『あと、ゴドーさまの生殖能力なのですが、生命の樹木の果実が理由の様です』

 ああ、なるほど。


「ん……」


 ゴドーの声が聞こえて、俺はシムとの会話を中断させ、ゴドーを見つめる。

 うっすらと瞼が開かれる。しばし開けた状態で静止していたが、顔をこちらに向けて微笑んだあと、首を傾げた。


「ひな鳥から、成鳥したか?」

「どうだろ? まだ幼鳥かもしれないよ?」


 差しのばされた手に、顔を預ける。

 その腕に赤い痣がある。その腕だけじゃなくて、ゴドーの体のあちこちにあるんだけど。

 俺の物だって主張したくていっぱい付けた。でも、ゴドーの体力とか回復させようと思って回復魔法使うと、それも消えちゃうんだよな。

 残念だけど、仕方が無い。キスと共に回復魔法をかけるとやはり、すぐに赤い後は消えてしまって、俺は寂しくなった。


「ごめん」


 一言謝って、首筋にだけ、もう一度強く、鮮やかな赤をつける。

 独占欲の現れだって分かってるんだけど、止められないんだよなぁ……。


「ゴドー、ちょっと俺の方で問題が出ちゃって、一ヶ月くらい向こうに戻れないかも」

「そうなのか?」

「うん。戻る時は前みたいに、転移した直後に戻るから、一月、俺に付き合ってくれないか?」

「じゃあ、その間、エドを独り占めだな」

「うん。俺もその間ゴドーを独り占めだ」


 お互いに笑いあって、ちょっと熱いキスをして。

 でもこれ以上は体に悪いとキスだけで終えてベッドから出る。

 今日から約一ヶ月。ゴドーとイチャラブだ~!




次回からはイチャラブだ~!





この辺の話はほぼ、ランダムアプリさまのおかげで出来た流れです。

アタリスキルが出なかったバージョンは、バロンとミカがエドの毒牙にかかり、(ミカに関しては完全にトキミのせい)エドがそんな自分に落ち込んで、クパンの村に引っ込むといってクパンの村に逃げて落ち込んでいるとゴドーがやっていきて、色々話をし、じゃあ、試しに女性になってやってみようか? といってゴドーが女性になる。

女性の神官には愛の結実があるので、安心して出来るだろう。と。

で、エドは、「友達のために、そこまで出来るのかよ」とプッツンきて、

農園に転移して、「俺にゴドーの100年頂戴。俺のために子供産んで。俺のままごとに付き合ってよ」みたいな感じで迫り、「それで俺の日本人は終わらせるから」って半泣き状態でお願いするけど、ゴドーは「無理だ」っていって拒絶されて、エドが本気だと振られるのかよ。ってへこんだあたりで、神の依り代の話になる。っという感じでした。

「生みたくても産めないんだ」みたいな感じで。

そんな流れから、「それでもいいよ」みたいな感じでお互いの気持ちを通じ合わせるみたいな話でした。


お互いの心情がきちんと出てるのは更新されてる方なので、最終的に思った事は。


「ランダムアプリ様すげー!!」でした。


だって、あのタイミングでアタリスキルだして、かつ、神々に対する選択も、五択中から唯一正解とも言える一つを選び出したからね……。


おかげで最近はランダムアプリ「様」と様付けである……。

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