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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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ツキヨとの交渉ごと





 雲の上のような真っ白な部屋にルベルトは座っていた。

 床に直座りだが気にした様子は無い。

 ここには汚れ一つないとルベルトは自信を持って言えた。

 もし汚れと呼べるものが有るとしたら、己だろう。


「待たせたかしら?」


 声がかかり、前を向くと先ほどまで誰も居なかった空間に月の神ツキヨが居た。


「お忙しい中、時間を取って頂き、ありがとうございます」

「あらん。予定を変更したのはこちらだもの。気にしないで」


 ツキヨは長いすに横たわるように少し高くなっている雲の塊に寝転がっている。


「それで、用件は?」

「伽の相手を対価に情報を頂きに」


 ルベルトの言葉にツキヨは笑う。口元に手を当てて美しく。


「貴男は本当に勤勉ね。貴男の爪垢を集めて丸薬にしたらトキミも少しは真面目になるかしら?」

「爪垢……ですか?」


 ルベルトは思わず自分の指を見る。

 ツキヨは立ち上がり、ルベルトにゆっくりと近づいてくる。それに、ルベルトの顔に、緊張が走る。


「それで」


 仄かに香る上品な匂いと、甘みを含んだ声に、一瞬でも気を緩めると引きずられそうでルベルトは先ほど見た己の拳を握りしめる。


「何が聞きたいのかしら? アタクシの可愛い子」


 ツキヨはルベルトの前で膝をおり、その頬に触れる。

 たったそれだけで感じる幸福感にルベルトは一度強く唇を噛んだ。

 

 こうなることは分かっていた。それでもこうするしか無かった。

 しばらくこの(分身)は使い物にならないだろう。

 それでもこうするしかなかった。


「神の貴石の制作者である、クパン村のエドの事を教えてください」


 初めは森羅万象にかかっている鍵を外すために、エドが使いそうな単語や人名を使ってみたが駄目だった。

 彼の家も、家を囲う様に時間軸をずらした空間を一層重ねて、同じように鍵を設定してあった。そのせいで家の中に転移出来なかったのだ。

 プラネタリウムを見た時から思ったが、彼は魔法とスキルの組み合わせ方が、驚くほど上手い。こういう使い方があったかとルベルトも舌を巻いたほどだ。

 彼は情報系のスキルはほぼ同等の物を持っていると考えてもいいだろう。

 それに対し、戦闘能力に関しては、情報がほとんどなかった。

 上級武術使いでは相手にならなかったと報告を受けたが、そんなもの時間を止めてしまえば上級武術など関係ない。止めなくてもスキル『鈍足』などを使えば隠密自身はいつも通り動いているつもりでも、術者からすれば止まったような動きになる。

 ならばと分身体と闘わせてみようかと思ったが、それも上手くいかなかった。

 収穫としては、殺気よりも、色欲を向けられる方が苦手という事が分かったくらいだ。

 あとは耐性を持っているであろう事。

 せめてスキルの中身ぐらいは知りたいものだ、と最後の頼みの綱でもあるここにやってきた。

 後はもう、時間との勝負だ、とルベルトは爪を立てる形で拳を強く握る。

 それでも、月の神から漂う芳香は、理性をそぎ落としていく。くらくらと頭が痺れてくるようだった。


「……そう。ならば、対価が足りないわ」


 頬を撫でていた手が下ろされる。

 その事にルベルトは急に寂しさが募った。嫌だと、叫びそうになるのを堪えてツキヨを見つめる。


「たいか……が、足りな、ぃ?」

「ええ、そうよ。アタクシの加護を持っている貴男に言える事はそれだけ。エドの事を知りたいと望むのであれば、残念ながら、アタクシには答えられないわ」

「な……ぜ……」


 ルベルトの手がすがるようにツキヨの服を掴む。

 呼吸も荒く、熱を持った瞳が切なげにツキヨを見ていた。


「アタクシ達の可愛い子がそれを望んだからよ。ルベルト、貴男が持っている全てのスキルを対価に差し出しても、残念ながら足りないわ。可愛い貴男に贔屓をしたとしても、アタクシに言えるのは本当にここまでよ」


 すっ。ツキヨが立ち上がった。

 それは今のルベルトにとって、断崖絶壁に落とされるような恐怖だった。

 ツキヨの力によってわき上がったものはもはやまともな思考すら熱で溶かしていく。

 手段が目的になって、目的が手段になる。

 交渉が成立しなければ抱いて貰えない。この熱を、昇華されない。


「し、城が、褒美として、わ、たされたのは……何故、ですか……」


 縋る思いで口にした。ツキヨは動きを止めて、少し考える。


「そうね、それなら応えてあげてよ」


 ツキヨは微笑み、ルベルトの唇を軽く奪う。

 それだけで、ルベルトの理性とも正気とも言える人格と精神状態は闇に落ちていき、後は欲に溺れた体が、神の前に残された。




『あれはトキミが渡した物よ。理由は憧れていた神と似ていた者がいたから。その人間と自身の依り代を結び付けたいから環境を整えたのよ。本人は認めていないけど大方そんなものでしょう。依り代が抱かれている時に、その身に意識を一部移せば、まるでその人に自分が抱かれているように感じるわ。疑似恋愛とでも言えばいいかしら? それともおままごとの方がいいのかしら? 夜伽の神(アタクシ)ならともかく、普通の神は人間相手に本気になるわけにもいかないでしょう? だって、神なんですもの』


