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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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新しいオアシス

本日二度目になります。

ブクマから飛んできた人は気をつけてください。





 ネーアとシェーンは新しい住人達のスキルの相談にのって貰い、俺は彼らが住む場所を作っている。

 セリアは出来た建物に家具を設置し、食料も備蓄させている。もちろん俺の業務魔法で。

 それでも俺のMPちっとも減らないんだけどな。

 農園で栽培したのをこっち持ってきても良いんだけど、シムが渋ってんだよな。何故か。

 だから業務魔法を使わせてるんだけど、あいつ、絶対関係ない物とか出してそうだよな。

 俺が兄貴と知ってからそこらへんは遠慮がなくなったし。

 いいけどな。どうせこの世界の物しか出ないし。


 そうこうやってなんとか全員分の衣食住を確保した頃、バロンがへろへろになって戻ってきた。


「ただいま戻りましたぁ……」

「おー。お疲れ。MP切れか?」

「いえ、MPは余裕があるのですが……、なんか疲れてしまって。すみません……」


 しょんぼりし始めるバロン。


「別に謝る事はねぇーよ」


 そう慰めながら俺は何が原因だろうかと考える。

『環境魔法は極魔法なので、処理速度向上ではスペック不足なのでしょう。あとバロンが魔法そのものを使い慣れていないせいもあると思います』

 なるほど。本人に頑張って貰うしかないな。


「バロンは魔法とかって俺たちに会う前は全然使ってない感じか?」

「はい。一応持ってはいましたが、得意と云うほどでは無かったです」

「たぶんその影響だろうな。魔法を使い慣れてないから余計な力が入って、疲れるとかそんな感じだと思う。この辺は慣れていくしかないだろ」

「はい。分かりました」

「一応、ポーション飲むか?」

「それよりもナデナデが良いです!」


 なんでだよ。

 と言いたかったが、さっきまでのへろへろだったのがどこにいったのか、目を輝かせて、俺を見ている。

 まぁ、頑張ったしな。と俺が手を上げると、撫でやすくするためか、しゃがんで頭を突き出してきた。


 なぁ、おい。夏の国の第三王子。それでいいのか?


 そう言いたいのをぐっと堪えて、バロンを撫でながら話を進める。


「で、住民達にはお前の姿で説明すんの? それとも変装か何かするか?」

「本音を言うと変装したいところなのですが、住人達の心情を考えると私がきちんと前に出た方がいいですよね?」

「そりゃな。どうせ売られるのならって、もしもの可能性に賭けたヤツばっかりだからな。お前が居た方が安心はするだろう」

「ですよねぇ。その場合、エドさまの立場はどうするんです?」

「どうしよっかねぇ」

「私の主という紹介は」

「却下だ馬鹿野郎」

「ですよね……。ではやはり、自立支援してくれる商会の会長という扱いですか?」

「んー。今はただの協力者でいいかもな。実際に店が出来て、仕事内容が説明出来る事にならないとうさんくさいだけだし」


 撫でる手を止める。バロンは一瞬悲しそうな顔をしたが、もう十分だろと俺は言いたい。


「分かりました。では、みなさんにご挨拶にいきますか?」

「そうだな。おーい、セリアーみんなに顔出しすっぞー。いつまでフルーツ食ってんだ!」

「ふぁーい」


 ちょっと焦ったような声で返事が返ってきて、明らかに無理矢理口の中に入れたと思われる顔で走ってきた。


「んぐんぐ。お兄! このフルーツおいしい!」

「そうか。後で料金請求してもいいか?」

「えー? いいじゃんちょっとくらいー」


 差し出されたフルーツを取り俺も口の中に入れる。

 バロンも礼を言って受け取り食べる。

 確かにみずみずしくて、甘くて美味しいな。


「春の国じゃあんまりみないな。秋の国の果物か?」

「そうなんですかね。甘くて美味しいです」


 幸せそうな顔でバロンは言った。


「ねぇねぇ、お兄。ウェルカムフルーツって事でこれ、みんなに配っても良い?」

「好きにしろ」

「やったね!」


 セリアは早速業務魔法で出しまくっている。

 一人にいくつ配るつもりだこいつは。

 っていうか、それ絶対自分の分入ってるだろ。


「きちんと公平に配れよ、お前」

「もちろんじゃない!」

「……」


 平気で嘘つきやがったなぁ。いいけどな。言質は取ったから無理矢理にでも公平に配らせるから。





「バロンさまだ……」

「バロン様だわ」

「ばろんさまって、おーじさまの?」

「バロン王子だ」


 彼らはバロンを見て、安心し、そして興奮し始めた。

 不安が払拭されたのだろう。


「みなさん。きっと色々聞きたい事や言いたい事も沢山あるでしょう。でも、まずは謝らせてください。私達王家が不甲斐ないばかりにみなさんに辛く厳しい生活を強いてきました。大変申し訳なく思います」


