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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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ルベルト・ホーマンという男

本日二つ目の更新になります。

ブクマから飛んできた方はご注意ください。



時々誤字修正中


 ルベルト・ホーマンという人物についてシムにあれからある程度調べて貰った。

 流石にわざわざアドバイスに来るって事は、それなりに注意しろって事だろうし。

 まさか、キスするためにそれらしい話題を振ったわけではない……と思いたい。

 …………そこは、信用しても大丈夫ですよね? 神様方?

 一瞬不安になったが、話を戻そう。


 重要なキーワードはシムが俺に説明する時に使った『春の国の初代国王』で『神前試合のリーダー』だろうか。


 その昔、遙か昔。数えるのもおっくうになるほどの昔だと思うが。

 神々は新しい世界を作るに辺り、そこに七つの人種を用意した。

 アルフ族・エジュラ族・ダビル族・ダワーフ族・バースト族・ハビット族・ヒューモ族の七種族である。

 そして神は彼らが住む土地を、彼ら自身が勝ち取るように、と一つの試合を用意した。

 シムが言っていた神前試合である。


 同じだけの男女を用意し、初級から上級までのスキルを同様に与えた。

 準備期間は二年。その後十年間戦い、最終的に戦える人間が多い方が勝ちとする。

 ルールはたったこれだけだった。

 準備期間中に彼らに与えられた土地は、新しい世界のミニチュア版とも言える土地で、夏の国の過酷さと冬の国の厳しさと秋の国の鮮やかさと春の国の豊かさを七種族に知らしめた。


 全ての種族が敵とも言える中、ルベルト・ホーマンはエジュラ族・ダビル族・ダワーフ族・ハビット族の四種族に同盟を持ちかけた


 我々は不利である。と。

 バースト族は我々よりも寿命は短いが、その分子供も出来やすく、成長も早い。十年有れば、生まれた子供達の多くは戦えるだろう。

 アルフ族は我々が魔道具を一つ作る間に三つも四つも作ってしまう。ボタンを一つ押せば強力な魔法を放つような魔道具を作っている。彼らは非戦闘員ですら戦闘員に変えてしまう。

 互いに協力し、彼らを優先的に倒さないか、と持ちかけた。


 エジュラ族は、協力はしない。でも邪魔もしない。そう言って断り立ち去った。

 ハビット族はそれを受け入れた。

 夏の国はあまりにも過酷であり、自分たちの種族では生きていくことが難しいと。冬の国であれば、冬の国に独自に実る作物もある。寒ささえしのげれば暮らしていける。第五位が決定した時点で我らは棄権してもいいと。


 ルベルトは言った。我々長命種の子供が戦える体になるのに何年かかるだろうか。十二年という年月で出来る事は少ない。

 彼らは同じ年月でも多くの子をなし戦力を増やすだろう。

 ダワーフ族の優れた武器製造能力を、ダビル族の優れた戦闘技術を、彼らに見せつけないか、と。

 我々も全力で戦い、そしてサポートする、と。

 それできっと我々ヒューモ族の戦力はほぼつきるだろう、と。後は領地で他種族を支えるために土を耕し、素材を得るためにツルハシを振ろう、と。


 ダビル族は同盟に同意した。

 土を耕すよりは代わりに戦う方が良いと笑った。

 戦いの中で美しく散るのも一興と。


 三種族が協力すれば、アルフ族かバースト族のどちらかは壊滅的打撃を受けるだろう。

 ならばそれをより確実にするために、ダワーフ族も同意する事にした。


 同盟が出来上がるとヒューモ族と素材は食料を優先的にダワーフ族とダビル族に用意した。

 ダワーフ族は自分たち用の武具を用意した後、他種族の物を用意した。

 ダビル族は公平に四種族から戦力を集め、戦略を築いた。


 ヒューモ族にもハビット族にも異論はなかった。

 何が何でも夏の国だけは避けたいのだと彼らは心の底から思っていた。


 そしてルベルトは言った。

 ハビット族が目をキラキラさせて褒めちぎるとダワーフ族がみんな上機嫌で武器を作ってくれるんだ、と。

 確かにハビット族は小人族と言われる種族故に、成人していてもその姿は幼い子供のようで、彼らに褒められると悪い気はしないとダワーフ族は酒を飲みながら上機嫌に言うのだ。