 そんな言葉が再生される。分身の喘ぐ声と共に。

 ルベルトは腕を組み、考える。

 彼の視界は黒のみ。黒の濃淡で世界が存在している。そんな場所に彼は居た。

 視線を少し横に向けると、まだ夢の様な世界から帰ってこられない分身が一体。

 彼はため息をつく。

 分身一体と引き替えに得た情報は、大きいのか小さいのか。

 少なくとも、エドは神に守護されている。

 これがどの程度なのかが分からない。『情報のみ』なのかそれとも『エド本人』なのか。

 エドの周りには二人、それらしき人物がいる。『ミカ』と名乗った神官と『ゴドー』という名の神官だ。

 止まった時の中でも自由に動けたという事を考えると、『ミカ』というのが時空神の依り代なのだろう。エドに誘われた朝食の場にも居た。

 その彼と誰をくっつけたかったのか。


 抱かれている……か、抱くではないのなら、相手は男か。


 そう考えると、やはりその候補者の中にエドが入ってしまう。

 しかも女の依り代ではなく、男の依り代を連れてきている辺り、ヒューモ族のエドである可能性が高い。

 バースト族のタンガはないだろう。アルフ族も本来なら、そういう趣味はなく、ヒューモ族の餌食になっているだけと言える。しかし、ルベルトが見たバロンは少々違っていた。

 エドに向ける視線が少々おかしい。エド様エド様と慕っていた。男が好きな可能性も捨てられない。


 いや、どちらにしても、一緒か。


 バロンが男好きでも時空神の思い人がどちらか分からない時点ではエドは候補者からは外せない。

 

 そして、ゴドーという名前の神官は、エドと仲が良い神官だと聞いている。しかし一体何を差し出せば、あそこまでの守護が得られるというのか。

 

情報のみ、であれば可能だろうか。情報のみに対し絶対的な守護を与える……。


 そこまで考えてルベルトは頭を振った。

 そんな事をするぐらいだったら、エド本人に出来うる限りの守護を与えて貰うだろう。


 月の依り代は狂うと言う。その狂った想いがエドに向けられているというのなら?

 そう思いかけて、ルベルトはもう一つの言葉に気づいた。


「アタクシ()?」


 言葉にし、ルベルトは再度、分身が録音した内容を確認する。気のせいではなく、確かにツキヨはそう口にしていた。

 

アタクシ達の可愛い子。


 ツキヨのその部分だけを何度も再生する。


「『システム』起動せよ。神官ゴドーは何の神の依り代か答えよ」

『命令を受信しました。実行します。------情報の閲覧には鍵が掛かっております。合い言葉をどうぞ』

「またか」


 ルベルトは舌打ちした。しかし、すぐに質問内容を変える。


「月の依り代の名前を上げよ」


 システムはそれに対し名前を挙げていく。年齢的にそろそろだろうか、と思ったところで、システムが上げる名前が止まった。


「……情報が秘匿されている月の依り代の数は?」

『命令を受信しました。実行します。------情報が秘匿されている月の依り代の数はゼロです』

「…………ゼロ?」


 ルベルトは思わず再度確認した。しかしやはり答えは変わらない。

 ならばと、別の神の依り代の名前を上げさせた。しかし、ゴドーの名前は上がらない。

 ミカの名前はしっかりと時空神の依り代の中で出ていたというのに。


「……待て……では、彼は一体何者だ?」

『命令を受信しました。実行します。------情報の閲覧には鍵が掛かっております。合い言葉をどうぞ』


思わず口にした言葉を命令と受け取ったシステムがそうお決まりの言葉を返してくる。

 ルベルトはため息をつき、システムを切り、脱力する。


 不確定要素が多すぎる。


「……恩を売った方が得策か……」


 もう一度深いため息をついて、今後の方針を決める。

 それからまだどっぷり快楽に浸っている分身を娼館で働かせるためにもう一体の分身を出して転移させる。

 夢から覚めないと使えないし、スキルに戻す(統合する)わけにもいかない。


 収穫は大きかった。と考えるべきか。


 そう自身を納得させ、目を閉じる。閉じたはずの視界に分身達の見る景色が映る。


 黒しか無い世界。そこにルベルトは漂う。

 それを離れた所で控えるように立っていた浪人姿の男性が見つめていた。

命令を待つ従者としてそこに控えていた。

 ルベルトの活動が終わったからか、彼も目を閉じて黒の世界に混じる。

 主命があるまで彼はそこに控え続ける。

 その腰に差す刀で、命を刈り取れと命令が下されるのを待ち続けている。




この物語は~。

ハーレムものかくぜー。→やっぱ駄目だ~→今度こそハーレムもの書くぜー→やっぱり駄目だ~。と

繰り返してきた作者が、

今度こそ、ハーレム物を書いてみせるぜ! と頑張ろうとした結果~、

盛り込めるエロ設定は盛り込んでしまえと、変な方向に突き抜けた話となってます~。

そろそろ「いい加減にしろよ」と言われないかな~って思ったりもしますが~。



まだある~。





R15ってどの辺りまでなんだろうって真剣に悩む。


あ、あと、まげはなんとなく嫌だったので、浪人にしてみた。



GW中の更新は、たぶん、すると思います。

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