 そう言ってバロンは頭を下げた。みんなの動きも声も止まる。

 彼らが何かを言う前にバロンを頭を上げ、一同を見渡した。


「ここは彼らの協力のもと新しく出来たオアシスです」

「違います。誰も知らなかっただけです。環境を整えただけで」

「あ……、いえ、そういう場合も、『新しく出来たオアシス』って表現するんです……」

「そうなの?」

「はい」

「あーと、それは失礼」


 どうやらオアシスの定義が俺の知ってるものと違ったらしい。

 みんなの眼差しが、バロン様のお言葉を邪魔しやがって。このヒューモ族が! っていう風に見える。

 これって、被害妄想ってやつだよな!

『いえ、たぶん間違ってないと思います』

 ……被害妄想の方が良かったなぁ。俺……。


「バロン様。彼らはヒューモ族に見えますが」

「はい。エドさ……んは、ヒューモ族です」

「ヒューモ族を信用するんですか?」


 目の前でいうか。いやいいけど。騎士(タンガ)が居て、第三王子(バロン)がいて、神官(シェーン)もいるもんな。そりゃ多少の事を言っても平気と思うか。


「ヒューモ族だからではなく。私はエドさんだから信じるんです」

「ですが……」


 納得出来ない様子のバースト族の母親だと思われる人物にシェーンが前に出た。


「なら、こうしよう。エド。神官としてお前に問いかける。お前はここにいる者達を奴隷として扱わないと神に誓えるか?」

「そりゃぁ、もち」

『バロンがひっかかります。マスター、言葉を換えてください』


 同意しかけた所でシムが割り込んできた。

 俺は口を閉ざし、バロンを見て、それから新しい住人の人達を見た。


「シェーン。君の言うここにいる者達というのは、新しく連れてきた住人達全員だな? アルフ族もバースト族も関係なく」

「……そうだ」


 この場合なら?

『問題ないと思います』


「なら神に誓おう」

「誓いは成された。破れば我が神がお前に神罰を下すだろう」


 シェーンがそう口にした時、シェーンから光りが空へと飛び立っていく。これが、誓いってことなのかな。


 シェーンは彼らにコレで大丈夫だ。と笑いかけ、俺の横に立った。


「すまん。文言を誤った」

「いや、これで彼らも信用しただろうし、問題ないよ」


 俺がわざわざ確認を取った理由に思い至ったのだろう、シェーンが謝ってくる。気にするなと俺は声をかけて、バロンが彼らに説明していくのを聞いていく。


 新しい家にとバロンがみんなを先導する。

 家族で来ている人達には荷物とかいろいろあるだろうし、と家ごと引っ越しさせているのだが、それでも新しい家の方が色々すでに揃えてあるので住むのならここの方がいいだろう。

 あと、家族の一部と一緒に来たという人達も小さいながらも個別の家で、子供だけきたパターンに限り、共同生活という形で建てた。

 トイレだけは各部屋にあって、キッチンやバスは共同である。


 ちなみに上下水道完備で有る。


 アルフ族がきちんとアルフ族として活動できていたら作れたであろう家をイメージしている。

 スイッチ一つで明かりが付く。スイッチ一つで水が出る。スイッチ一つで室内が快適温度になる。スイッチ一つで家中がピカピカになる。

 下手をすると俺が生きていた頃の日本よりも良い住宅だろう。


 前にシムが言っていた。『システム』からすれば、彼らは種として劣悪になるための事しかしていないと。

 持ち主を最強に導くシステム故に特に感じるのだろうが。

 でも、確かに、俺も思うよ。


 アルフ族がアルフ族として活動出来てたら、夏の国の住人達の生活はもっと違ったものだっただろうって。









 




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