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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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新しい恋人を得るという事はそういう事。

処刑シーンあり。といっても、血がどうのというのはないっす。

でも、苦手っていう人はいるのかも。


今回タイトルどうしようか迷ったなぁ。

そのうち「タイトル思い浮かばなかったよ」とかいうタイトルが出てきそうな気がする……。




 ゴドーは中央で立っている男を何の感情も読み取れない目で見ていた。

 いや、眺めていただけなのだろう。

 彼の罪状が読み上げられていく。

 反論が上がる事は無い。神自ら過去を調べ全ての罪を洗い出したのだから。

 もっとも彼は反論する事が出来るほど周りが見えているとは思えない。

 手元を見ながらぶつぶつと何かを紡いでいる。自分たちが捕まえた時からずっとそうだ。


「ゴドー。セリア殿達だ」


 シェーンに声をかけられて、ゴドーの目が初めて意志らしきものを見せて動いた。

 シェーンの視線を追って見ると確かにエド以外の全員が揃っていた。

 エドは来なかったのか、と落胆しかけたが、不味い事にも気づいた。


「シェーン。ニアとセリアは連れ出した方がいい」

「ん? あっ、ああ、そうか。二人には慣れぬであろうな」


 シェーンは頷いて、注意を引かないように中腰で移動を開始する。もっともそれでも目につく人は居て、注意をするような視線を向けられたが、シェーンとしてはそれを気にしているわけにもいかなかった。

 ニアとセリアに静かにするようにとジェスチャーで示して、二人の手を取ってシェーンは歩き出す。

 二人も周りの人間も、ネーア達も不思議そうだった。

 ネーアは一瞬ついて行った方がいいのか迷ったが、シェーンは自分に目配せすらしなかったのだから、ここに居た方がいいのだろうと裁判を眺める。

 全ての罪状が読み上げられ、四つの光が降り注ぐ。


 何かいう事はあるか?


 光がそう問いかけてくる。

 男は初めて顔を上げた。そして涙を流しながら首を振る。


「おぉ! 神よ! 違うのです! 違うのです! 私は貴方様達に逆らうつもりは毛頭もなかったのです! これからは真面目に生きます。ですからお許しください! お助けください!! 私はまだ死にたくない!!」


 光は薄まっていく。


「神よ!! お待ちください!」


 男は必死に命乞いをする。

 その後ろに黒い礼服を着たエジュラ族の少女が立った。右手には見事な大鎌があった。


「お願いです! お助けください! これは何かの間違いなのです!!」


 堰を切ったようにあふれ出す男の言葉。光が薄まれば薄まるほど必死に、口端に泡すら出して男は命乞いをした。


 そして光が完全に消えた時、少女の大鎌が振り下ろされる。



 終わった。



 ゴドーの心の中にはその言葉だけが浮かんできた。

 少女は新しい恋人をその胸に抱いて幸せそうに微笑んでいる。

 ゴドーは天を仰いだ。

 先ほどまで光が降り注いでいた場所。



 ねぇ、ゴドー。貴方の一番の望みは何?



 そう神に問われた。

 だからゴドーは心の中にある一番の願いを口にした。

 神はそれを黙って聞いていた。

 ゴドーの望みを聞いた神は言った。


 それを叶えても良いと。


 ただし条件もあると。


 頬を染めて愛おしそうに新しい恋人を抱きしめて、何かを囁いている少女を見て、ゴドーは思ってしまった。羨ましいと。

 そんな自分に視線を落とし、弱々しく眉を下げた。

 どうせ自分には手に入らない。羨ましいと思うだけ辛いだけだ、と。

 片付けられていく。それらを見ながらゴドーも静かに退出する。







 ネーアはため息をついた。


「せめて、私も一緒に連れてって貰いたかったです……」


 まさか最後はああなるとは思って無かったとネーアは恨みがましくシェーンを見た。


「む? お前は平気だろ?」


 何故そう思うのか。ネーア的には一言もの申したい。確かにセリアやニアに比べたら平気だろうが。


「それでもです」

 