 だからハビット族はダワーフ族を褒めた。

 世界で一番凄い技術を持つのはダワーフ族だと。

 アルフ族が器用特化方種族だと言われているがダワーフ族には叶わない、彼らはペテンだと。


 きっとハビット族にはそんなつもりは無かったのだろう。

 だがダワーフ族は、知らず知らずの内にすり込まれたその言葉を信じ、アルフ族を壊滅させた。残ったのはまだ年端もいかない子供達ばかり。

 その子供達ですら凶刃に斃れかけた。神が勝負ありとすぐさま退避させなければ根絶やしにされていただろう。

 そしてその影響でバースト族との戦いは激化した。

 戦える者だけではなく女子供まで殺される可能性が出てきたからだ。

 しかし質でいえば、バースト族とダビル族は同等。質量に負けが見えていた。

 バースト族の族長は勝ち目がないと悟ると、反対を押し切り、負けを認めた。

 少しでも新しい世界で戦える戦力を残して置きたかったのだ。

 夏の国の住人が定員に達し、負ければ冬の国の住人が確定する時点でハビット族は棄権した。


 ヒューモ族は死した者は少なかったがその多くは体を欠損し、戦える者は少なかった。

 彼らは約束通り領地で二種族を支えるために活動をはじめた。

求められれば向こうに出向いて夜の相手も喜んでした。子供が出来る者達も居た。

 彼らはひと時の家族ごっこを楽しんだとも言う。

 エジュラ族との戦いが終わった時、ダビル族は戦えるものは半数以下になりダワーフ族も戦える者は過半数程度に減っていた。

 

 神が決めた期限まであと数年残っていたが、彼らは互いに争う事はしなかった。

 これは神の前で行われている戦である。同盟を裏切るという事をすれば神の不興を買うだろうと意見が一致したのだ。

 互いに領地に戻り、子供達の育成をする事になった。

 やらないよりはマシだろうと。

 その中でもヒューモ族は約束通り食料を作り、届け続けた。

 まるで隷属国のように、彼らに尽くした。

 そして十年が経つと、一位の春の国に選ばれたのはヒューモ族だった。

 何故とダワーフ族は問いかけた。

 神は答えた。


「貴方方は広大な土地があっても畑を耕さないでしょう?」


 だがそれではダワーフ族は納得しなかった。それでは勝利の条件が違う、と。

 だから神は真実を伝えた。

 夜伽の相手は暗殺の手練れだった事。もし戦争をしかけるつもりだったのなら、食事や水に毒を仕掛ける用意をしていた事。そして純粋に、戦える人数がヒューモ族の方が多いこと。


「貴方達は、ヒューモ族は手練手管だと喜んで相手をしていましたが、同族の女性の視線に気づいていましたか? ヒューモ族と子をなすばかりで、同族と子を作りましたか? ヒューモ族とダワーフ族ではややヒューモ族の方が出来やすい。自業自得です。どうぞ、新しい世界では妻の尻に敷かれてください」


 この瞬間ダワーフ族はカカア天下になったと言われていて、結果に納得するしかなかったと言われている。

 しかしこの言葉は真実であるが全てではない。


 ヒューモ族は確かに長命種で普通に成長すると大人になるのには百年近くかかる。

 だがヒューモ族は他の長命種にはない特長があった。

 魔力の量によって成長速度が変わるという事だ。

 その気になれば、十二年で三世代進む事も可能なのだ。

 アルフ族とバースト族との戦いで、戦力は無くなったと見せて、彼らは領地の奥深くで戦える者の育成をしていた。そして、エジュラ族との戦いには関わること無く、戦える者を減らさなかった。