 ネーアはむすっとしたままシェーンに答える。


「そもそも、ミカ、お前伝えておかなかったのか?」

「うん。忘れてた」


 シェーンの言葉にミカは肩を竦めて答えた。

 絶対にわざと教えなかっただろと何名かの目が厳しくなるが、実際ミカは本当にその事を忘れてたのだ。

 むしろ当たり前過ぎてて、知っているものだという勘違いしてたのだ。


「すまない待たせた」


 ゴドーが合流し、一人に一枚ずつ転移門の使用許可証を渡していく。


「やっと帰れる……」

「お疲れ」


 ゴドーの思わず零れた言葉にシェーンは哀れみすら籠もった瞳を向けた。

 シェーンが知る限り、ゴドーは毎日毎晩、意味不明とも言える会議やら勉強会や飲み会に連行されていた。

 今日も本来ならそうなる予定だったのだが、朝になって早くて来週だろうと言われていた裁判が行われる事となった。

 シェーンは慌てただけだったが、ゴドーは内心ガッツポーズを取る程だった。

 シェーンが哀れみの目を向けるのも仕方がないのかもしれない。


 神の御山から王都へと転移門にて移動した後は、預けたままになっていた馬車に乗り移動する。


「新しい屋敷はどうだ?」


 神山とは違う人の活気に溢れた町並みを見ながらシェーンは尋ねた。

 向かいで同じように窓を眺めていたゴドーは、そういえばその問題もあったなと顔をすでにそこに住んでいる面々に向けた。


「屋敷っていうか……城?」

「「城?」」

「うん。城」

「あれはまごうことなく城ですね」


 セリアとネーアの様子に二人は眉を寄せた。

 彼らは土地と屋敷が今回の報賞に渡されるとしか聞いてない。

 若干、嫌な空気を感じながら二人は窓から見える街を眺めた。

 そして、窓の端から徐々に見えてくる建物に、まさかな。と二人は同時に思いもした。しかし、馬車はその思いを無視し、敷地内と敷地外を区切る門を通り、その建物に近づいていく。

 

「土地と屋敷としか聞いてなかったのだが……」

「確かにコレは城だな」


 ゴドーとシェーンは初めて見るそれを見上げて、数日前にみんなが思った事を同様に思った。

 これはない。と。


「俺達は馬を馬小屋に連れて行きます」

「ニアもいっしょにいく~」


 久しぶりに会う黒天馬達が嬉しいのだろう、ニアは挙手をして声を上げた。そんなニアに黒天馬達も嬉しそうに鳴いている。


 馬の世話はタンガとニアに任せて皆は城に入る事にした。

 玄関の扉を開けるとエントランスホールが照明に照らされて一気に明るくなる。

 思わず硬直する一同。すぐにセリアは気づいた。


「お兄、センサー式にしたのかな?」


 そう言いながら周りと天上を見ると出かけるまでに無かったシャンデリアやスタンドタイプの照明設備があった。

 セリアが中に入ると廊下の方も明かりがついていく。


「せんさーしき?」

「人を感知すると付く照明の事~。スイッチ押さなくてもいいから楽だし、防犯にもなるんだよ、コレ。塀の周りにも付けて貰おうか」


 どうやって感知しているのか等という疑問は増えるが、バロン達男性陣には一つだけしっかりと分かった事があった。


「確かに、防犯にはいいですね」


  神官三人は神山では見回りの仕事もしたことがあるので人の気配を察知して光を灯してくれるのはありがたいと思えたし、バロンは警備の立場も、城から抜け出す(警備を出し抜く)立場も分かる分、何度も頷いた。

 こんなのがあったら絶対抜け出せなかった。とシャンデリアを眺める。


「私の部屋にもつけてもらおーっと」


 照明の魔道具は是非欲しいとセリアは軽く言って廊下の奥へと歩き出す。

 ミカはシャンデリアやスタンドを眺めてゴドーの方を向く。


「……コレ、結構高いよね?」

「エドが作るのは割となんでも高品質だぞ」

「この様な場所だ。手抜きはせんだろ」

「……こんなのあっさりと作れるのも凄いけど、それを欲しがるのも凄いね」

「セリア殿は妹だからな。それ故気易いのだろう。あと、売値を知らぬのだろうな」

「…………今回、家具はあっても魔道具の類いは無いんだよね。どうせ自作するだろうと言って。…………これ、割引効く?」

「ゴドー経由でせしめよう」

「待て。それは流石に同意出来ないぞ、シェーン」

「お前が頼むのとオレが頼むのとどっちがよりヤツを動かせると思ってる」

「それはいいね。そしてムカつくね」

「何故!?」


 ミカの言葉にゴドーは少し驚く。

 エドがすでに全部屋分の照明の魔道具を用意していると知らない三人の神官達は、これ、特別予算おりないの? とか、オレはお前の部下だから、お前が出してくれるんだよな? などという神官という、清廉なイメージとはかけ離れた金の話で声を潜めながらも盛り上がっていた。




二日は更新。(出来上がってるので)

GW後半はどうしよう……。


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