 戦争が終わっても二種族に食料を送り続けたのも、約束があったからではない。

 ハビット族のように棄権しない理由を勘ぐられたくなかったからだ。

 夜の相手をしたのも、相手の種族の子を少しでも減らすため。

 子を連れてつかの間の家族ごっごを味わうのも、情を移させて攻撃させないため。

 十二年という彼らの生からすればあっという間の短い期間を耐えれば、安寧を約束された大地があるのだ。

 それら全てをルベルトが仕組み、ヒューモ族を頂点の種族と押し上げた。


 そして今も尚ヒューモ族が頂点に立てるよう仕組みを作った。

 

 ヒューモ族最強の王。


 そう言われるのはあながち間違いでは無いわけだ。だって今もまだ生きているのだから。

 そしてそんなヒューモ族最強の王がこちらへとやってくる。

 実際の視線を向けなくても、スキルを使えば360度どこだって見える。

 だからなんでこっちにまっすぐ向かってやってくるのかね……。


 なんかバレるようなコトしたか? 昨日は忠告通り時間も止めなかったぞ?

 転移か?

『それは薄いと思います』

 でも、今、がっつり見てるよな?

『はい。ステータスおよびスキルの中身を覗かれてます。マスタ-、不快感を感じる表情で周りを確認してもらってもいいですか?』


 シムさんから演技指導が入りました。言われた通り俺は周りを見る。

 こんな感じだろうか?


『一つ目の偽りの真まで突破されました。以降は現状を維持します』

 はいはい、よろしくです。


 一つ目の偽りの真が突破されても問題はない。

 少々物騒なスキルがレベル高いくらいだ。呪怨とか、隠密とか、その辺のスキルが出てくる感じになっている。


「失礼、少し話しを伺っても良いですか?」


 彼はそう笑顔で話かけてきた。

 すげぇ! 役者が居る!!

 内心俺は叫んだ。叫びたくなるくらい、彼の笑顔は一変の邪気も無い!

 いや、悪い人かどうか知らないけど!


「話ですか?」

「ええ、黒天馬の事なのですが」

「黒天馬?」

『!』


 俺は素直に聞き返したが、シムが何かに気づいたようだ。


『マスター申し訳ありません。失敗しました』


 シムが謝ってくる。俺はよく分からずただ彼の次の言葉を待った。


「あれはどこで購入したものです?」

「……あれは」

『友人から譲り受けたと』

「……友人から譲り受けたものですが……」


 とっさにセルキーで買ったと言いかけたが、シムが即座に指示を飛ばしてきたのでそれに習う。


 黒天馬がどうかしたのか?

『業務魔法を疑っていると思われます。現在個体名:ルベリアが見ているマスターのスキル内には業務魔法はありません。隠ぺいがさらにされていると彼は疑ってていると思われます』


「友人から? 凄いですね。ぜひともその友人を紹介してくださいませんか?」

「そういった事はしていないです」

「そうなのですか?」

「ええ、大事な友人なので」

「そうですか。残念です。ではもう一つ。伺っても良いですか?」

「答えられるものなら」

「転生者という言葉に聞き覚えはありませんか?」


 確信を持ったように彼は言ってくる。

 まさかそっちも疑われているとは思いもしなかった。

 ぜひともどこでそう疑う結果になったのか教えて欲しいものだ。

 俺はそう思いながら、首を傾げる。


「何かの物語の表題ですか? それとも商品名でしょうか?」


 平常心と冷静が真面目に仕事すればこれぐらいどうってことないのである。

いや、普段、真面目に仕事をさせすぎないのは俺なんだけどね?


 これで諦めて帰ってくれたらいいんだけどなぁ……。




 






最近短いのが多かったので、ちょっと頑張ってみた。

っといっても短いんですけどねぇ-。これもまた。


次回更新はたぶん月曜日ですー。



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